今回は、なかなか時間が取れず、東京展終盤になって、やっと行けました。
いつもの通り、個人的に、各作品の前で、どう立ち止まったかのリスト(敬称略)。
◎ しばらく足が止まった作品
『 想 』 宮北 千織
『 夏の細道 』 北田 克己
『 花の中に 』 伊藤 髟耳
『 雪の音・橅の音 』 安原 成美
『 春爛漫 』 田淵 俊夫
『 Ataraxia の映帯 』 大久保 智睦
○ すこし足が止まった作品
『 空へ 』 郷倉 和子
『 莫妄想 』 藤城 正晴
『 百花為誰開 』 井手 康人
『 発電所跡 』 小野田 尚之
『 秋色の中で 』 杉山 紅
『 連なりのある街 』 中神 敬子
『 ひととき 』 武蔵原 祐二
※ 前回(第68回 春の院展)の感想
■ 再興第98回 院展 東京展
会場: 東京都美術館
期間: 2013. 9. 1 – 9.16 その後、全国各地巡回
HP: 日本美術院のホームページ
巡回展
京都市・京都市美術館: 9.20 – 10. 6
大阪市・大丸心斎橋店: 10. 9 – 10.15
山形市・山形美術館: 10.19 – 11. 4
安来市・足立美術館: 11. 8 – 11.26
名古屋市・松坂屋美術館: 11.30 – 12. 8
横浜市・そごう美術館: 12.12 – 12.28
岡山市・天満屋: 2014.1. 2 – 1.19
広島市・福屋: 1.23 – 2. 4
宇都宮市・東武宇都宮百貨店: 2. 8 -2.18
魚津市・新川文化ホール: 3.14 – 3.30
北九州市・北九州市立美術館分館: 4.21 – 5.18
江津市・今井美術館: 5.23 – 6. 8
国内美術館にあるアメリカン・ポップ・アート作品の全てを集合させても、これだけまとまった展示はできないだろうと思えるくらい、強力なコレクションの展覧会です。そもそも、日本国内でアメリカン・ポップ・アートのみの作品展が開催されることは稀なのですが、ウォーホルだけでなくロイ・リキテンスタインやウッセルマン等の作品も数多くまとめて鑑賞できるというのは、ほんとうに稀少だと思います。
展覧会の流れは、抽象表現主義からポップ・アートへの橋渡しとなった、ロバート・ラウシェンバーグとジャスパー・ジョーンズから始まります。ラウシェンバーグの「コンバイン」シリーズ作品、さらには、ジョーンズの「ハッチング」シリーズ作品をまとめて鑑賞できたのは初めてでした。
続いて、ラリー・リヴァーズとジム・ダインへ、そして、「ソフト・スカルプチャー」のクレス・オルデンバーグと移ります。
そして、いよいよ、アンディ・ウォーホル となるのですが、『 キャンベル・スープ缶 』のみならず、『 電気椅子 』『 マリリン 』『 毛沢東 』『 花 』、、と代表作の大集合!
