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旧約聖書:サムエルの話

フランソワ=レオン・ベヌーヴィル 『 ダビデに聖油をそそぐサムエル 』 1842
コロンバス美術館
François-Léon Benouville " The Anointing of David by Samuel "
旧約聖書 サムエル記上[ 1-Samuel ] 全章。サムエルが登場する章を中心に掲載しております(その他の章は概要のみ)。紀元前 11世紀頃の人。

エフライム
[Ephraim]
の山地の ラマタイム・ゾピム
[Ramathaim, Zuphite]
に、ある男がいた。名を
エルカナ
(Elkanah) という。 彼の先祖は、 エフライム人
/Ephraimite/
ツフ
(Zuph) >
トフ
(Tohu) >
エリウ
(Elihu) と来て、
エロハム
(Jeroham) の子である。
彼には 2人の妻があって、1人は
ハンナ
(Hannah) 、もう 1人を
ペニンナ
(Peninnah) といった。
ペニンナ
には子供があったが、
ハンナ
には無かった。
この人は毎年、自分の町から シロ
[Shiloh]
に上って、全能の 主 を礼拝し犠牲を捧げていた。そこには、
エリ
(Eli) の 2人の息子:
ホフニ
(Hophni) と
ピネハス
(Phinehas) とが居て、彼らは 主 に仕える祭司であった。

