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旧約聖書:アブラハムの話

リエフェリンクス 『 アブラハムと3人の天使 』(部分)1495-1500頃 デンバー美術館
Josse Lieferinxe " Abraham and the Three Angels "
旧約聖書 創世記[Genesis] 11~25章で数多く登場する アブラハム(アブラム)に関する話です。紀元前 19世紀頃の人。
( ロトとイサクの話は概要のみで、別で扱う予定 )

ノア
(Noah) の子孫である
テラ
(Terah) の子たちは次の通り。
 
アブラム
(Abram) 、
ナホル
(Nahor) 、
ハラン
(Haran) 、
サライ
(Sarai)
  (
ハラン
は、父の
テラ
に先立ち、カルデヤのウルの地で死去 )

 
ハラン
の子は
  
ロト
(Lot) 、
ミルカ
(Milkah) 、
イスカ
(Iskah)
 
アブラム
の妻は
サライ
(異母兄弟)
ナホル
の妻は
ミルカ
である。
テラ
は、子の
アブラム
と、 孫の
ロト
、そして
アブラム
の 妻の
サライ
とを連れて、 カルデヤ
[Chaldeans]
の ウル
[Ur]
を立って、一緒に カナン
[Canaan]
の地へと向った。しかし、 ハラン
[Harran]
に着くと、そこに住んだ。
テラ
は 205歳まで生きて、ハランの地で没した。
[創世記 11章]
時に、主が
アブラム
に言われた。
そなたの国を出で、親族と別れ 父の家を離れて、我が示さん その地に至れ
我、そなたを大いなる国民と成し、そなたを祝福し そなたの名を大ならしめん
そなたは祝福の基となるべし
我、そなたを祝する者を祝し、そなたを詛う者を詛はん
天下の諸々の宗族、そなたによりて祝福を獲る
アブラム
は、主に言われた通りに進み、
ロト
も彼と共に行った。
アブラム
がハランを出た時は 75歳だった。 彼は妻の
サライ
と、甥っ子である
ロト
に、ハランで蓄積していた すべての財産と人々を連れてカナンの地へと向い、そこに到着した。
アブラム
は その地を通過して シケム
[Shechem]
の モレ
[Moreh]
の大木の元までやって来た。その頃、そこには カナン人
/Canaanites/
が住んでいた。
ここに、主が現れられて
アブラム
に言われた。
そなたの子孫に この地に与へん
と。なので、彼は、ここに祭壇を築いた。
彼は、さらに、 ベテル
[Bethel]
の東の丘に移動して、そこにテントを張った。西は ベテル、東は アイ
[Ai]
である。そこに、彼は主のために祭壇を築き、主の名を呼んだ。
それから、
アブラム
は進んで、 ネゲブ
[Negev]
まで移動した。

さて、その地に飢饉が発生した。
アブラム
は エジプト
[Egypt]
に降りて行って、そこでしばらく生き延びることにした。飢饉が激しかったのである。
エジプトに まさに入ろうとした時、彼は妻の
サライ
に言った。
「 おまえは美しいから、エジプトの人たちがおまえを見たら『あの男の妻だ』と言って、俺を殺して、おまえを生かすだろう。だから、妹ということにしておこう。そうすれば、俺は安泰だし、命は助かる 」と。
アブラム
がエジプトに入ると、エジプト人は
サライ
を見て、すごい美人だと思った。エジプト王の官吏たちも彼女を見て王に上げたので、王宮に召し入れられた。
ティソ『 王宮に召し入れられるサライ 』1896-1902頃
James Tissot " Sarai Is Taken to Pharaoh's Palace "
彼女のおかげで、王は
アブラム
に良くしてくれたので、彼は羊・牛・雌雄のロバ・男女の奴隷、および、ラクダを得た。
しかし、主は
アブラム
の妻
サライ
のゆえに、ひどい疫病をエジプト王とその家にもたらされた。エジプト王は
アブラム
を呼んで言った。
「 おぬしは、なんて事をしてくれたんだ! どうして彼女が妻であると言わなかったのか? 何故に『自分の妹です』と言ったんか? 予は彼女を妻にしようとしていたんだぞ。さぁ、おぬしの妻はここだ。連れて、とっとと出て行ってくれ 」と。
エジプト王は部下に命じて、彼とその妻、および、全ての持ち物を送り去らせた。
[創世記 12章]
なので
アブラム
は妻とすべての持ち物を携えて、エジプトを出て ネゲブ に上った。ロトも彼と共に行った。
アブラム
は家畜と金銀をたくさん所有していた。彼はネゲブを立ってから、あちこちに寄ってベテルに向い、ベテルとアイの間の、先にテントを張った場所に来た。そして、最初に祭壇を築いた場所にて
アブラム
は主の名を呼んだ。
また、
アブラム
と共に移動した
ロト
も、羊・牛・テントを有しており、彼らの財産は多すぎて、その地に一緒に住み着くことが出来なかった。 そうして、
アブラム
ロト
それぞれの牧者間で言い争いが生じてしまう。
その頃、その土地には、カナン人と ペリジ人
/Perizzites/
が住んでいた。
アブラム
ロト
に言った。
「 君と俺とは身内同士なんだから、互いに争ったり、双方の牧者たちが争わないようにしようや。土地は目の前にたくさんあるじゃないか。二手に別れよう。君が左に行くなら、俺は右へ行く。君が右に行くなら、俺は左へ行くよ 」と。
ロト
が ヨルダン
[Jordan]
の平野を ゾアル
[Zoar]
まで見渡すと、そこは、主の園のように、エジプトの土地のように、よく潤っていた(これは、 ソドム
[Sodom]
と ゴモラ
[Gomorrah]
が殲滅される前である)。なので、
ロト
はヨルダンの平野を選び、東に向って移っていった。こうして彼らは二手に別れた。
アブラム
は カナンの地に住み、一方、
ロト
は平野の町々の間に住み、ソドムの近くにテントを張った。
その頃、ソドムの人々は素行が悪く、主に対して はなはだしく罪深かった。

