大田区立郷土博物館「川瀬巴水 展」の感想


西馬込 の大田区立郷土博物館にて、「 川瀬巴水 - 生誕130年記念 - 」展が開催されています。2013.10.27 – 2014. 3. 2 の期間、前期・中期・後期に分けて全点展示替えで、500点近くの巴水作品に会える、しかも無料公開の展覧会です。

川瀬巴水は大正から昭和初期にかけて活躍した版画家で、戦前の東京等の情景が、一見、江戸期の版画と似ているのですが、よく見ると電気が灯っていたり運河があったりと近代化含みのところに独特な情緒があります。

暗い夕刻の風景の家屋の中に明かりがあるのは、マグリット的でもあります。
NHKの番組でアップル社の故スティーブ・ジョブスも好んだとありましたが、彼は巴水のみではなく、近代日本版画全般が気に入っていたらしいです。

さて、この方、鏑木清方 の弟子でありました。大正期に三菱財閥がお得意先への配るために深川別邸を描いた「三菱深川別邸の図」というものを企画しました。当初、鏑木清方へ依頼されたのですが、清方は「風景なら巴水の方がいい」と彼を推挙したことで、巴水の作品が実現することになったのです。三菱の贈答品として海外にも広がったことで、世界的に人気となりました。

もし、鏑木清方作の美人風景画が実現して海外に出ていたら、国際的な清方人気が、もっと広がっていたかも? と思うと、正直、ちょっと残念な気もしますが、巴水自身意図したわけではないでしょうが、思わぬところで、結果的に国際媒体に乗って広がったというマーケティングに成功したわけですね。

otaku201310
川瀬巴水 - 生誕130年記念 -
大田区立郷土博物館
2013.10.27 – 2014. 3. 2   前期・中期・後期: 全点展示替え
図録: 2,000円

なお、同時期、千葉市美術館でも「 川瀬巴水 展 」が開催されています。
2013.11.26 – 2014. 1.19

 

コメントを残す