※「 聖書地図 」より。関連する場所に赤丸を付けた。
エルカナ
が犠牲をささげる日が来ると、彼は妻の
ペニンナ
と、その息子と娘ら全員に肉の分け前を与えた。しかし、彼は
ハンナ
を愛していたのに、主 は、その胎を閉ざされたままであったので、 彼女には ふた切れを与えた。そして、彼女のライバルは
ハンナ
に子供ができないことを責めて、彼女をイラつかせて悩ませ続けた。
こうして年は暮れ、年は明けた。
ハンナ
が 主 の家に上るたびに、ライバルの
ペニンナ
が彼女を悩ますので、
ハンナ
は泣いて、食事を取ることができなかった。
夫の
エルカナ
が言った。
「 ハンナ、なぜ泣くんだ? 食べないんかい? どうして落ち込んでいる? 俺が 10人の息子たちより大事してない訳 ないじゃないか 」
ある時、シロで飲食した後で
ハンナ
は立ち上がった。その時、祭司の
エリ
は 主 の家の柱のかたわらに座っていた。
ハンナ
は深い苦悩の中で激しく泣いて 主 に祈った。そして、誓いを立てて言った。
全能の 主 よ
もし、あなた様の しもべの不幸を顧み
私めをお覚えで お忘れでなく
この女に男の子を賜わりますならば
私は、その子を一生、主 にお捧げいたします
そして、その子の頭に、けっして剃刀の刃を当てません
彼女が、ずっと 主 に祈っていたので、
エリ
は彼女の口元を見た。
ハンナ
は心の内で祈っていたのだが、唇が動いているだけで声は聞えなかった。それゆえ、
エリ
は、彼女が酔っているのだと思って、言った。
「 いつまで酔っているのかね。ワインを片付けなさい 」
「 いいえ、祭司さま。私は悩み深き女です。ワインもビールも飲んでおりません。ただ、主 に対して心を注ぎ込んでおりました。この しもべを邪悪な女とされますな。私は大いなる苦悩と憂いから、ここに祈っていたのであります 」と彼女は答えた。
エリ
は答えた。
「 安心おし。どうか、イスラエルの神が、そなたの願いをお聞きになられますように 」
彼女は
「 どうか、この しもべにも、お恵みを 」と言い、そして、その場を離れて食事をした。その顔には、もはや翳りは無くなっていた。
翌朝早く、彼らは起きて 主 の前に礼拝し、そして ラマ
[Ramah]
の家に帰っていった。
エルカナ
ハンナ
を抱いた。そして、主 は彼女を顧みられた。時が巡り、彼女はみごもり、そして息子を出産した。
「 私が 主 にこの子を求めたからだわ!」と言って、彼女は、その子に
サムエル
(Samuel)
(「その名は神」の意味)
という名前を付けた。
夫の
エルカナ
が年次の 主 への捧げものと、自分の誓いを満たすために、家族全員で上って行った時、
ハンナ
は行かなかった。
「 この子が乳離れしたら、主 の前に連れていって、そこに、ずっと住まわせます 」と夫に言うと、夫は
「 一番良いと思うようにして、この子が乳離れするまで、ここに居なさい。主 がその言われたことを実現されますように 」と答えた。
こうして、彼女は家に留まって、その子が乳離れするまで育てた。
その子が乳離れすると、彼女は 3歳の雄牛 1頭、麦粉 1エパ(≒23リットル)、ワインの入った皮袋 1つを取り、その子を連れて、シロにある 主 の家へ行った。その牛が捧げられると、彼らは、その子を
エリ
のもとへ連れて行った。
彼女は、
「 すみません、司祭さま。私は、かつてここに立って、あなたのそばで 主 に祈っていた女です。『この子をお与えてください』と 主 に祈りましたが、主 は私の求めた願いを聞き入れてくださいました。それゆえ、私もこの子を 主 に捧げます。この子の一生は 主 に捧げられるものです 」と言った。
ここで、彼はその場で 主 を拝した。
エークハウト 『 エリに息子のサムエルを紹介するハンナ 』 1665頃 ルーヴル美術館
Gerbrand van den Eeckhout " Anna presenting her son Samuel to the priest Eli "
[サムエル記上 1章]
そうして
ハンナ
は祈った。
私の心は 主 の中にあって喜び、主 の中にあって私の角は高く持ち上げられる
私の口は敵に対して大きく開く、あなたの救いに喜ぶから
主 のごとき聖なるものはなく、あなたの他には誰も、私たちの神のごとき岩はない
高慢に語ってはならず、横柄な言葉を口にすることは止められよ
主 はすべてを知る神であり、諸々の行いは 主 によって測られているのだから
勇士の弓は折られるも、弱き者は力を帯びる
満ち足りた者が食べるために雇われるも、飢える者が飢えることはない
産まず女が 7人の子を産むも、子だくさんの女が孤独となる
主 は殺し 生かし、陰府に下し 引き上げられる
主 は貧乏にさせ リッチにさせ、低くもし 高くもされる
貧しき者を、塵の中から立ち上がらせ、乏しい者を芥の中から引き上げられる
彼らを高貴な者と共に座らせ、栄誉の位を継がせられる
地の柱は 主 のものであり、その上に世界を据えられた
主 は敬虔な者たちの足を守られ、邪悪な者どもは暗黒のうちに滅びる
力をもってしても 主 には勝てず、主 に歯向かう者は打ち砕かれる
天の最も高いところから雷をとどろかし、主 は地の果てまでも裁かれる
主 は王に力を与え、油を注がれた者の角を強くされる
エルカナ
はラマの家に帰ったが、この幼な子は、祭司