※「 聖書地図 」より。関連する場所に赤丸を付けた。
アブラム
ロト
と別れた後、主は
アブラム
に言われた。
そなたの目を上げて そなたの居る処より東西南北を望め
およそ、そなたが見る処の地は、我 これを永く そなたとそなたの子孫に与うべし
我、そなたの後裔を地の塵沙の如くなさん
もし、人、地の塵沙を数ふることを得ば、そなたの後裔も数へらるべし
そなた起きて 縦横に その地を行き巡るべし
我、これを そなたに与へん
アブラム
は移動して、 ヘブロン
[Hebron]
のマムレ
[Mamre]
の大木の近くに住み、ここにテントを張った。そして、ここに主の祭壇を築いた。
[創世記 13章]
当時、
 シナル
[Shinar]
の王は
アムラペル
(Amraphel) 、
 エラサル
[Ellasar]
の王は
アリオク
(Arioch) 、
 エラム
[Elam]
の王は
ケダラオメル
(Kedorlaomer) 、
 ゴイム
[Goyim]
の王は
テダル
(Tidal) であった。
これらの王たちは
 ソドムの王
ベラ
(Bera) 、
 ゴモラ の王
ビルシャ
(Birsha) 、
 アデマ
[Admah]
の王
シナブ
(Shinab) 、
 ゼボイム
[Zeboyim]
の王
セメベル
(Shemeber) 、
 そして ベラ
[Bela]
(= ゾアル ) の王と戦った。
後者の 5王は同盟して シデム
[Siddim]
の谷、すなわち死海に向った。というのは、彼らは 12年間
ケダラオメル
王に仕えていたのだが、13年目に背いたのである。
14年目に
ケダラオメル
は彼に連合する王たちと共に出陣し、
アシタロテ・カルナイム
[Ashteroth Karnaim]
の レパイム人
/Rephaites/
を、
ハム
[Ham]
の ズジ人
/Zuzites/
を、
シャベ・キリアタイム
[Shaveh Kiriathaim]
の エミ人
/Emites/
を、
そして、 セイル
[Seir]
の山地で ホリ人
/Horites/
を撃って、
荒野のそばの エル・パラン
[El Paran]
までに及んだ。
それから、彼らは引き返して エン・ミシパテ
[En Mishpat]
( = カデシ
[Kadesh]
) へ遠征して、 アマレク人
/Amalekites/
の全領域を征服し、
また、 ハザゾン・タマル
[Hazezon Tamar]
に住む アモリ人
/Amorites/
をも撃った。
そこで、ソドム王・ゴモラ王・アデマ王・ゼボイム王、および、ベラ(= ゾアル)王は、出陣してシデムの谷で エラムのケダラオメル王・ゴイムのテダル王・シナルのアムラペル王・エラサルのアリオク王に向って陣を敷いた。4対 5である。
シデムの谷にはアスファルトの穴がたくさんあったので、ソドム王とゴモラ王が逃げると、ある者たちは、そこに隠れたが、残りの者たちは山に逃れた。なので、敵の 4王はソドムとゴモラの財産と食料と全て奪い去った。また、彼らは、
アブラム
の甥の
ロト
がソドムに住んでいたので、彼と彼の財産とを奪い去ってしまったのである。
ある男が逃れ来て、この事を ヘブル人
/Hebrew/
である
アブラム
に伝えた。この時、
アブラム
は、彼と同盟を結んでいる
エシコル
(Eshkol) 、および、
アネル
(Aner) の兄弟である アモリ人の
マムレ
(Mamre) の大きな木の側に住んでいた。
アブラム
は自分の身内が捕まえられたことを聞くと、訓練された家の子 318人を引き連れて ダン
[Dan]
まで追って行った。夜に入って、
アブラム
は家の子を分けて敵を討ち、 ダマスコ
[Damascus]
の北の ホバ
[Hobah]
まで追撃した。こうして、彼は、すべての財産を取り戻し、
ロト
と、その財産および女たちと民とを取り返した。
アブラム
ケダラオメル
王とその連合軍を撃ち破って帰還した時、ソドムの王は シャベ
[Shaveh]
の谷(= 王の谷)にて彼を出迎えた。
そして、 サレム
[Salem]
の王
メルキゼデク
(Melchizedek) がパンとワインとを持参してやって来た。彼はいと高き神の祭司である。
ルーベンス 『 アブラムとメルキゼデクとの対面 』 1626頃
ワシントン・ナショナル・ギャラリー
Peter Paul Rubens " The Meeting of Abraham and Melchizedek "
彼は
アブラム
を祝福して言った。
願わくは 天地の創造主なる いと高き神よ
アブラムを祝福し給へ
願わくは あなたの敵をあなたの手に渡された
いと高き神があがめられますように
そうして
アブラム
は持ち物の 1/10を彼に贈った。
ソドムの王は
アブラム

