「ミン・ウォン展 私のなかの私」の感想


資生堂ギャラリーで開催されている「ミン・ウォン展 私のなかの私」に、昨日、行ってきました。

ミン・ウォン氏はベルリンを拠点に活動しているシンガポールのアーティスト。
地下の資生堂ギャラリーへ潜ると、日本の歌舞伎と小津映画とエヴァンゲリオン等のアニメを題材にした3種の映像作品がそれぞれ流されており、ミン・ウォン氏自身が映像の中で3役以上をこなしています。各役回りを別々に撮影した上で合成して共演しているように見せるという凝った作りになっています。

さらには、広いフロアの3壁面に、別アングルからの映像や撮影風景などが映像がすべて同期した形で流され、いわば、映像合成の種明かしもされているのです。

男のごつい体型で女性に扮した姿などなど、もう一度見たいか? というと、それは違うのですが、シリアスなテーマを選定しパロディの一歩手前で、このように日本という文化をリメイクしていることは、お見事でしょう。

総じて、その感想はというと、「参ったなぁ」というところですね。
「いや、違うんだけど、そんなことはしないんだけど、うむ、確かにそうです」と。

さて、ギャラリーに入るときには、ぽつぽつと降り始めていた雨。30分ほどの鑑賞を終えて地下から上がってきてみるや、外は激どしゃ降り! 雷もすごかった。

ミン・ウォン展 私のなかの私

資生堂ギャラリー
2013. 7. 6 – 2013. 9.22

「今日のお知らせ」まとめ 2013.7月前半


7/16 今週の Happy Birthday! は、南薫造、7/21生まれ。東京国立近代美術館蔵の『 少女 』が切手になったことで、少し認知度上がったのではないかと思います。

7/15 今日をもって数多くの展覧会が終わり今年の前半終了です。後半から来年にかけての展覧会に、右側→ の紹介を差し替えました。それぞれ美しいですね。

7/14 オスロ市立ムンク美術館蔵の作品を中心に ムンク の作品 を増量掲載しました。出光美術館へムンク美の作品が毎年3点貸し出されています。

7/13 今週の Happy Birthday! は クリムト、7/14生まれ。『 エミーリエ・フレーゲ 』の切手は、おそらく唯一の海外絵画の日本切手です。

7/12 プーシキン美術館展開催の関連イベントとして、池田理代子さんの「三都物語」というコミックが公開。現在公開の「モスクワの悲劇」はシチューキンの伝記。

7/11 グーグル・アート・プロジェクトのURLが全面変更になっていたので、すべて貼り替えました。google.comで統一されたみたいです。→ 上村松園 などの ◆印

7/10 クラーク美術館 所蔵作品の追加第3弾をアップしました。意外なことに、公式サイトにはルノワール作品の紹介少ないです。

7/9 クラーク美術館 所蔵作品の追加第2弾をアップしました。公式サイトには映像+音声解説(英語)も充実しています。

7/8 クラーク美術館 所蔵作品 のページを新たにアップしました。量が多いので第1弾です。なお、全掲載数が 13,100点を突破しました。

7/7 6月の高額落札アート作品一覧 をアップしました。またまたベーコンの作品が出ました。カンディンスキーなども。ピーター・ドイグは今後のマークでしょうか。

7/6 スペクトラムで異様な世界表現が特徴的な ジャン=レオン・ジェローム のページ を新設しました。日本でも大規模回顧展ありませんかねー。

7/5 今週の Happy Birthday! に、デ・キリコ、7/10生まれ。ニューヨーク近代美術館のサイトには日本語音声での作品紹介があり、こういうの広がると良いですね。

7/4 川村清雄 の作品を追加 しました。数年前のNHK大河ドラマ「篤姫」=『 天璋院像 』の肖像画で、一気に認知度アップした感ありますね。

7/3 点数は少ないのですが、宮内庁三の丸尚蔵館 所蔵作品・日本洋画 の作品をまとめ、ページを立てました。

7/2 東京国立博物館で開催中の「平成24年度新収品」展 の感想等をブログにアップしました。池玉瀾、良いですね。

7/1 宮内庁三の丸尚蔵館 所蔵作品・日本画 を追加しました。川崎小虎、橋本雅邦、平福百穂、狩野探幽の作品です。

 

プーシキン美術館展の感想


pushkin20132011年の春に開催予定でしたが、東日本大震災直後の混乱のため中止になってしまったので、もう無理かと思っていたプーシキン美術館展。幸い復活することになり、今年、名古屋を経て、ようやく横浜にやって来ました。当館の作品は 2005~06年にも来日しましたが、今回はオールドマスターの作品を含めた展覧会です。

