イギリスではBBCが表に立って、国内の美術館や大学等、公的機関が所蔵する全油彩画 21万点を、すべてWebに掲載する “Your Paintings” が完成! アーティスト名から検索してみたりすると、へぇ、こんな作品もあったの!? という発見がたくさんあります。
アート情報を整理してWebで公開しようという動きは、フランスには昔から「フランス国立美術館連合 ( RMN )」があり、ヨーロッパ全体では「europeana」が立ち上がりました。アメリカは個々の美術館が強いので、先日のクリーブランド美術館のように一館で数百億円を投資するなんてことがあるのですが、それでも、美術館連合の動画配信である「ArtBabble」や、学芸員さんたちの有志で進められている「Smarthistory」などがあります。
情報をオープンに発信して共有し全体の価値を高める、ということが、欧米では積極的に進められていることが判りますね。
翻って日本はどうかというと、現状のままだと、世界の動きからだんだんと取り残されていってるような感じがしてしまいます。
この春、フランス国立クリュニー中世美術館から6面のタピスリー「貴婦人と一角獣」が来日する予定です。その6点だけが展示される小展覧会だろうかと思いきや、その美術館から全部で約40点が来るそうなので、他にも中世ヨーロッパの芸術作品が楽しめるという訳ですね。
ちょいと事前予習ということで、クリュニー中世美術館のホームページのコレクション・コーナーを覗いてみましょう。
「貴婦人と一角獣」以外にも優れたタピスリーなどがあるようです。一緒に来てもらえると嬉しいです。
あと、この展覧会、英題で ” The Lady and the Unicorn ” と付いていますが、どうも、The が付くと堅い感じがしてしまい、英語ではピンと来ません。
やはり、フランス語で ” La Dame à la licorne “、こちらがしっくり来ますね。
先日の「シャガールのタピスリー展」でのイヴェット・コキール=プランスさん、中世のタピスリーを調べまくったと、インタビュー映像で述べてられましたので、きっと、この作品も研究されたのでしょう。
2013. 4.24 – 2013. 7.15 at 国立新美術館
2013. 7.27 – 2013.10.20 at 国立国際美術館
一応、美術展に行く前に 100円なり200円なり安く手に入ればラッキーということで、チケット屋さんに立ち寄ることが多いです。しかし、そこで得したと思って気が大きくなった分、鑑賞後のショップで図録+何かを買ってしまうんであり、結局、財布から出て行ったのは予定よりも多かったぁ、ということがよくあるのですが。。^^;
ところで、裏事情は全く知りませんが、美術展によっては、半額とか、さらにはそれ以下とかで売られていることがあるのが不思議です。それは開始後の展覧会の人気度を反映しているのか? そうかと思うと、実際には混んでいたりということもあって、では、来館促進の一手段なのかも? とも思えてしまうのです。
ま、業界どこでも、いろんな事情はあるでしょうから、それは知らずで良しとして、費用が浮いたら浮いたなりに、次の一鑑賞を楽しむことにしましょうね。^^
「駿府」の「博物館」とあり、実は、当初、徳川家関連の博物館だろうか? と思っていたのですが、静岡新聞社・静岡放送の創設者であった 大石光之助 氏が昭和期に集めた絵画や政治家などの書等のコレクションです。
他館の企画展に作品が貸し出されることも少ないようですので所蔵品の全貌が掴みにくいかと思いますが、ココの所蔵である、伊東深水の『 吹雪 』が、去年秋の「国際文通週間」記念切手になったことで認知も高まったことでしょう。
下村観山や橋本雅邦、平福百穂の作品所蔵が豊富で、百穂の水墨画や中村岳陵の南画風の作品などは、他では、あまりお目にかかれないものであり、貴重ではないかと思います。
静岡新聞社の別館の中にあり、入り口は、あまり美術館ぽく無いのですが、静岡駅から歩いていける場所ですので、是非、どうぞ ^^
※ 駿府博物館ページ はこちら
5/21から開催予定だという「ファインバーグ・コレクション展」の情報が出てないだろうかと、江戸東京博物館へ伺ったところ、年度またぎのためなのか、まだ出ていませんでした。