その中でも圧巻なのは「キミコ・パワーズの部屋」とも呼ぶべき、一室全部がウォーホルによるキミコ・パワーズさん作品で埋め尽くされたコーナー。これは、このコレクションでしか実現できないでしょう。
ココまでだけでもお腹いっぱいというところなのですが、次に、ロイ・リキテンスタイン。『 鏡の中の少女 』などの他に「モネの大聖堂シリーズ」まで逢えるとは感涙ものでした。
メル・ラモス、ジェイムズ・ローゼンクイストと来て、〆は、トム・ウッセルマン。線だけのヌードが妙にエロいんですが、さらには鉄をレーザーで切って具象的に表現した作品も出品されていました。
さて、図録の最初にキミコ・パワーズさんによる蒐集回顧談が掲載されています。力入れての購入という姿勢では無く、日々の茶飲み集まり的場所がギャラリーであって、気に入ったものを集めていったという話はおもしろかったです。
この図録、3,500円と、ちょい高めなのですが、アメリカン・ポップ・アートの流れを追って把握できるように解説されていますので、学術書としても重要でしょう。
これまでにアメリカ本国でも全貌が紹介される機会は無かったというパワーズ・コレクションの展覧会。必見です。
「アメリカン・ポップ・アート展」
国立新美術館
2013. 8. 7 – 10.21
→ 気になる美術展一覧
毎年夏の時期にホテルオークラ東京にて趣向を変えて開催される「秘蔵の名品アートコレクション展」。今年は「パリ」という場所をキーにした作品展。第一次世界大戦後にパリに集まったエコール・ド・パリの画家たちを対象にした展覧会は度々開催されていますが、今回は日仏両画家の作品を織り交ぜてあるところが特徴的でしょう。
ヴラマンクに里見勝蔵、ユトリロに佐伯祐三などなど、パリに行った日本人画家が、どういう風に影響を受けて、そして、それを越えて自分の境地を切り開いたかを、それぞれの作品を並べて展示してあります。
マルケの展示があるところで、藤島武二はマルケの影響を受けているはずだと思うのですが、藤島の展示はありませんでした。彼はパリの風景は描いていなかったからであり、時代がずれるからしょう。いつかどこかで、マルケと藤島武二の比較、および、その後の影響について分析した展覧会がないかな、と思っています。
さて、個別の作品の感想としては、、
モネ『 菫の花束を持つカミーユ・モネ 』。へぇー、こんなカミーユの肖像画があったのですか。しかも、所蔵は知れないものの、日本国内に。カミーユの表情がはっきり知れる作品は、カミーユが何人も現れる『 庭の女たち 』か、もしくは死の床の悲しい作品ぐらいで、これは珍しいです。これこそ「秘蔵の名品」と思いきや、企画者のお一人である熊澤さんから「2007年の国立新美術館でのモネ展に出ていたよ」と教えていただきました。それは漏らしてました。
パンフレットから、アサヒビール大山崎山荘美術館のモネ『 睡蓮 』が出ることが知れていましたので、2メートル四方の大きな作品が来るのだろうかと期待していましたが、それは叶わなかったようです。
パリということで藤田の作品も出ているだろうと思ったら、6点も出ていました。『 パリ風景 』は「小さな職人」タッチの作品で、内容は富める者と貧しき者でしょう。清方の『 讃春 』みたいなもの。『 朝の買物 』も市中での1ショットですが、藤田のそういう作品が他にもあったことは発見でした。
モネ ユトリロ 佐伯と日仏絵画の巨匠たち
ホテルオークラ東京 アスコットホール(別館地下2階)
2013. 8. 7 – 2013. 9. 1
「大倉コレクションの精華 II - 近代日本画名品選 -」展。
今回、横山大観の「ローマ日本美術展覧会ポスター」が出るとあり、これは観ておきたいと思いました。さて、いつ行こうかと思っていたら、ホテルオークラ東京 別館地下2階のアスコットホールで開催されている「秘蔵の名品アートコレクション展」の 1,200円のチケットで、こちら大倉集古館の展覧会も鑑賞できるとありました。ラッキー。得した感じです。^^
いつも花冷えのする寒い春先に鑑賞することが多い大観の『 夜桜 』。この特別に暑い夏に観ると、なんだか違和感がありました。秋に横浜美術館で逢うときは、また別の感覚でしょうか。
この、ローマ日本美術展覧会出展作品の中で好きなのは、小林古径の『 木菟図 』です。暗闇の中、ミミズクの紅い目が赤い木の花と同調して、そして、キョロっと動き出しそうなのです。
大倉コレクションの精華 II 展は、 2013. 8. 3 – 9.29
秘蔵の名品アートコレクション展は、2013. 8. 7 – 9. 1
ですので、9/1までにホテルオークラ東京に行かれて、一緒に鑑賞されることおすすめです。^^
来年1月から東京ステーションギャラリーで開催予定の「英国現代アート展」が仮称で発表されていました。イギリスのコンテンポラリー・アートが、まとまった形で美術館で開催されるのは珍しいので楽しみです。
さて、その中身は、まだ知れないのですが、先日、正式展覧会名が発表されました。
「プライベート・ユートピア ここだけの場所
ブリティッシュ・カウンシル・コレクションにみる英国美術の現在」
東京ステーションギャラリー / 2014. 1.18 – 3. 9
ブリティッシュ・カウンシルって、留学・英会話の ??