「 その人々は予に渡されたし。そなたは物品を受け取るがよい 」と言う。
しかし、
アブラム

「 天地の創造主なるいと高き神、主に手を上げて私は誓います。
 私は あなたの物を何も受け取りません。糸 1本、サンダルの紐 1本でさえもです。『アブラムを富ませたのは自分だ』と言われては困りますので。
ただし、家の子たちが食べたもの、および、私と共に出かけた
アネル
エシコル
マムレ
の取り分は別です。彼らには、彼らの分をシェアさせてください 」と答えた。
[創世記 14章]
こういうことがあった後、主の言葉が幻のうちに
アブラム
に臨んだ。
アブラムよ、懼るるなかれ
我はそなたのシールドである
そなたが受ける報いは甚大である
しかし
アブラム
は答えた。
主なる神よ、私にはずっと子が無く、私の家を継ぐ者はダマスコの
エリエゼル
(Eliezer) であるというのに、あなたは私に何をくださろうというのですか? 私に子を授けられないので、家のしもべが跡継ぎとなるのです。
主の言葉が彼に臨んだ。
その者は そなたの跡継ぎになるべからず
そなた自身の息子が嗣子となるべし
そして、主は彼を外に連れ出して言われた。
天を仰ぎ見て 本当に星を数へ得るかを見よ
また、言われた。
汝の子孫は、この如くなるべし
アブラム
は 主を信じた。そして、主はこれを彼の実直さと お認めになられた。
また、主は彼に言われた。
我は この地をそなたに与へて、これを所有せしめんとて
そなたをカルデアのウルより導き出せる主なり
しかし、
アブラム
は聞いた。
主なる神よ、私がこれを所有するのを、どうやって知ることができるのでしょうか?
主が彼に言われるには、
3歳の雌牛と雌ヤギと雄羊をそれぞれ1頭ずつ
山鳩、および、家鳩のひなと共に
我のために取れ
と。なので、
アブラム
は、それらをすべて持ってくるや、2つに切り裂いた上で、裂いたものを互に向い合わせて置いた。ただし、鳥は半分に裂かなかった。猛禽が死体に降りて来ると、彼は それらを追い払った。
ティソ『 生贄を集めるアブラム 』 1896-1902頃
James Tissot " Abraham Guarding His Sacrifice "
日が落ち、彼が深い眠りに襲われた時、濃くて恐ろしい闇が彼の上にやって来た。
主が彼に言われた。
そなた、確かに知るべし
そなたの子孫、400年の間、自国ではなく他人の国に異郷人となりて
そこで 奴隷となり、虐待されん
また、彼らが奴隷となる国、我 これをたださん
その後、彼らは大いなる財貨を携へて出でん
されど、そなたは安らかに先祖のもとに行かん
そなたは高齢に到りて葬られるべし
4代に及びて、彼ら、ここに返り来たらん
そは、アモリ人の悪、いまだ満ちざればなり
完全に陽が暮れ暗闇が立ち込めた時、燃える松明と 煙を吐く火鉢が近づいて来るや、その 2つに裂き分けた死体の中を通り抜けた。
その日、主は
アブラム
と契約を結んで言われた。
我、この地をエジプトの河より かの大河 すなはちユフラテ河まで
そなたの子孫に与ふ
すなわち、
 ケニ人
/Kenites/
 ケニジ人
/Kenizzites/
 カドモニ人
/Kadmonites/

 ヘテ人
/Hittites/
 ペリジ人
/Perizzites/
 レパイム人
/Rephaites/

 アモリ人
/Amorites/
 カナン人
/Canaanites/
 ギルガシ人
/Girgashites/

 エブス人
/Jebusites/

の地、これなり
[創世記 15章]
さて、
アブラム
の妻
サライ
には子が出来なかった。しかし、彼女にはエジプトの仕え女が居て、名前を
ハガル
(Hagar) といった。
サライ
アブラム

「 主は私に子をお授けになりません。仕え女を床に入れてやってくださいな。そうすれば、彼女を通して私にも家族が持てるでしょう 」と言うと、
アブラム
は、それに合意した。
アブラム
がカナンの地に移住して 10年、彼の妻
サライ
は、エジプト人の仕え女である
ハガル
を自分の夫の妻として与えたのである。
彼は
ハガル
と寝た。そして、彼女は子を宿す。彼女は自分が妊娠したことを知るや、自分の女主人を見下すようになった。
サライ
アブラム

