桂ゆき展の感想


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本名:桂雪子。「ユキ子」を経て「ゆき」になったようです。

10年近く前になるかと思いますが、福岡市美術館で『 積んだり 』1951 (S26) という作品を観て、面白い構成の作品を作る方がおられたんだな、と直感的に思いました。その数年後に北九州市立美術館で『 こわしたり 』 1951 (S26) に会うに、これらはセットだったのかと、その発想に奇抜さに興味がさらに沸いたのでした。

しかし、展覧会に取り上げられることはほとんど無く、東京国立近代美術館で『 ゴンベとカラス 』1966 (S41) が出ることは、何回とあった所蔵品展でも1度あったか、どうかな? という記憶です。

さて、そういう長い期待を経て、静かな待望の大回顧展です。
桂ゆきが、それぞれ経緯を追って、どういう作品を追求していったかが解ります。

今回の展示会は、以下の5部構成になっていました。

I.  3つの表現方法の模索 : ~ 1930年代
ミロやエルンスト的な模索が行われる中で、その後の各作品のベースとなる、細密画・コラージュ・戯画的表現の追求と実験が行われています。

II.  社会との距離 : 1940年代 ~ 1955
社会事件のテーマも扱いつつ、固定観念による見方の固定がされないようにするという試みです。先の『 積んだり 』『 こわしたり 』のように、各バラバラの場面を組み合わせて1枚の中で表現して全体を構成するシリーズも、この時期の作品です。

III.  長い旅 : 1956 ~ 1961
パリ - 中央アフリカの僻地 - ニューヨーク と、世界各地で生活し、現地のアーティストたちと交流しながら、抽象表現主義的な作品に取り組んでいますが、こういったシリーズの時代があったこと、今回初めて知りました。
また、その、アフリカ訪問は帰国後に体験記として「女ひとり原始部落に入る」という書籍になり、毎日出版文化賞を受賞してます。しかし、その時代、そんな奥地へ出かけていったというのは、兼高かおるさんも、びっくりだったでしょうね。

IV.  動物寓話 : 1960年代中 ~ 1970年代
大型のコラージュのシリーズ。目が、それぞれに表情を持ち、戯画的に全体が表現されています。しかし、その中には、コラージュのように見えて、実は、そのように見せたペインティングである作品も多いのです。

V.  人とモノと生き物がおりなす物語 : 1970年代後 ~ 1980年代
コルクを切って立体的に貼り付けて作成したコラージュ作品が展示されています。

そして最後に、着物の裏地に用いる紅絹に綿を詰め込んで縫って作った、お手玉のような、座布団のような、はたまた芋のような色んな形のものをいくつも組み合わせて作られた作品の展示室で終わります。「これ、草間彌生かイ・ブルの作品の部屋ですか?」と思いました。

今後、さまざまな展示会の各テーマによって取り上げられることを期待しますが、全体を通して把握できる回顧展として、今回の展覧会を押さえておかれること、お勧めです。^^

桂ゆき - ある寓話

at 東京都現代美術館
2013(H25). 4. 6 – 6. 9
図録: ¥ 2,500

その後、下関市立美術館へ巡回
2013(H25). 6.21 – 8. 4

桂ゆき 作品ページ

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