そうです。イギリスの国際文化交流機関ですね。
→ 日本のページはこちら
ここがアートの活動が活発であること、所蔵があるとも知りませんでしたので、また、ツイートしたら意外と反響も多かったので、少し予習です。
→ 本国のアートのサイトはこちら
アート活動や展示会等の情報が掲載されており、コレクションの作品画像も観ることができます。
イギリスのアーティストの初期段階の作品を集めることがコレクションのポリシーになっているとのこと。また、あらゆるメディアにおける突出した作品を集めているとのことです。
さて、これらの中から、どんな作品がやって来るでしょうか。東京ステーションギャラリーから展示会の詳細が出てくるのは、もう少し先でしょうが、期待してましょう。
資生堂ギャラリーで開催されている「ミン・ウォン展 私のなかの私」に、昨日、行ってきました。
ミン・ウォン氏はベルリンを拠点に活動しているシンガポールのアーティスト。
地下の資生堂ギャラリーへ潜ると、日本の歌舞伎と小津映画とエヴァンゲリオン等のアニメを題材にした3種の映像作品がそれぞれ流されており、ミン・ウォン氏自身が映像の中で3役以上をこなしています。各役回りを別々に撮影した上で合成して共演しているように見せるという凝った作りになっています。
さらには、広いフロアの3壁面に、別アングルからの映像や撮影風景などが映像がすべて同期した形で流され、いわば、映像合成の種明かしもされているのです。
男のごつい体型で女性に扮した姿などなど、もう一度見たいか? というと、それは違うのですが、シリアスなテーマを選定しパロディの一歩手前で、このように日本という文化をリメイクしていることは、お見事でしょう。
総じて、その感想はというと、「参ったなぁ」というところですね。
「いや、違うんだけど、そんなことはしないんだけど、うむ、確かにそうです」と。
さて、ギャラリーに入るときには、ぽつぽつと降り始めていた雨。30分ほどの鑑賞を終えて地下から上がってきてみるや、外は激どしゃ降り! 雷もすごかった。
「ミン・ウォン展 私のなかの私」
資生堂ギャラリー
2013. 7. 6 – 2013. 9.22
2011年の春に開催予定でしたが、東日本大震災直後の混乱のため中止になってしまったので、もう無理かと思っていたプーシキン美術館展。幸い復活することになり、今年、名古屋を経て、ようやく横浜にやって来ました。当館の作品は 2005~06年にも来日しましたが、今回はオールドマスターの作品を含めた展覧会です。
まず、パンフの裏側に掲載されている アングル の 『 聖杯の前の聖母 』 1841。
聖母にしては、ちょっと色っぽいかな、という感じですが、さすが、アングル。春先のラファエロの聖母とも違った、絶妙な魅力を放っています。
嬉しいことに ジェローム の作品が1点。『 カンダウレス王 』 1859-60頃。
古代リュディアというところの王交代劇の発端となった一場面ですが、ストーリーを抜きにしても、ジェロームならではの、不遜か否かギリギリのエロチックな作品。
今回の展覧会の看板になっている、ルノワール の 『 ジャンヌ・サマリーの肖像 』 1877。画風の変化が少ないルノワールにおいて、なにか特定の作品を「最高傑作」と称すのは難しいと思うのですが - そう云うなら、先日のクラーク美術館展の作品も「最高傑作だらけ」になるでしょう - これもピンクの色彩が美しい良い作品であることには間違いありません。旧モロゾフ・コレクション。
さて、センスが尖っているのは、やはり、シチューキン・コレクションの作品群。
ピカソ 『 扇子を持つ女 』 1909。『 女王イザボー 』の連作とも取れる緑色の、分析的キュビズム時代の作品。去年・今年と、ピカソ作品展示の美術展が少ない中、ピカソ・ファンには必見の作品でしょう。
セザンヌ 『 パイプをくわえた男 』 1893-96頃。胴が長くて腕も長い作品。謎かけの多いセザンヌ先生の作品ですが、人物画だけは、その意図が読みづらいのです。今回、この作品の前で 20分ほど粘りましたが解けず。。
ゴーギャン 『 エイアハ・オヒパ(働くなかれ)』 1896。『 浅瀬(逃走)』など、その後の毒気が増す前の、比較的、落ち着いた感のある作品。
マティス 『 カラー、アイリス、ミモザ 』 1913。ラフな描写ながらも、色彩のバランスが、なんとも心地よい作品。シチューキン・コレクションのマティス作品は、エルミタージュ美術館へ行ったものが多いのですが、これは良い作品。