「 私がこんなひどい目に遭うのは、あなたの責任でしょ! この私が自分の仕え女をあなたの腕に与えてあげたというのに、あの女、自分が妊娠したと知ったとたん、まぁ、いけしゃあしゃあと、私を見下すのよ。むかつくー。あなたと私との間、主に裁いてもらってください 」と文句を言った。
アブラム
サライ
に、
「 まぁまぁ、彼女は、おまえの手の内にあるじゃないか。自分が一番良いと思うようにしなさいな 」と言うので、
サライ
は彼女につらく当たるようになった。なので、
ハガル
は逃げ出してしまった。
主の御使いが、荒野にある泉:すなわち シュル
[Shur]
の道の側にある泉で、彼女を見付けられて、言われた。
サライの仕え女 ハガルよ
そなた、いずこより来れるや
また、いずこに行くや
彼女は答えた。
私は主人の サライさまから逃げているのです(シクシク)
主の御使いは言われる。
そなたの女主人の許に返り
身を その手に任すべし
主の御使いは加えて言われた。
我、大いに そなたの子孫を増し
その数を衆多して、数ふること能はざらしめん
また、
そなた 孕めり。男子を生まん
その名を イシマエル と名付くべし
主、そなたの艱難を聴知し給へばなり
彼は野生のロバの如き人とならん
その手は諸々の人々に敵し
諸々の人々の手は これに敵すべし
彼は、その諸々の兄弟の東に住まん
と言われた。
彼女は、ふと「 私、私のことを観ていただける お方とお会いしたのだわ 」と言った。なので、彼女は話しかけられた主を『エル・ロイ』(吾を顧み給ふ神なり)という名で呼んだ。それで、その井戸は 「ベエル・ラハイ・ロイ
[Beer Lahai Roi]
」(吾を観る者の井)と呼ばれる。これは、今も カデシ
[Kadesh]
と ベレデ
[Bered]
の間にある。
そうして
ハガル
アブラム
に男の子を産んだ。彼はその子に
イシマエル
(Ishmael) という名を付けた。時に
アブラム
は 86歳であった。
[創世記 16章]
アブラム
が 99歳の時、主が彼の前に現れて言われた。
我は全能の神なり
そなた、我の前に歩みて全き者であれ
我、わが契約を、我とそなたとの間に立て
大いに そなたの子孫を増さん
アブラム
は ひれ伏した。
神はまた彼に言われた。
我、そなたと 我が契約を立つ
そなたは衆多の国民の父となるべし
そなたの名を、以後、アブラムと呼ぶべからず
そなたの名を「アブラハム」(衆多の人の父)と呼ぶべし
そは、我、そなたを衆多の国民の父と為せばなり
我、そなたをして 衆多の子孫を得せしめ
国々の民を そなたより起こさん
王等、そなたより出ずべし
我、わが契約を、我と そなた
および、そなたの後の世々の子孫との間に立て
永久の契約となし
そなた、および、そなたの後の子孫の神となるべし
カナンの全土、すなはち、今、そなたが異国人として寄寓する地を
我、そなたと そなたの後の子孫にを与へ、永久の所有となさん
而して、我、彼らの神となるべし
神は
アブラハム
(Abraham) に言われた。
そなた、我が契約を守るべし
そなたと、そなたの後の世々の子孫も
我が契約を守るべし
これは我とそなたら、および、そなたの後の子孫の間の
我が契約にして、そなたらの守るべきことなり
そは、そなたらの中の男子は、みな割礼を受くべし
そなたら、その陽皮を割くべし
これ、我とそなたらの間の契約の徴なり
そなたらの代々の男子は
みな生れて 8日に至らば割礼を受くべし
家に生れたる者も、異邦人より金にて買いたる
そなたの子孫ならざる者も
そなたの家に生れたる者も、汝の金にて買たる者も
割礼を受けざるべからず
かく我が契約、そなたらの身にありて
永久の契約となるべし
割礼を受けざる男児、すなはち、その陽皮を割かざる者
その民の中より絶たるべし
その者、我が契約を破るによる
ティソ『 神と再契約するアブラハム 』 1896-1902頃
James Tissot " God Renews His Promises to Abraham "
神はまた
アブラハム
に言われた。
そなた妻 サライは、もはや サライ と呼ぶべからず
その名を サラ となすべし
我、彼女を祝福し、彼女よりして
また、そなたに 1人の男子を授けん
我、彼女を祝福して 諸邦の民の母とならしむべし
諸々の民の王ら、彼女より出ずべし
アブラハム
はひれ伏して、笑い、心の中で思った。『齢 100歳の男に子供が? 90歳の サラが子供を産めますると?』
そして、彼は神に言った。
イシマエル こそが、あなた様の意に叶いますように
神は言われた。
いや、そなたの妻 サラ、必ず子を生まん
そなた、その名を イサク と呼ぶべし
我、彼 および その後の子孫と契約を立て、永久の契約となさん
また、イシマエル に関しては、我、そなたの願を聴きたり
見よ、我、彼を祝福して多衆の子孫を得さしめ
大いに彼の子孫を増すべし
彼、12の君王を生まん
我、彼を大いなる国民となすべし
しかれど 我が契約は、我、翌年の今頃
サラ が そなたに生まん所の イサク と、これを立つべし
神は
アブラハム
に語り終えられると、昇っていかれた。
その日、
アブラハム
は、神に言われた通りに、息子の
イシマエル
と、家に生れたすべての者、および、買い取ったすべて者、彼の家のあらゆる男子に割礼を施した。
アブラハム
が割礼を受けた時は 99歳、息子の
イシマエル
は 13歳であった。
アブラハム
と 息子の
イシマエル
は共に、まさに その日に割礼を受けた。
アブラハム
の家の男全員、家に生れた者も、異邦人から買い取られた者を含めて、彼と共に割礼を受けたのである。
[創世記 17章]
昼の暑い頃、
アブラハム
がテントの前に座っていると、主が マムレの大木の近くに現れられた。目を上げて見ると、3人の方が近くに立っておられる。彼はテントの入り口から走り出して彼らを迎え、地に伏した。
ムリーリョ 『 アブラハムと3人の天使 』 1667 カナダ国立美術館
Bartolomé Esteban Perez Murillo " Abraham and the Three Angels "

アントネロ・ダ・メッシーナ『 3天使に遇されるアブラハム 』1455頃
マーニャ・グレーチャ国立博物館
Antonello da Messina " Abraham Served by Three Angels "