まず、パンフの裏側に掲載されている アングル の 『 聖杯の前の聖母 』 1841。
聖母にしては、ちょっと色っぽいかな、という感じですが、さすが、アングル。春先のラファエロの聖母とも違った、絶妙な魅力を放っています。

嬉しいことに ジェローム の作品が1点。『 カンダウレス王 』 1859-60頃。
古代リュディアというところの王交代劇の発端となった一場面ですが、ストーリーを抜きにしても、ジェロームならではの、不遜か否かギリギリのエロチックな作品。

今回の展覧会の看板になっている、ルノワール の 『 ジャンヌ・サマリーの肖像 』 1877。画風の変化が少ないルノワールにおいて、なにか特定の作品を「最高傑作」と称すのは難しいと思うのですが - そう云うなら、先日のクラーク美術館展の作品も「最高傑作だらけ」になるでしょう - これもピンクの色彩が美しい良い作品であることには間違いありません。旧モロゾフ・コレクション。

さて、センスが尖っているのは、やはり、シチューキン・コレクションの作品群。

ピカソ扇子を持つ女 』 1909。『 女王イザボー 』の連作とも取れる緑色の、分析的キュビズム時代の作品。去年・今年と、ピカソ作品展示の美術展が少ない中、ピカソ・ファンには必見の作品でしょう。

セザンヌ パイプをくわえた男 』 1893-96頃。胴が長くて腕も長い作品。謎かけの多いセザンヌ先生の作品ですが、人物画だけは、その意図が読みづらいのです。今回、この作品の前で 20分ほど粘りましたが解けず。。

ゴーギャン エイアハ・オヒパ(働くなかれ)』 1896。『 浅瀬(逃走)』など、その後の毒気が増す前の、比較的、落ち着いた感のある作品。

マティスカラー、アイリス、ミモザ 』 1913。ラフな描写ながらも、色彩のバランスが、なんとも心地よい作品。シチューキン・コレクションのマティス作品は、エルミタージュ美術館へ行ったものが多いのですが、これは良い作品。

ところで、今回の展示会に同期したイベントとして、池田理代子さんによる3本の書き下ろしコミック がWeb上で公開されています。それぞれ期間限定での公開なので、見逃せません。7~9月の期間に公開されているのは「モスクワの悲劇」。中を見てみると、これはシチューキン氏の伝記であり、家族の自殺や病死といった度重なる悲劇に見舞われたことが知れます。そういう中で、彼の鑑識眼は異様に研ぎ澄まされていったのかもしれません。

図録:¥2,000   2,000円というのはありがたいです。図録なるもの、2,500円前後だと、ちょっと躊躇するも、まぁ仕方ないかと。3,000円近くになると結構躊躇。どーしよーかなーと悩みます。3,000円を超えると、もう断念してしまうことが多いです。

さて、プーシキン美術館の所蔵品、これですべてかというと、いえいえ、まだまだ。
例えば、モネ の 『 草上の昼食 』 1866 が、まだ来ていないでしょう。これは、オルセーにある有名な同名作品とは、また違った完成度があるようです。次の機会に来てくれないかなと、今から期待 ^^;

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プーシキン美術館展
横浜美術館  2013. 7. 6 – 9.16
神戸市立博物館  2013. 9.28 – 12. 8

プーシキン美術館のページ
気になる美術展一覧

 

2013年6月の高額落札アート作品トップ10


毎月の定点観測です。

1. モネ 『 Le Palais Contarini 』  3,081万ドル
2. バスキア 『 Untitled (diptych) 』  2,893万ドル

3. カンディンスキー 『 Studie zu Improvisation 3 』  2,111万ドル
4. ベーコン 『 Three Studies of Isabel Rawsthorne 』  1,730万ドル

5. ベーコン 『 Head III 』  1,601万ドル
6. モンドリアン 『 Composition with red, yellow and blue 』  1,451万ドル

7. Tang Yin 『 松崖别业图 』  1,163万ドル
8. ピーター・ドイグ 『 Jetty 』  1,132万ドル

9. モディリニアーニ 『 Paul Guillaume 』  1,060万ドル
10. カンディンスキー 『 Study for autumn landscape with boats 』  995万ドル

artnet の一覧はこちら (画像が見られますが、一月で更新されます)

 

