山種美術館「琳派から日本画へ」展


yamatane201302山種美術館は院展系を中心にした近代日本画の所蔵と共に、江戸期の琳派等の作品も所蔵が豊富ですが、それらがまとまって展示されることは数年おきですので、今回は、その貴重な機会です。

平安期の和歌巻物から出発して、その料紙装飾の特化を深めた江戸琳派、そして、それに続く、明治期以降の日本画の流れを見るという企画。一般に展覧会において、近世絵画は描かれている歴史内容の解説であったり、歌の内容の説明などに終始して、断片的なことが多いように思うのですが、それに比して、この展覧会は絵画の歴史の流れを解説する形になっていて、たいへん勉強になりました。

まず、「断簡」。「断簡」とは、巻物になっていたものを各和歌ごとに切り離して軸にしたものですが、それぞれに「○○切」といった名前が付けられることがあります。今回、「石山切」とか「戊辰切」などが出品されていて、それは何だろうと思っていたのですが、その切り分けられた時・場所などにちなんで付けられているとのこと。なるほど。

また、巻物の背景には植物が描かれていることがありますが、これは順番が決まっているとのこと。それは、竹 – 梅 – 芍薬 – 蝶 – 雌日芝 – 蔦 – 竹 – 藤 の順。さらには、巻物の裏側(紙背)には松葉が摺り出されているので、巻物を開くときに松竹梅のめでたい作りになっているとのこと。なるへそー、凝ってますねぇ。

さて、琳派の作品にはいると、六曲一双の俵屋宗達の『 源氏物語 関屋澪標図屏風 』。「え? 静嘉堂文庫美術館から来ているの?」と思いきや、山種美術館にも同様の作品の所蔵があったのですね。これは知らなかった。
速水御舟は、この作品を鑑賞して感動し(静嘉堂文庫美術館本だったらしいですが)、この左隻の右上に描いてある舟を取って自らの号にしたとの説明がありました。ほー、知らなかった。。

そして、明治期の光琳評価から大正期の宗達評価へと、大観・観山・御舟・古径、そして、戦後の加山又造等々に続くのですが、宗達評価というと今村紫紅が取り上げられるはずなのですが、それは山種美術館ゆえに御舟をクローズアップした構成でした。横浜美術館だったら、違った構成になるのでしょう。館の所蔵作品によって解説内容が変わること、少し留意するのが良いですね。

何十回と訪問している山種美術館ですが、次は初顔合わせでした。お勧めです。

安田靫彦 『 万葉和歌 』 1970 (S45)
菊池契月 『 紀貫之 』 昭和前期
松岡映丘 『 斎宮の女御 』 1929-32(S04-07)
小林古径 『 蛍 』 1912 (M45)
上村松園 『 詠哥 』 1942 (S17)

まだまだ、たくさんお持ちですね。そうそう、次回展覧会で出品予定の次も楽しみです。^^

菱田春草 『 桜下美人図 』 1894 (M27)

2013. 2. 9 – 3.31  at  山種美術館