プーシキン美術館展の感想


pushkin20132011年の春に開催予定でしたが、東日本大震災直後の混乱のため中止になってしまったので、もう無理かと思っていたプーシキン美術館展。幸い復活することになり、今年、名古屋を経て、ようやく横浜にやって来ました。当館の作品は 2005~06年にも来日しましたが、今回はオールドマスターの作品を含めた展覧会です。

まず、パンフの裏側に掲載されている アングル の 『 聖杯の前の聖母 』 1841。
聖母にしては、ちょっと色っぽいかな、という感じですが、さすが、アングル。春先のラファエロの聖母とも違った、絶妙な魅力を放っています。

嬉しいことに ジェローム の作品が1点。『 カンダウレス王 』 1859-60頃。
古代リュディアというところの王交代劇の発端となった一場面ですが、ストーリーを抜きにしても、ジェロームならではの、不遜か否かギリギリのエロチックな作品。

今回の展覧会の看板になっている、ルノワール の 『 ジャンヌ・サマリーの肖像 』 1877。画風の変化が少ないルノワールにおいて、なにか特定の作品を「最高傑作」と称すのは難しいと思うのですが - そう云うなら、先日のクラーク美術館展の作品も「最高傑作だらけ」になるでしょう - これもピンクの色彩が美しい良い作品であることには間違いありません。旧モロゾフ・コレクション。

さて、センスが尖っているのは、やはり、シチューキン・コレクションの作品群。

ピカソ扇子を持つ女 』 1909。『 女王イザボー 』の連作とも取れる緑色の、分析的キュビズム時代の作品。去年・今年と、ピカソ作品展示の美術展が少ない中、ピカソ・ファンには必見の作品でしょう。

セザンヌ パイプをくわえた男 』 1893-96頃。胴が長くて腕も長い作品。謎かけの多いセザンヌ先生の作品ですが、人物画だけは、その意図が読みづらいのです。今回、この作品の前で 20分ほど粘りましたが解けず。。

ゴーギャン エイアハ・オヒパ(働くなかれ)』 1896。『 浅瀬(逃走)』など、その後の毒気が増す前の、比較的、落ち着いた感のある作品。

マティスカラー、アイリス、ミモザ 』 1913。ラフな描写ながらも、色彩のバランスが、なんとも心地よい作品。シチューキン・コレクションのマティス作品は、エルミタージュ美術館へ行ったものが多いのですが、これは良い作品。

ところで、今回の展示会に同期したイベントとして、池田理代子さんによる3本の書き下ろしコミック がWeb上で公開されています。それぞれ期間限定での公開なので、見逃せません。7~9月の期間に公開されているのは「モスクワの悲劇」。中を見てみると、これはシチューキン氏の伝記であり、家族の自殺や病死といった度重なる悲劇に見舞われたことが知れます。そういう中で、彼の鑑識眼は異様に研ぎ澄まされていったのかもしれません。

図録:¥2,000   2,000円というのはありがたいです。図録なるもの、2,500円前後だと、ちょっと躊躇するも、まぁ仕方ないかと。3,000円近くになると結構躊躇。どーしよーかなーと悩みます。3,000円を超えると、もう断念してしまうことが多いです。

さて、プーシキン美術館の所蔵品、これですべてかというと、いえいえ、まだまだ。
例えば、モネ の 『 草上の昼食 』 1866 が、まだ来ていないでしょう。これは、オルセーにある有名な同名作品とは、また違った完成度があるようです。次の機会に来てくれないかなと、今から期待 ^^;

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プーシキン美術館展
横浜美術館  2013. 7. 6 – 9.16
神戸市立博物館  2013. 9.28 – 12. 8

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