彼は言った。
神さま、もし、私が、あなた様のお恵みを得ているのでありましたら、どうか、この しもべの前をお通り過ごしにならないでください。水を少し取ってこさせますから、足をお洗いになり、この木の下でお休みください。 何か食べるものを持って参りますので、リフレッシュされてからお出かけください。折角、この しもべの所にお越しになられたのですから。
彼らは答えた。
よろしい。そなたが語るごとく、なせ
アブラハム
は急いでテントに戻り、
サラ
(Sarah) に
「 おい、急いで、最上級の小麦粉 3セヤ(≒ 23リットル) を捏ねてパンを焼いてくれ!」と言い、それから彼は牛の群れに走って行って柔らかな良い子牛を選んで、それを料理人に渡し、急いで調理させた。
そうして、彼は凝乳と牛乳および子牛の調理したものを持って彼らの前に供えた。彼らが食事される間、
アブラハム
木の下に立って給仕した。
彼らが言われた。
そなたの妻 サラは何処にあるや?
アブラハム
テントの中に居りまする
と答えた。
彼らの中の 1人が言われるには、
明年の今頃、我、必ず そなたに返るべし
そなたの妻 サラに男子あらん
というのである。
その時、
サラ
は、彼らの後ろのテントの入口に居て、それを聞いた。
アブラハム
サラ
は、年寄りであり、彼女は子供を産める歳では無かった。なので、彼女は笑って心の中で思った。『私ゃぁ、もう、くたびれており、あん人も、もう爺さんだわい。いーま から私にそんな喜びが得られるなんぞ、無理やわいな』
主は
アブラハム
に聞かれた。
何故に サラ は笑ひて
我 老いたれば、果して子を生むことあらん、と言ふや?
主に、あに為し難き事あらんや
明年、我 定めたる期に、そなたに帰るべし
サラ に男子あらん
サラ
は怖くなって、偽って言った。
私は笑っておりません
しかし、その方は言われた。
否、そなた、笑へるなり
その方々は立ち上がり、ソドムの方向に向われたので、
アブラハム
は一緒に行って見送った。
その時、主が言われた。
我 なさんとする事を、アブラハムに隠すべけんや
アブラハムは必ず大なる強き国民となりて
天下の民、皆、彼に由りて福を獲るに至るべきにあらずや
そは、我、彼をして、その後の子孫と家族とに命じ
主の道を守りて 公儀と公道を行しめんために、彼を知れり
これ、主、アブラハムに、それ
かつて彼について言し事を行はんためなり
また、主は言われた。
ソドムとゴモラを非難する声 大なるにより
また、その罪、はなはだ重によりて
我、今、下りて、その我に達せる大クレームの如くに
彼ら 全く行いたりしや を見んとす
若しからずば、我、知るに至らん
ティエポロ 『 アブラハムと3人の天使 』 1770頃 プラド美術館
Giovanni Battista Tiepolo " Abraham and the Three Angels "
その方々は そこから身を巡らしてソドムの方に向ったが、
アブラハム
は、なお、主の前に立っていた。彼は近寄って訊ねた。
あなた様は、悪しき者と一緒に、正しき者も滅ぼされるのですか? たとえ、あの町の中に 50の正しき者があってもでしょうか。ほんとうに一掃されるのでありますか? あの中の 50の正しき者のために、あの地を お許しにならないのでしょうか?
そったな事はなさりますまいな。正しき者を 悪しき者と一緒くたにして殺すなど。 全土の士師たるお方が正しき事を行われないなど、そぎゃんこつは。
主は言われた。
我、もし、ソドムにおいて、町の中に 50の義者を見ば
その人々のために、その処を尽く許さん
アブラハム
は、また言った。
私めは塵・灰に過ぎぬのでありますが、僭越ながら、今、あえて、主に申しあげております。あのぉ、もし、正しき者が 50のうち 5人欠けておりましたら、その 5人が故に、町全体を滅ぼされるのでありましょうか。。。
主は
我、もし、かの処に 45人を見ば、滅さざるべし
と答えられた。
再度、彼は訊ね続けた。
もし、そこに 40人だけでしたら、どうなりますでしょうか?
 我、40人のために、これをなさじ
どーか、お怒りにならぬよう、どーか、お聞きください。30人でしたら、どうなりますでしょう?
 我、30人を かの処に見ば、これをなさじ
ほんま、僭越ながら、申し訳ございません。20人でしたら、どないでしょう?
 我、20人のために滅ぼさじ
どうか、お怒りになられませんよう、平にご容赦。もう 1回だけ、もう 1回だけ、お聞かせください。10、、10人だけでしたら、、どうされますでしょう?
 我、10人のために滅ぼさじ
こうして、主は
アブラハム
と語り終えるや、去って行かれた。
アブラハム
は自分の家に帰った。
[創世記 18章]
2人の御使いはソドムに着き、
ロト
が彼らを迎え、家に泊めた。すると、ソドムの町の者どもがやって来て、旅人を差し出すよう要求した。2人の御使いが目くらましを食らわして彼らを退散させると、
ロト
に身内を連れて町を出るよう指示する。なぜならば、この町は殲滅されるからであるという。
翌朝早く、
ロト
は妻と 2人の娘を連れて町を出た。その際に、2人の御使いから「逃げる際に後ろを振り返ってはならない」と忠告された。
彼らが隣の小さな町:ゾアルに着いた時、主は、天から硫黄と火をソドムとゴモラに降らせて、これらの町を殲滅されてしまった。
この時、
ロト
の妻は後ろを見てしまったので、塩の柱となった。
その日朝早く
アブラハム
が 先に主の前に立った場所に行き、ソドムとゴモラの方角、および 平野の地を眺めると、その地から、かまどの煙のように煙が立ち上っていた。
ロト
はゾアルを出て 2人の娘と山中に移り、洞穴の中に住んだ。2人は、もう、世の男性とは会えないと断念し、父親から子種をもらって子孫を残すと決意する。そうして、姉が産んだ子が
モアブ
(Moab) であり、その後の モアブ人
/Moabites/
の祖、 妹が産んだ子が
ベニアンミ
(Ben-Ammi) であり、その後の世の アンモン人
/Ammonites/
の祖である。
[創世記 19章]
アブラハム
はそこからネゲブの地に移り、カデシとシュルの間に住んだ。彼が ゲラル