ところで、今回の展示会に同期したイベントとして、池田理代子さんによる3本の書き下ろしコミック がWeb上で公開されています。それぞれ期間限定での公開なので、見逃せません。7~9月の期間に公開されているのは「モスクワの悲劇」。中を見てみると、これはシチューキン氏の伝記であり、家族の自殺や病死といった度重なる悲劇に見舞われたことが知れます。そういう中で、彼の鑑識眼は異様に研ぎ澄まされていったのかもしれません。
図録:¥2,000 2,000円というのはありがたいです。図録なるもの、2,500円前後だと、ちょっと躊躇するも、まぁ仕方ないかと。3,000円近くになると結構躊躇。どーしよーかなーと悩みます。3,000円を超えると、もう断念してしまうことが多いです。
さて、プーシキン美術館の所蔵品、これですべてかというと、いえいえ、まだまだ。
例えば、モネ の 『 草上の昼食 』 1866 が、まだ来ていないでしょう。これは、オルセーにある有名な同名作品とは、また違った完成度があるようです。次の機会に来てくれないかなと、今から期待 ^^;
プーシキン美術館展
横浜美術館 2013. 7. 6 – 9.16
神戸市立博物館 2013. 9.28 – 12. 8
→ プーシキン美術館のページ
→ 気になる美術展一覧
東京国立博物館の平成24年度新収蔵作品リストを見ていたら、久世民榮という方の寄贈による、池玉瀾や谷文晁、狩野探幽などの展示があると出ています。
これら、先日、江戸東京博物館で開催中のファインバーグ・コレクション展で気になった人たちではないですか。これは観ておかないと。。
池玉瀾 『 蘭図扇面 』
旦那の池大雅の作品が自由な南画調でありながらも、奥さんの池玉瀾の作品を観ると、大雅以上に、さらに自由な気分で筆が楽しげに踊っている感あります。こだわりの無い伸び伸びとした世界です。
狩野探幽 『 布袋図 』
縦に長~い軸の作品。
探幽の作風の幅の広さには、新たな作品に出逢うたびに、感動させられます。
新収品自体は、そう数は多くないので、続いて、1階へ降りて、近代絵画の 18室へ。
前田青邨の『 唐獅子 』が展示されていまして、個人蔵であり初めて見ました。六曲一双の金屏風で、これ自体完成作品のようですが、解説を読むと、その後、皇室へ献納された作品(また、静嘉堂文庫美術館にある作品)よりも先の制作とのこと。つまり、完成型に至る過程としての作品でしょう。
ところで、東京国立博物館のショップは以前は地下にありましたが、1Fに移動したのですね。入り口左手の広いフロアです。ショップを一周して、「あれ? 書籍が置いてない」と気づいて店員さんに尋ねるに、後ろを振り返って見上げた中二階が書籍フロアになっているのでした。長いスロープを上っていくのですが、そのスロープの脇も全部書棚になっていました。
それを見ていくと、全国のいろんな美術館の図録も置いてあります。中には行きたくて行けなかった過去展の書籍もあって、これは助かります。今後、利用させていただきます。
前回の「清方、美人画の巨匠へ」展に続き、木原文庫というところから出展されている初見の作品を期待に、先日、雨の中、訪問。
『 合歓 』 昭和10年代後半 120.0*27.5
『 合歓の花 』 1929 (S04) 144.0*51.0
『 夕潮 』 不明 115.0*36.0
『 初夏の雨 』 1935 (S10)頃 48.0*58.0
『 吉野山(『苦楽』表紙絵原画)』 1948 (S23) 27.9*26.6
『 戻橋の小百合(芝居十二ヶ月の内)』(『新演藝』口絵原画) 1917 (T06) 34.3*24.0
『 夏の朝(秋のおとづれ)』 1915 (T04) 34.0*17.7
『 明治風俗 すゞみ舟 』 1940 (S15)頃 40.0*50.5
『 夏の朝(秋のおとづれ)』 は薄いトーンの小さな軸装ですが、とても情緒のある作品。良い作品ですねー。
窓口で木原文庫のこと尋ねてみたのですが、「個人の方」とだけしか教えてもらえませんでした。検索してみても出てこないので、継続の宿題ですね。どなたかご存じの方おられたら教えてください。
なお、今回、サントリー美術館所蔵の 『 春雪 』 本画と共に、その下絵が並べて展示してありました。これも、めったにない機会でしょう。
パンフ画像は前回のブログに掲載 しております。
「初夏の風情 - 随筆 『 こしかたの記 』 とともに -」
5.25 – 6.30
→ 鏑木清方 作品一覧ページ
展示会場に入るや、大っきい! 会場も広い!
