フランシス・ベーコン展の感想


bacon201303

まず、1作目から「ベーコン作品はガラスを通して観ること」との説明がありました。本人が、そう希望していたとのことです。過去に、この、東京国立近代美術館や横浜美術館等での個別の所蔵作品展示にてガラスがしてあったかな? と記憶に定かでないのですが、ともかく、その趣旨から、今回、全点ガラスの中に展示してあります。

ガラスがあると自分や他人の姿、照明の光などが反射して見づらいな、という感があるのですが、ロスコ同様、それは作品と「対話」させたい意図なのだろうと思いつつ足を進めます。

しかし、一点ずつ観て行くに、ガラスに映る自分の姿と作品が重なることによって、だんだんと「お前も(おめーも に近い)、こうなるのだ。実はこうだろ?」とか問い詰められているかのような感覚に陥ってしまいました。特に消えゆく肖像画シリーズの前では恐怖心すら感じたほどです。存分に「対話」させられましたね。これが「精神神経への攻撃」の一つ?

それから、後期の作品での潰れた顔やひねったり曲げたりした体型ですが、これらは粘土細工が先にあったものではないかと思っていたのですが、そういう解説はありませんでした。本人自身がそう言っていた「ごみ溜め」のアトリエの写真や映像にも、そういう作業台があるように見あたりません。となると、彼は、すべて頭の中で再構成して表現したのでしょうか。それは、驚きです。

人体表現については、会場ではX線による骨格把握が出来るようになったことが影響しているとの解説でしたが、図録によるとドガにも影響を受けているとのこと。確かにドガの晩年のバスタブ・シリーズには、「背骨の最上部は皮膚から突き出さんばかり」の極端に不自然な体型の表現があり、これがベースにあったとは新たな発見です。

ドガ: 浴後、うなじを拭く女
ドガ 『 浴後、うなじを拭く女 』 1898  オルセー美術館
大サイズ/購入 オールポスターズ

ところで、所蔵が豊富な(おそらく一番多いのではないかと思うのですが)、イギリスのテート・モダンから1点だけしか来ていなかったのは意外でした(→ こちらが テート・モダンHPのベーコン作品一覧ページ)。テートからは、秋にターナー作品が大挙して来ますが、ターナー展はオーストラリアも回ってきますので、高額な保険金なども計算すると、世界規模の巡回展でないと成立できないのかもしれません。

ともかく、国内には所蔵が少なく、昨今のオークションでの超高額落札状況を見るに、今後も国内で取得される可能性は低いベーコン作品。生涯の作品全般を一挙に把握できる大規模回顧展です。それぞれに、直接会って「対話」をされること、お勧めです。

at 東京国立近代美術館
2013. 3. 8 – 5.26
図録 2,500円

at 豊田市美術館
2013. 6. 8 – 9. 1

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