その代わりという訳では無いのですが、「信州善光寺出開帳両国回向院」というパンフが置いてありました。長野の善光寺の御開帳は、次回は再来年なので、まだまだ先なのですが、これは御開帳の出張版。両国駅そばにある回向院に出張されるというのです。
江戸時代にはたいそうな賑わいだったそうで、1778(安政07)年には、60日間で 1,603万人もの参詣があったとの話。(な、嘘な、という感じもしますが ^^;)
今回、東日本大震災復幸支縁 のため、戦後初の出開帳。
復興支援のため、ご利益を受けるため、こりゃ出かけてみなきゃ、と思います。
2013. 4.27 – 5.19
at 両国 回向院
「気になる お祭り・イベント スケジュール」のページに、こういった、祭り・イベントの情報をまとめておりますので、こちらも、ご利用ください。^^
アメリカのクリーブランド美術館が、館内鑑賞と個別作品の解説を受けることができる iPad 専用アプリ “ArtLens” を発表して話題になっています。実際に美術館に行って使用してみないと実感が沸かないところではありますが、iPad を作品の前でかざすと、各部分の解説が出るようになっているようです。
アプリ自体は無料です。→ iTunes のダウンロードページ
実際にダウンロードしてみると、インストールの後でコンテンツの取得をする必要があり、これを進めると、かなりの数のファイルを取りに行きました。
・館内フロアマップと作品画像
・作品別の解説と学芸員による動画での説明
・ツアー形式による作品解説
・今日の展示紹介
・フェイスブック、ツイッターへの投稿
等々と、これまで、いろんな美術館のホームページやアプリが実装してきたことを、発展させて全て盛り込んだという感じです。
これは、マティスの一作品の紹介ページ。音声で学芸員さんが作品の解説をきちんとしてくれる。これ海外の大手美術館のすばらしいところだと思います。
館との連動機能を含めて次世代のシステムであり、米国内各大手美術館も、これを倣うのではないか、との噂もありとのことです。また、いろんな館内設備等を含めてことだと推測しますが、このプロジェクトに 30人のスタッフが8年かけて、300億円ほど使ったというのですから、その規模の大きさに驚かされます。
さて、日本でも東京国立博物館でのスマホアプリ提供など、デバイスを併用した鑑賞サービスが始まっていますが、今後、どういった高度なサービスが出てくるでしょうか、楽しみです。
明治12年、明治天皇が群臣たちの肖像写真を手元に置いておこうと下命されて作られた 4,531名もの名士が載った、39冊からなる分厚いアルバムです。
A-1に分類されるアルバムには写真と共に、本人の和歌も掲載してあるというユニークな作り。当時、華族に限らず政治家や軍人でも歌を詠むことは必須の教養であったのですね。
明治の初期なので写真の質が悪いのは仕方ありませんが、紙幣や歴史書に出てくる著名人の別の姿の写真であったり、初めて見る写真もあります。また、その後活躍する人の若き日の姿であったりして、これは楽しめます。貴重な資料でもあります。
この写真集、各人の顔を確認されるために使われたのか、もしくは後生に残しておこうと指示されたのかもしれません。同じ頃、脚気対策のために漢方医と西洋医に競って研究させる「脚気相撲」を指示されたりしてますので、明治天皇は企画人な方だったのかもしれません。
いつもはゆったり鑑賞の三の丸尚蔵館ですが、今回は結構、混んでました。図録も売り切れてしまったそうで、増刷待ちとのこと。
2013. 1.12 – 3.10
at 宮内庁三の丸尚蔵館(入館無料)
スペインのアントニオ・ロペス氏。サッカー選ではなくて、同姓同名のアーティストです。Bunkamura にてルーベンス展の後に開催されるとのことで、最初、パンフを手にした時、「あ、今度は写真展か。。」と思ったのですが、よく見ると「油彩」とあります。そうです、これは細密画なんです。
スーパー・リアリズムというと、白日会の活動、そして近年開館した千葉のホキ美術館の話題から、写真以上にリアリティのある絵画として人気が高まっているでしょう。手の器用な日本人の得意とするところという気もしますが、そういうアーティストは世界中にもたくさんおられるのだと思います。
そういう一人、ロペス氏のまとまった企画展。日本人の感覚とは、また違であろうリアルすぎるリアルな絵画に、どんな印象を受けるか、楽しみな展覧会です。
2013. 4.27 – 2013. 6.16