1つで縦横3メートルもあるタピスリーが 6枚も円形に並びます。
また、国立新美術館で、こんな広いスペースが取れるんだぁ、と思いました。
「触覚」「味覚」「嗅覚」「聴覚」「視覚」 と五感を表す作品。それぞれの内容は、貴婦人の動きを真似る「猿」の動作がヒントになっているとのこと。サイズの大きさと共に、2012年に修復されたそうですが、1500年頃という 500年以上も前に作成されたものであり、とても美しい作品です。
そして、6枚目のタピスリーが何か別の「感」を表したものとは限らず、タピスリー内に記載された(織り込まれた)「我が唯一の望み」というテキストが謎を呼んでいること、それが全体の魅力をさらに高めているでしょう。
それは、人それぞれ、いろんな解釈ができるのでしょうが、個人的には、実際に6枚を通して観た際に、これは「若さ」かと感じました。
「触覚」「味覚」では、貴婦人ははつらつとした姿。「嗅覚」「聴覚」では、多分に退屈やアンニュイな感じ。そして「視覚」では悲しみの表情に見えました。
どういう状況にあろうとも、一角獣と獅子が側にいて守ってくれるということでしょう。そして、最後に「いつまでも若く・夫婦仲良く」という風に感じた訳です。
さて、みなさんは、どのように感じられたでしょうか?
ところで、今、アメリカのニューヨークのメトロポリタン美術館でも、クロイスター分館に所蔵されている「一角獣タピスリー」の展覧会 が開催されています(5/15 – 8/18)。これも、この、フランス・クリュニー中世美術館から来ている作品と同じ作者(工房)によるもので、つまり、一連の作品と言えます。
「貴婦人と一角獣展」
国立新美術館
2013. 4.24 – 7.15
国立国際美術館
2013. 7.27 – 10.20
図録:2,000円
まず、前期・後期で展示入替えがあります。会場の最初に配布されている出展リストを見ると、のべ出展数 96点中、前期のみ出展が 31点、後期のみが 27点となっており、結構な入れ替えがあることが判ります。
江戸期の幅広い作品が出展されており、パンフレットの宣伝文句通り「オールスター百花繚乱」で、それぞれに楽しめます。いくつか挙げますと、、
一番最初は
俵屋宗達 『 虎図 』
ネコトラ。江戸期の作品にある、当時の日本人が見たことが無いことによる、猫のような虎です。
次のルームに進んでびっくり。次の12幅が、ずらりと並んでいるではありませんか!