[Gerar]
に居た時、
アブラハム
は妻の
サラ
のことを「彼女は妹です」と言ったので、ゲラルの王
アビメレク
(Abimelek) は、人を遣わして
サラ
を召し入れた。
ところが、ある夜、神が
アビメレク
の夢に現れられ、言われた。
そなたは、その召し入れたる婦人のために死ぬるべし
彼女は 夫ある者なればなり
アビメレク
は、まだ彼女に近づいていなかったので
主よ、あなたは無実の民でも破滅されるのですか? 彼は私に「妹です」と言い、彼女も自分で「彼は兄です」と言ったではないですか。私は清き心とクリーンな手で、このことをしたのです。
と言った。
神は、また、夢の中で言われた。
然り。我、そなたが清き心をもて、これをなせるを知りたれば
我も、そなたをはばめて 罪を我に犯さしめざりき
彼女に触るを容れざりしは、これがためなり
しからば、彼の妻を帰せ
彼は預言者なれば、そなたのために祈り、そなたをして生命を保しめん
そなた、もし帰さずば、そなたとそなたに属する者
皆、必ず死ぬるべきを知るべし
翌朝早く
アビメレク
は役人全員を召集し、この事を語り聞かせると、彼らは非常に恐れた。
アビメレク
アブラハム
を呼んで聞いた。
「 おぬし、なんて事をしてくれたのだ! おぬしが予と予の王国にそんな大きな罪を負わせるとは、予がどんな悪を冒したというのか? おぬしは予にやってはならぬことをやったのだ 」 彼は、また
アブラハム
に聞いた。
「 どういう料簡で、こんな事をしたのか?」
アブラハム
は答えた。
「 私は『この地には神を恐れるということが間違いなく無いから、妻のゆえに自分は殺される』と思ったのです。また、彼女は、本当に私の妹なのです。異母兄弟でして、妻になったのです。神が、私を父の家から離れさせられた時、私は彼女に『どこへ行こうと「彼は兄である」と言うように。それが私に対する愛であるから』と言ったのです 」
そこで
アビメレク
は、羊・牛・男女の奴隷を取って
アブラハム
に与え、妻の
サラ
を彼に返した。そして、
「 予の土地は、おぬしの前にある。好きな所に住むがよい 」と告げた。
また、
サラ
に言った。
「 予は、おぬしの兄に銀 1,000シケルを与えた。これは、そなたの身の周りで起ったすべての事に対して償いをするものである。これにより、そなたは完全に正しいと認められよう 」
ここで、
アブラハム
は神に祈った。神は
アビメレク
とその妻、および、仕え女たちをヒーリングされたので、彼らは再び子を産むようになった。というのは、
アブラハム
の妻である
サラ
が故に、主が
アビメレク
の家の全ての女たちに子供が出来ぬようにされていたのである。
[創世記 20章]
さて、主は先に言われたように
サラ
を顧み、彼女に約束通りの事を行われた。
サラ
はみごもり、神が
アブラハム
に約束された、まさにその時に、年老いた
アブラハム
に男の子を産んだ。
アブラハム
サラ
が産んだ男の子に
イサク
(Isaac) という名前を付けた。 また、息子の
イサク
が生まれて 8日目に、神に命じられた通り、
アブラハム
イサク
に割礼を施した。
イサク
が生まれた時、
アブラハム
は 100歳であった。
サラ
は言った。
「 神さまは私を笑わせてくださいました。この事を聞く人は皆、私のことを笑うでしょうね。サラが幼児をあやすなんて、誰がアブラハムに言ったでしょう? ましてや、この歳で息子を産むなんて 」
幼児は育って乳離れした。そして、
イサク
の乳離れの日、
アブラハム
は、お食い初めの盛大な宴会を開いた。
しかし、
サラ
は、エジプト女の
ハガル
の息子が
イサク
をじゃけんに扱っているのを見るや、
アブラハム
に注文する。
「 あの仕え女と息子を追い出してください。あの女の息子に、イサク と財産をシェアさせますかいな 」
これには
アブラハム
は非常に苦悩した。それは自分の息子のことであったからである。
神は彼に言われた。
男児のため、また、そなたの婢のために、これを憂えるなかれ
サラが そなたに言ところの言は、ことごとく これを聴け
そは イサク より出ずる者、そなたの子孫と称せらるべければなり
また、婢の子も そなたの血筋なれば、我、これを一の国となさん
翌朝早く、
アブラハム
はパンと水の皮袋とを取って
ハガル
に与え、肩に負わせて、その息子と共に去らせたのであった。
ハガル
は家を追い出されると、 ベエルシバ
[Beersheba]
の砂漠を彷徨った。 やがて皮袋の水が尽きると、『この子が死ぬのを見るのは忍びない』と思うや、息子を一つの木の下に置き、自分は、そこから矢が届くくらいの距離の場所に離れて、そこに座った。そして、彼女は泣きだした。
コロー『 荒野のハガル 』 1835
メトロポリタン美術館
Camille Corot
" Hagar in the Wilderness "
神は男の子が泣いているのを聞かれ、神の御使いが天から
ハガル
を呼んで言われた。
ハガルよ、何事ぞや? 懼るるなかれ
神、あそこに居る男児の泣き声を聞き給へり
起ちて男児を起こし、これを そなたの手に抱くべし
我、これを大いなる国となさん
神が
ハガル
の目を開かれたので、彼女は井戸があるのを見つけた。彼女は行って皮袋に水を満たし、息子に水を飲ませたのであった。
神は この子と共に居られ、彼は成長した。そして、荒野に住み、弓を射る者となった。彼が パラン
[Paran]
の荒野に住んでいた時、母は彼のためにエジプトから妻を迎えた。
その頃、
アビメレク
とその軍の司令官:
ピコル
(Phicol) が
アブラハム
に言った。
「 そなたは何をなさっても、神がそなたと共におられる。それゆえ、今、予・予の子・予の孫を欺かないと、神の前で誓ってもらえぬか? 予がそなたに示した親切と同様のものを、予、そして、今 そなたが、異国人として寄留するこの国に示しておくれ 」と。
「 誓います 」と
アブラハム
は答えた。
それから、
アブラハム
アビメレク
の家来たちが、井戸を奪い取ったことについて
アビメレク
を責めた。しかし、
アビメレク