今日のお知らせ まとめ 2013.6月後半


6/30 レオポルド美術館蔵の クリムト 作品が漏れていたのでアップしました。昨日の エゴン・シーレ 作品掲載で、このサイトの全掲載数が 13,000点を超えました。

6/29 新たに エゴン・シーレ の作品ページを追加しました。あけすけな描写を前にたじろいでしまいそうにもなりますが、内なる寂しさに惹かれもします。

6/28 東京国立博物館の本館18室に、前田青邨『 唐獅子 』(個人蔵)が展示されてました。三の丸尚蔵館や静嘉堂文庫蔵作品より前の制作であり貴重な展示です。

6/27 切替遅れてしまいましたが、今週の Happy Birthday! は 木村武山、7/3生まれ。後期のカラフルな作品が良いです。

6/26 村内美術館 が大幅リニューアル前の休館に入ってしまいました。所蔵作品の行方も知れませんが、プライベート・コレクションなので贅沢は言えませんね。

6/25 北海道立近代美術館から全国巡回が始まる 「シャガール展」の公式サイト が美術展サイトとしてレベルが高いです。他もこうあって欲しい。

6/24 フランシス・ベーコン のページに作品を追加しました。所有者の一つである 台湾の ヤゲオ って電子部品メーカーですが、美術館とかもあるのでしょうか?

6/23 富士山のユネスコ世界遺産登録決定で、葛飾北斎の『 冨嶽三十六景 』なども、また、露出の機会が増えるでしょうか。

6/22 フランスの ナント美術館 の情報、ならびに、所蔵作品のページを新たにアップしました。ココの、モネのゴンドラ は良いですね。

6/21 お中元商戦真最中で、気になるデパート物産展の情報更新、当面はさっぱりです。来月になると、次の予定が出てくると思うのですが。

6/20 今週の Happy Birthday! は 岸田劉生 6/23生まれ。まだ先ですが、世田谷美術館で開催の「岸田吟香・劉生・麗子知られざる精神の系譜」展、楽しみです。

6/19 東京国立博物館の「平成24年度新収品」の出展リスト (6/25-7/7) を見ると、池玉瀾・池大雅・谷文晁・狩野探幽とあって、気になりました。

6/18 東京国立博物館で始まる「京都 - 洛中洛外図と障壁画の美」展 (10/8-12/1)、公式サイトを見ていると、バブリーな時代だったんだな、という気がします。

6/17 鏑木清方記念美術館で開催中の「初夏の風情 - 随筆 『 こしかたの記 』 とともに -」展の 感想をブログにアップ しました。

6/16 夏に向けて展覧会情報を調べる人が増えてきているようです。そして、8月はアート系のネット利用が多い月ですね。

東京国立博物館の平成24年度新収品展


東京国立博物館の平成24年度新収蔵作品リストを見ていたら、久世民榮という方の寄贈による、池玉瀾や谷文晁、狩野探幽などの展示があると出ています。
これら、先日、江戸東京博物館で開催中のファインバーグ・コレクション展で気になった人たちではないですか。これは観ておかないと。。

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池玉瀾 『 蘭図扇面 』
旦那の池大雅の作品が自由な南画調でありながらも、奥さんの池玉瀾の作品を観ると、大雅以上に、さらに自由な気分で筆が楽しげに踊っている感あります。こだわりの無い伸び伸びとした世界です。

狩野探幽 『 布袋図 』
縦に長~い軸の作品。
探幽の作風の幅の広さには、新たな作品に出逢うたびに、感動させられます。

新収品自体は、そう数は多くないので、続いて、1階へ降りて、近代絵画の 18室へ。
前田青邨の『 唐獅子 』が展示されていまして、個人蔵であり初めて見ました。六曲一双の金屏風で、これ自体完成作品のようですが、解説を読むと、その後、皇室へ献納された作品(また、静嘉堂文庫美術館にある作品)よりも先の制作とのこと。つまり、完成型に至る過程としての作品でしょう。

ところで、東京国立博物館のショップは以前は地下にありましたが、1Fに移動したのですね。入り口左手の広いフロアです。ショップを一周して、「あれ? 書籍が置いてない」と気づいて店員さんに尋ねるに、後ろを振り返って見上げた中二階が書籍フロアになっているのでした。長いスロープを上っていくのですが、そのスロープの脇も全部書棚になっていました。
それを見ていくと、全国のいろんな美術館の図録も置いてあります。中には行きたくて行けなかった過去展の書籍もあって、これは助かります。今後、利用させていただきます。