酒井抱一 『 一二ヶ月花鳥図 』
抱一は何点か、この種の作品を描いており、宮内庁三の丸尚蔵館、出光美術館、畠山美術館、香雪美術館にもありますけれど、それらのどれにも引けをとらない秀作。
酒井家の菩提寺であった前橋市の海龍院に伝来したものだそうで、明治初期にアメリカに渡っていたのか、近年、日本の画商から取得されたのか知れませんが、よく入手されたなぁ、というのが正直な感想。
鈴木其一 『 群鶴図屏風 』
上記、図録の表紙になっている作品。光琳の群鶴ともまた違う、鶴。
神坂雪佳 『 三保松原図小襖 』(前期のみ)
床の間にあった小襖でしょう。こういう襖があったら楽しいな。
池大雅 『 孟嘉落帽・東坡載笠図屏風 』
大胆な人物画であり歴史画。こういう自由な文人画もあるのだな、と面白いです。
池玉瀾 『 風竹図扇面 』
池大雅の奥さん。団扇用の小さな作品ですが、装飾である風に吹かれる竹の葉と詩歌の文字とのバランスが最高です。
中村竹洞 『 四季花鳥図 』
落ち着いた色。鳥の顔の表情もやさしくて良いです。
谷文晁 『 秋夜名月図 』
赤いドでかい印章を押してある奇抜な作品。谷文晁おもしろいなぁ。7月にサントリー美術館で開催される「谷文晁 展」に、俄然、行きたくなりました。
円山応挙 『 鯉亀図風炉先屏風 』 (前期のみ?)
後ろから光を当てると、屏風の背面の絹本に描かれた水紋が表に浮き出る凝った作りになっているとのこと。会場でも背面から光を当ててあればよかったのですが。。
伊藤若冲 『 菊図 』
これは三幅対。内一幅は国内のプライベートコレクションなのですが、今回、特別に出展されていて、完成版として鑑賞できます。この機会は、もう無いでしょう。
伊藤若冲 『 松図 』
荒々しい松。とげが刺さりそうな感じ。一気に描かれたもので、若冲は当時 81歳。すごくエネルギッシュです。
曾我蕭白 『 宇治川合戦図屏風 』
平家物語の一シーン。蕭白にしては、かなり、カラフル。
磯田湖龍斎 『 松風村雨図 』
白黒のモノトーンで、部分的に少しだけ、うっすらと金泥や紅色が使われた浮世絵の立ち姿図。こういうのを「紅嫌いの手法」というそうです。しかも三幅対。珍しい表現で、新鮮でした。
最後に、葛飾北斎 『 源頼政の鵺退治図 』
これも平家物語の一シーン。幅全体が、「鵺」が現れて来そうな、そんな雰囲気の仕上がりです。
などなど、これは後期のみの 27点も、とても楽しみです。^^
ファインバーグ・コレクション展 江戸絵画の奇跡
江戸東京博物館
5/21 – 7/15
MIHO MUSEUM
7/20 – 8/18
鳥取県立博物館
10/5 – 11/10
図録: 2,500円
予告でお知らせした通り、ココの近代日本画の所蔵品は数年に一度しか展示されませんし、外の企画展に貸し出しされることも少ないので、所蔵品とはいえ、性質的には企画展に近い感じがします。そういう貴重な今回の機会、個人的には、昨年秋に改装されてから初の訪館です。
展示フロアが広がったのかな、と思っていたのですが、基本は従来通り「第一展示室」がメインで、広さも変わってないように感じました。
「第二展示室」が少し広くなって、展示ルームになったようです。その「第二展示室」では、今回、横山大観の山づくしで、『 霊峰四題の内 』の春・夏・秋・冬4作がすべて展示されていました。
イチ押しの、小茂田青樹の『 緑雨 』は、背景や雨粒までもが新緑に染まった梅雨の一シーン。青樹、トノサマガエルと「友情」状態にあるみたいです。^^
さて、期待しておりました、所蔵の多い金島桂華作品は、『 晨光 』の1点のみが出展。新たな図録は発行されていませんでしたが、研究が進んだ模様で、何点かは制作年が明確になっていました。
また、今回、上村松園の『 清少納言図 』を一番期待していたのですが、これは出ていませんでした。今後、近代日本画の展示機会が増えて、その際に会えますこと、楽しみにしてます。
五島美術館「近代の日本画展」
2013. 5.11 – 6.16