「 誰が、そんな事をしたのか知らぬ。そなたから言われたことも、今日まで、誰かに告げられたことも無いのだ 」と答えた。
そこで、
アブラハム
は羊と牛とを取って
アビメレク
進呈し、2人は契約を結んだ。
アブラハム
雌の小羊 7頭を分けて置いたところ、
アビメレク
が聞いた。
「 雌の小羊 7頭を分けて置いたのは、どういう意味かね?」
アブラハム

「 この雌の小羊 7頭を受け取って、私がこの井戸を掘ったことの証拠としてください 」と答えたのであった。
これによって、その場所はベエルシバと呼ばれた。彼らが 2人で誓いを立てたからである。こうして、ベエルシバにおける契約の後、
アビメレク
と司令官の
ピコル
は ペリシテ人
/Philistines/
の土地に帰っていった。
アブラハム
はベエルシバに一本のタマリスク(ギョウリュウ)の木を植え、その場所で永遠の神:主の名を呼んだ。 そして、ペリシテ人の地に長く留まった。
[創世記 21章]
これらがあった後、神は
アブラハム
を試みられた。
アブラハムよ
と呼ばれると、
はい、ここにおります!
と彼は答えた。
なんと! 神は、こんな事を言い出されたのである。
そなたの子、そなたの愛する 1人子
すなはち、イサクを携えて、モリアの地に到り
我が、そなたに示さんとする かの所の山において
彼を燔祭として献ぐべし
彼は、翌朝早く起き上がるや、ロバに荷を積み、2人の召使いと息子の
イサク
を連れた。彼が十分な燔祭用の薪を割ると、彼らは神に示された場所へと向って出かけた。
ヤン・ブリューゲル(父)『 アブラハムとイサクのいる森林風景 』1599  国立西洋美術館
Jan Brueghel, the Elder " Wooded Landscape with Abraham and Isaac "
3日目、
アブラハム
が目を上げると、はるか遠くに、その場所が見える。そこで、彼は召使いたちに
「 わしと息子は向うに行ってくるので、お前たちは ここにロバと一緒いなさい。わしらは礼拝してから戻るから 」と言った。
アブラハム
は燔祭の薪を取って
イサク
に負わせ、彼自身は手に火と刃物とを持った。
2人が一緒に歩いて行っている時、
イサク
が声を上げて
アブラハム
に聞いた。
「 おとうさん。。」
「 なんだい?」と彼が答えると、
イサク

「 火と薪はあるけど、燔祭のための小羊はどこにいるの?」 と。
アブラハム

「 あぁ、燔祭用のラムな。。そ、それはな。。。ん~、それは、神さまご自身が用意してくださるのさ 」と答えた。
そして、2人は一緒に進んでいった。
彼らが神に示された場所に着くと、
アブラハム
は、そこに祭壇を築き、その上に薪を並べた。そして、彼は息子の
イサク
を縛り上げると、祭壇の薪の上に乗せた。そして、手を伸ばしてナイフを取り、息子を殺さんとした。
と、その時、主の御使いが天から彼を呼ばれた。
アブラハム! アブラハム!
レンブラント 『 イサクの生贄 』 1635
 エルミタージュ美術館
Rembrandt van Rijn " Sacrifice of Isaac "

彼が
はい、ここにおります
と答えるや、
そなたの手を男児に按ずるなかれ
また、何をも彼になすべからず
我、今、そなたが神を畏るるを知る
そなたの子、すなはち、そなたのただ一人の子をも
我が為に惜まざれば
と、その御使いはおっしゃった。
アブラハム
が目を上げてみると、後ろに、薮に角を引っ掛けているラムが1頭いた。彼はその羊を捕えて、自分の子の代わりに燔祭として捧げた。
彼は、その地を「ヤーウェ・イルエ」(主は備えてくださる)と名付けた。なので、今日 なお、人々は「主の山に備えあり」と言うのである。
主の御使いが再び、天から
アブラハム
を呼んで言った。
主が、こう言われました。
 我、己を指して誓ふ
 そなた、このことをなし、そなたの子
 すなはち、そなたの一人子を惜まざりしに因て
 我、大いに そなたを祝福し
 また、大いに そなたの子孫を増して
 天の星の如く、浜の砂の如くならしむべし
 そなたの子孫は その敵の門を獲ん
 また、そなたの子孫によりて、天下の民、皆、福祉を得べし
 そなた、我が言に遵ひたるによりてなり
と。
アブラハム
は召使いたちのところに戻り、一緒にベエルシバに帰った。そして、彼はベエルシバに住んだ。
こういうことが起きた後、
アブラハム
は聞かされた。
「 ミルカもまた母親ですよ。あなたの兄弟 ナホルに男の子を何人も産みました。 長男の
ウヅ
(Uz) 、弟の
ブズ
(Buz) 、次は
ケムエル
(Kemuel) (=
アラム
(Aram) の父 )、次は
ケセデ
(Kesed) 、
ハゾ
(Hazo) 、
ピルダシ
(Pildash) 、
エデラフ
(Jidlaph) 、そして、
ベトエル
(Bethuel) です 」と。
ベトエルの子が
レベッカ
(Rebekah) である。
ミルカ
は、
アブラハム
の兄弟である
ナホル
との間に、これら 8人の息子を産んだのである。
ナホル
の側女で、
ルマ
(Reumah) という女も、また、
テバ
(Tebah) 、
ガハム
(Gaham) 、
タハシ
(Tahash) 、および、
マアカ
(Maakah) を産んだ。
[創世記 22章]
サラ
は 127歳まで生きた。彼女はカナンの地の キリアテ・アルバ
[Kiriath Arba]
(= ヘブロン )で没した。
アブラハム
は、彼女のために嘆き悲しんだ。
彼は死したる妻の側を立って ヘテの人々
/Hittites/
に頼んだ。
「 私は、あなた方の中では、異邦人でよそ者ですがな、私の妻を葬るために、土地を譲ってもらえませんかの?」と。
ヘテの人々は
アブラハム
に答えて言った。
「 ご主人、お聞きください。あなたは我々のうちにおられて神のようなお方です。どうぞ、どうぞ、我々の墓地の最も良い所に葬りください。死者を葬むるために墓地の提供を拒むものは誰もおりませんから 」
アブラハム
立ち上がって、土地のヘテの人々に深々と礼をして言った。
「 では、わしの死人を葬らせていただけるのなら、わたしの願いを聞き入れて、わたしのために
ゾハル
(Zohar) さんの子の
エフロン
(Ephron) さんに頼んで、彼の所有である畑の端の マクペラ
[Machpelah]
の洞穴を譲ってもらうよう、彼に頼んでもらえんですかの? 彼に、そこを、あなた方の中の墓地として、高い額で わしに譲っていただけるよう、聞いてもらえんでしょうか?」と依頼した。
その時、ヘテ人の
エフロン
は、その場に座っていたのである。彼は、町の門に集まっていた全てのヘテ人が聞いている中で
アブラハム
に答えて言った。
「 いえいえ、ご主人さま、お聞きください。あの畑と、その中の洞穴を差し上げます。民みんなの前で、差し上げますんで、どうぞ、お亡くなりになった方を葬ってください 」と。
アブラハム
はその地の民の前で深々と礼をし、みんなが聞いているところで
エフロン
に言った。
「 承諾くださりますか? ならば、お聞きください。私はその畑の代価を払いますので、お受け取りください。そうすれば、私は死者をそこに葬れます 」
エフロン

