印象派を超えて 展の感想
- 2013年12月02日
- 展覧会
オランダのクレラー・ミュラー美術館所蔵作品展であり、パンフの表紙もゴッホなので、ゴッホ作品が多いのだろうと思って出かけました。しかし、ゴッホ作品は1室のみ。全体は分割主義(点描)の作品を説明し、コレクターであるクレラーさんの意向を分析していくという構成です。
まず、ゴッホのこと。
同じくオランダのゴッホ美術館が、最初、アムステルダム市立美術館へ遺贈された後に専門美術館として設立されたのと違って、クレラー・ミュラー美術館は能動的にゴッホ作品が蒐集されたものです。ですので、こちらこそ世界最大のゴッホ・コレクションというべきものだと思います。
では、何故に、クレラーさんは、かくもゴッホ作品に魅入ったのでしょう?
クレラー・ミュラー美術館サイトには「彼女はゴッホの新しい人間性に惚れた」とあるものの、過去のゴッホ展でも、その説明が無かったように思います。
今回、この展覧会の図録に、ようやく、その解説がありました。彼女は指南役であるブレマーの影響を受けて、「芸術作品を決定するものには、芸術家の人間性、環境、そして時代の精神の3つの要素がある」という考え方をしていたそうなのです。そういった思想の上で、ゴッホは過去には無かった新しい人間性を持った画家、と見いだしたのでしょう。
さて、その他の分割主義作品。
スーラの作品は当然のことですが、クレラーさんは蒐集のタイミングを逃したらしく、シカゴ美術館やナショナル・ギャラリー,ロンドンにあるような名作は手に入れられなかった模様です。
今回、オランダの点描作品画家、レイセルベルへの作品がたくさん展示されています。オルセーを含む過去の大型美術館所蔵品展でも、彼の作品はそれぞれ1~2点のみが出展されるだけでしたので、これは貴重な展示かと思います。
モンドリアンについても、これまでは、クレラーさんは、その新規性に興味を持っていたという説明だけだったと思います。事実、彼女のコレクションはモンドリアンの完成作が出る前で終わっているのです。今回、これも色彩分割の延長として位置づけられるという解説がされていました。これは納得出来ます。逆に、初期段階にして、それを認識されていたということに驚きを感じました。
なお、ピサロ等、その他の点描作品が、国内の美術館からも数多く出展されています。最初の部屋が国内美術館所蔵のみでしたので、あれ? という感じがしました。
サントリー美術館からも出展されていました。六本木へ移転以降、所蔵西洋画の作品が展示されたことが無く(確か)、大阪も閉じてしまわれたので、コレクション自体どうなっているのだろう? と不明なのですが、今後、その他の所蔵作品も出展していただく機会が増えるとありがたいですね。
「 印象派を超えて - 点描の画家たち ゴッホ、スーラからモンドリアンまで 」
図録 ¥ 2,300
国立新美術館: 2013.10. 4 – 12.23
広島県立美術館: 2014. 1. 2 – 2.16
愛知県美術館: 2014. 2.25 – 4. 6