※ 五島美術館の日本画一覧ページ
今年1月に 期待の予告 を出しておりました「アントニオ・ロペス」展、開始から少し遅れましたが、鑑賞してきました。
リアリズム絵画というと、文字通り非常に細密に描かれた、光の反射の多い作品を思い浮かべがちですが、この方の作品は、むしろ細部は荒いタッチの積み重ねでありながら、全体としてはリアリティあることに驚かされます。
なので、風景画は燦々と陽の光が輝くスペインでは無く、どちらかというと曇天の感じの、どれもが乾いた静かなマドリードの広い風景です。
室内画も静謐な無音の世界であり、その点ではワイエスに近い感があるのですが、ワイエスのように濡れているのではなく、ここでも、やはり乾いている感じでした。
そういう独特の世界の絵画作品に感動しながら鑑賞していくと、最後のルームに人体ブロンズなどが展示されていました。その中に、茶色の赤ん坊の頭部の石膏像が。
生まれて数週間の、まだ目が開く前の、触るとふにゃっと柔らかそうな、今にも歯の無いちっちゃな口を開けてあくびでもしそうな、そんなリアリティ高い赤ん坊の頭部です。
大事に・大切にしなきゃ、といった、やさしい気持ちに包まれるでしょう。
現代スペイン・リアリズムの巨匠 アントニオ・ロペス 展
Bunkamura ザ・ミュージアム
2013. 4.27 – 6.16
図録: 2,500円
長崎県美術館
6.29 – 8.25
岩手県立美術館
9. 7 – 10.27
鎌倉の鏑木清方記念美術館で開催中の「清方、美人画の巨匠へ」展、パンフの裏面に掲載してあった4点の木原文庫所蔵作品が、展示してありました。オーソドックスな清方美人画の佳い作品です。
『 花いはら 』 大正末期 126.0*41.0
『 鏡獅子 』 1934 (S09) 127.5*41.0
『 道成寺 』 1938 (S13) 124.0*36.0
『 重陽佳節 』 不明 129.0*41.5
また、パンフの表面の作品は双幅でした。(読みは「あさすず」ではなくて「ちょうりょう」です)
『 朝涼 』 1918 (T07) 個人蔵 各145.5*50.5
先のブログで記載しましたように、木原文庫ってどこにあるんだろう? という疑問は解決していませんが、この4点だけが特別に出展されたのだと思ってました。
次回展覧会「初夏の風情 - 随筆 『 こしかたの記 』 とともに -」の予告をHPを見るに、これは、サントリー美術館所蔵の秀作が貸し出されて、清方記念美術館所蔵作品と共に構成されるのだろうと予測していたのです。
ところがパンフを手にすると、その裏面に、またまた8点もの木原文庫所蔵作品が出展されるとあります。
わー! 全部、初見。今から、わくわくします。^^
「清方、美人画の巨匠へ」
4.19 – 5.22
「初夏の風情 - 随筆 『 こしかたの記 』 とともに -」
5.25 – 6.30
→ 鏑木清方 作品一覧ページ
大倉集古館の江戸期絵画は、数年の期間を空けてで無いと展示されませんので、年間のスケジュールはよくチェックする必要があります。
今回の展示会の後期で、酒井抱一の 『 五節句図 』 が出るとあり、前々から観たい観たいと思ってましたので、やっとのこと会えました。
五節句: 小朝拝(1月1日)・曲水宴(3月3日)・菖蒲臺(5月5日)・乞巧奠(7月7日)・重陽宴(9月9日)それぞれを1幅ずつ描いた5幅からなる連作。
小朝拝を真ん中に、次に、その右に曲水宴、左に菖蒲臺、一番右に乞巧奠、一番左に重陽宴という順で並びます。ですので、上の画像では、左から次の順になっています。
重陽宴 - 菖蒲臺 - 小朝拝 - 曲水宴 - 乞巧奠
少し色落ちの感はあるものの、抱一らしい落ち着いたトーンの、鮮やかな作品で、抱一、晩年の作です。
また、宗達派の『 扇面流図 』も出ていました。こちらもお勧め ^^
at 大倉集古館 定休: 月 ¥ 800
前期: 4/6- 5/6 | 後期: 5/8- 5/26
→ 酒井抱一 作品一覧ページ