「 お主人さま、聞いてください。あの土地の価格は銀 400シケルですが、そ~んなん、あなたと私との間で何ほどのことでしょうや。埋葬なさってくださいな 」と答えた。
アブラハム
エフロン
の言葉に合意し、彼がヘテの人々の聞いているところで言った銀、すなわち、商人の通用銀 400シケルを量って
エフロン
に渡した。
こうしてマムレの近くのマクペラにある
エフロン
の畑は - 畑も、その中の洞穴も、および、その周囲の境にあるすべての木も -、町の門に集まっていたヘテの人々の前で、
アブラハム
の所有と証明されたのである。
その後、
アブラハム
は、妻の
サラ
をカナンの地にあるマムレ(= ヘブロン)の近くのマクペラの畑の洞穴に埋葬した。
ドレ 『 サラの埋葬 』 1866
Gustave Dore " The Burial of Sarah "
このように、その畑と、その中にある洞穴とは、ヘテの人々によって
アブラハム
所有の墓地と定められた。
[創世記 23章]
アブラハム
は非常に高齢となった。主はあらゆる事に彼を祝福された。
彼は、家の全財産を管理させていた年長のしもべを呼んで言った。
「 わしの股の下に手を入れなさい。天の神、地の神である 主に誓ってほしい。
 実はな、息子は、今暮らしているカナンの娘を嫁に貰ってはならん。なので、わしの国の親族の所へ行って、イサクの妻を見付けてきて欲しいのじゃ 」と。
しもべは聞いた。
「 もし、その女性がこの地に来たくないと言いましたら、息子さんを連れていくべきなのでしょうか?」
「 決して、息子を連れて行ってはならん!」と
アブラハム
は言った。
「 わしを父の家、親族の地から導き出された天の神:主は、誓って わしに
そなたの子孫に この地を与へん
と約束された。主はお前の前に御使いを遣わして、そこから息子の妻を捜し出させてもらえるであろう。もし、その女性が、お前と一緒に戻りたくないというのなら、この誓いは解かれる。ただ、息子を向うへ連れ行ってならぬ 」
そして、この しもべは、主人の
アブラハム
の股の下に手を入れ、この件について 彼に誓った。
こうして、この しもべは
アブラハム
の兄弟
ナホル
が住む町へと、嫁探しに出掛けた。町に着いて井戸のそばに伏せて神に祈っていると、女たちが水を汲みにやって来た。その中の 1人に水を飲ませてもらうようお願いすると、この娘は親切に対応してくれた。これが
ナホル
の妻:
ミルカ
の子:
ベトエル
の娘である
レベッカ
であった。彼は事情を話し、彼女の兄である
ラバン
(Laban) と共に家に連れて行ってもらうと、そこで、正式に
レベッカ
アブラハム
家に輿入れしてもらうよう依頼する。
こうして、一家は合意し、しもべは
レベッカ
を連れて帰って来た。そして、
イサク
と結婚する。
[創世記 24章]
アブラハム
は別の妻を娶った。名を
ケトラ
(Keturah) という。 彼女の子は
 
ジムラン
(Zimran) 、
ヨクシャン
(Jokshan) 、
メダン
(Medan) 、
 
ミデアン
(Midian) 、
イシバク
(Ishbak) 、
シュワ
(Shuah) 。
 
ヨクシャン
の子は
  
シバ
(Sheba) 、
デダン
(Dedan)
  
デダン
の子孫が
   アシュリ人
/Ashurites/
・ レトシ人
/Letushites/
・ レウミ人
/Leummites/
 
ミデアン
の子孫は
  
エパ
(Ephah) 、
エペル
(Epher) 、
ヘノク
(Hanok) 、
アビダ
(Abida) 、
  
エルダア
(Eldaah) 。
アブラハム
は自己の財産を、すべて
イサク
に与えた。 また、生前、側女の子たちにも物を与え、息子の
イサク
から離して、東方の土地に移らせた。
アブラハム
の生涯は 175年であった。高齢に達し 年が満ちて息絶えると、その先祖の列に加えられた。
イサク
イシマエル
は、彼をヘテ人の
ゾハル
の子である
エフロン
の畑の中の、マムレの近くにあるマクペラの洞穴に埋葬した。 ここは、
アブラハム
がヘテの人々から買い取った畑であって、そこに 妻の
サラ
と共に葬られたのである。
サラ
の仕え女であったエジプト人
ハガル
の子
イシマエル
の系図は以下の通り。
上から、
ネバヨテ
(Nebaioth) 、
ケダル
(Kedar) 、
アデビエル
(Adbeel) 、
ミブサム
(Mibsam) 、
ミシマ
(Mishma) 、
ドマ
(Dumah) 、
マッサ
(Massa) 、
ハダデ
(Hadad) 、
テマ
(Tema) 、
エトル
(Jetur) 、
ネフシ
(Naphish) 、
ケデマ
(Kedemah) 。
これらが
イシマエル
の子らであり、居住しキャンプを張っている場所によって支配する 12の氏族の名前である。
イシマエル
は、137歳まで生きた。死して、その民に加えられた。
イシマエル
の子孫たちは、 エジプトの東の境に近い、 ハビラ
[Havilah]
から シュル
[Shur]
の アシュル
[Ashur]
に向う地域に定住した。彼らは同族間で互いに敵対しつつ生活した。
[創世記 25章]






更新情報:
 - Ver. 1.0:  2019年 5月 5日 公開