at Bunkamura ザ・ミュージアム
今回は中国の作品が多く、作者・作品名共に日本では馴染みの薄いものが多いです。ラファエロのデッサンが高額落札されたのは、春からのラファエロ展を前に、ニュースですね。
1. ラファエロ 『 若きアポストルの頭部 』 4,785万ドル
2. 文徴明 ( Wen Zhengming ) 『 江山胜览图 』( landscape ) 1,625万ドル
3. 斉白石 ( Qi Baishi )『 祖国颂 』 ( Ode to the morher country ) 1,329万ドル
4. 文徴明 ( Wen Zhengming ) 『 溪山清远卷 』( Landscape ) 1,199万ドル
5. アルフレッド・ジェンセン 『 進行中の帆船 』 1,038万ドル
6. ヤン・ステーン 『 食事の前の祈り 』 908万ドル
7. Qi Gong 『 江水万里图 长 』(Landscape) 890万ドル
8. クロード・モネ 『 セーヌ川のほとり、アルジャントゥイユの橋 』 882万ドル
9. 張大千 ( Zhang Daqian ) 『 烟江叠嶂 』(Landscape) 839万ドル
10. Li Keran 『 雄关漫道·苍山如海 』(Representation of mao zedong’s poem) 655万ドル
→ artnet の一覧はこちら(画像が見られますが、一月で更新されます)
いつも海外美術館からの企画展が開催される Bunkamuraにて江戸期の日本画展とは意外であり、さて、どんな趣向の展覧会になるのだろう? と期待して出かけました。
まず、会場に入ると、「『賛』がどうの」、という解説が続きます。「賛」って何? 誰かが絵を描いて、別の人が賛辞を送る「画賛」のことで、大抵、漢文なり、崩れた文字で書いてあるので、何やら判らないというのが一般です。
内容は判らなくとも、その名の通り、賛辞が送ってあるのでしょう。ところが、今回、初めて知ったのですが、画を描いた本人が書く場合もあるそうなのです。
ん? だとしたら自画自賛? いや、そうでは無くて、「画賛」とは必ずしも賛辞とは限らないらしいのです。
それで、会場の最初の部分で出てくるこの作品。
『 横向き半身達磨 』 永青文庫 (前期のみ展示)
画像が小さくなるので、画賛の部分を拡大して横に置きました。
コレ、会場の解説によると「どふ見ても」と書いてあるそうなのですが、しかし、ど~見ても、そう読めませんよねぇ。
会場で先に進んでは戻り、他の作品と解説を見ては戻りで、4~5回繰り返し観に行って、やっと判りました。これ、縦に左から右に書いてあるのです。真ん中が「見」の漢字のようです。
謎が解けた瞬間、「もう少し丁寧に解説してもらえれたら。。」と思ったのですが、それも禅問答の一部としての設計なのかもしれません。
さて、今回の展覧会でのイチオシは、この作品。
『 渡唐天神 』 選佛寺(京都)
なんと、「南無天満大自在天神」という9文字から各パーツが構成されており、最後に菩薩の顔が当てはめられているというものです。構図といい、大胆な筆さばきといい、文字が絵とが融合して一体化した宗教画。これは奇抜です。
などなどが続く、いろいろと趣向の凝った展示会、お勧めです。^^
年初とあって「2013 美術展」で調べている方、急増のようです。
現時点で把握している美術展予定を「気になる美術展一覧」にまとめていますが、個人的には、
ラファエロ展: 国立西洋美術館
奇跡のクラーク・コレクション展: 三菱一号館美術館
フランシス・ベーコン展: 東京国立近代美術館
ファインバーグ・コレクション展: 江戸東京博物館
などは、必ず行くと思います。
その他も期待の展覧会ぞくぞく。さらには現在は準備中で、これから公開される必見の美術展も多々あるのでしょう。今年も楽しみですね。
名古屋市内にある 古川美術館のページ を新たに立てました。
映画館のヘラルドグループの創業者であった古川為三郎氏による優れたコレクション。余所と比較して東海地方の日本画画家の作品を数多く有するのも特徴でしょう。あまり、所蔵作品が全国巡回の回顧展に貸し出されることは少ないようですので、訪館して鑑賞することが必要かと思います。
美術館の近くに為三郎記念館というのがあって、日本庭園をそなえた広い古い屋敷で、奥が喫茶室になっています。都会の喧噪からしばし離れて、一息つけるところですね。