「アントニオ・ロペス」展の感想


今年1月に 期待の予告 を出しておりました「アントニオ・ロペス」展、開始から少し遅れましたが、鑑賞してきました。

リアリズム絵画というと、文字通り非常に細密に描かれた、光の反射の多い作品を思い浮かべがちですが、この方の作品は、むしろ細部は荒いタッチの積み重ねでありながら、全体としてはリアリティあることに驚かされます。

なので、風景画は燦々と陽の光が輝くスペインでは無く、どちらかというと曇天の感じの、どれもが乾いた静かなマドリードの広い風景です。

室内画も静謐な無音の世界であり、その点ではワイエスに近い感があるのですが、ワイエスのように濡れているのではなく、ここでも、やはり乾いている感じでした。

そういう独特の世界の絵画作品に感動しながら鑑賞していくと、最後のルームに人体ブロンズなどが展示されていました。その中に、茶色の赤ん坊の頭部の石膏像が。

生まれて数週間の、まだ目が開く前の、触るとふにゃっと柔らかそうな、今にも歯の無いちっちゃな口を開けてあくびでもしそうな、そんなリアリティ高い赤ん坊の頭部です。
大事に・大切にしなきゃ、といった、やさしい気持ちに包まれるでしょう。

現代スペイン・リアリズムの巨匠 アントニオ・ロペス 展
Bunkamura ザ・ミュージアム
2013. 4.27 – 6.16
図録: 2,500円

長崎県美術館
6.29 – 8.25

岩手県立美術館
9. 7 – 10.27