エリ
の元で 主 に仕えた。
さて、
エリ
の息子らは、よこしまな人物で、主 を全く顧みなかった。
祭司のお作法は次の通りであった。どんな人が生贄を捧げに来ても、この祭司の仕えの者は三叉の肉刺しフォークを手に持ちやって来るや、肉を煮る間に、それを釡・鍋・大釜、もしくは鉢の中に突き入れる。肉刺しが引き上げられると、祭司はそれを取った。これが、シロに来るイスラエルの人々全員に対して扱われた。
ところが、あぶら肉が燃やされる前でさえも、この祭司の仕えの者たちはやって来て、
「 祭司にはローストする肉を与えられよ。祭司は煮た肉は受け付けられぬ。生の肉がよい 」と、捧げものをする人々に言い、
ある人が
「 まず、あぶら肉を燃やしましょう。その後、欲しいだけ取ってください 」と言うや、
その仕えの者は
「 いや、ならぬ。今、それを渡すのだ。呉れぬというのなら、力づくで取り上げる 」と答えたのであった。
このように、この若者たちの罪は 主 の前にて非常に大きかった。彼らは 主 への供え物を侮辱したのである。
さて、
サムエル
は 主 の前に仕えていた。身にリネンのエポデを着た男の子である。毎年、彼の母は、彼のために小さいローブを作り、夫と共に年次の犠牲を捧げるために上る時、それを彼に持ってきた。
ジョシュア・レイノルズ『 幼きサムエル 』 1776
ファーブル美術館
Joshua Reynolds " The Infant Samuel "
エリ
エルカナ
と妻を祝福して言った。
この女性が祈って得た子を 主 に捧げた代わりに
主 がこの女性に子を授けられますように
そして、彼らは家に帰っていった。 こうして 主 が
ハンナ
を祝福されたので、彼女は 3人の息子と 2人の娘を産んだ。一方、少年
サムエル
は 主 の前で育っていった。
エリ
は大層、歳を取った。彼は自分の子らが全てのイスラエルの人々にしでかした事、ならびに、会合のテントの入口で仕えていた女たちとヤってしまった事も聞いて言った。
「 何故に そんな事をするのか!? 私は、お前たちの悪事をみんなから聞いた。息子らよ、主 の人々の中に広がっている報告は、もう悪いものばっかりだ。もし、人が他の人に対して罪を犯すならば、神が、その犯人に対して取りなされるであろう。ところが、主 に対して人が罪を犯すならば、誰が中に入れるというのだ!?」
しかし、彼らは父の叱責を聞かなかった。そうして、主 の意志は、彼らに死を与えるというものであった。
サムエル
は成長して背も高くなり、主 にも人々にも愛せられた。
この時、ある神の人が
エリ
の元にやって来て言った。
「 主 が、こう おっしゃっておられる。
そなたの父祖の家、エジプトにおいてパラオの家にありし時
我、明らかに、これに現れしにあらずや
我、これをイスラエルの諸々の支派うちより選みて 我が祭司となし
我が壇の上に供え物を捧げ、香をたかしめ、我前にエポデを着しめ
また、イスラエルの人の火祭を、悉く そなたの父の家に与へたり
なんぞ、我が命ぜし生贄と供え物を そなたの家にて 踏みつくるや
なんぞ、我よりも そなたの子を尊み
我がイスラエルの諸々の供え物の最も良きところをもて 己を肥やすや
と。それゆえ、イスラエルの神、主 は仰せられるのだ。
我、まことに かつて言へり
そなたの家、および、そなたの父祖の家、永く我が前に歩まん と
しかし、今、主 は仰せられる。
決めて 然らず
我を尊む者は 我も これを尊む 我を賤しむる者は 軽ろんぜらるべし
見よ、時 至らん
我、そなたの腕と そなたの父祖の家の腕を絶ち
そなたの家に老いたる者 なからしめん
我、大いにイスラエルを良くすべけれど、そなたの家内には災い見えん
そなたの家には、この後 永く老ゆる者無かるべし
また、我が壇より絶たざる そなたの族の者は そなたの目を損なひ
そなたの心を痛ましめん
また、そなたの家に生まれ出づる者は壮年にして死なん
そなたの 2人の子:ホフニ と ピネハス の遇ふところの事を その徴とせよ
即ち、2人ともに同じ日に死なん
我は、我がために忠信なる祭司を起さん
その人、我が心と 我が意に従ひて行はん
我、その家を固うせん
彼、我が油注ぎし者の前に 常に歩むべし
しかして、そなたの家に残れる者は、皆来たりて、これにかがみ
1厘の金と ひと切れのパンを乞ひ、且つ、言はん
「 願わくは我を祭司の職の一つに任じて、 少しのパンにても食らうことを得せしめよ」と
[サムエル記上 2章]
わらべの
サムエル
エリ
の下で 主 に仕えていた。 その頃は、もう、主 の言葉はまれで、黙示もあまり無かった。
エリ
の目はかなり弱くなり、ほとんど見えなくなっていたが、ある夜、彼は自分の部屋で寝ていた。まだ 神のランプは消えず、
サムエル
は神の聖櫃がある 主 の家に寝ていた。
その時、主 が
サムエル
に呼びかけられた。彼は
「 はい、ここにおります 」と言って
エリ
の所へ トコトコと 走って行き、
「 お呼びになりましたか? ここにおります 」と言った。
しかし、
エリ

「 呼んではおらぬ。戻って寝なさい 」と答えたので、彼は戻って寝た。
再度、主 は呼びかけられた。
サムエル!
彼は起き上がって
エリ
の元へ行き、
「 お呼びになりましたか? ここにおります 」と言った。
エリ

「 呼んではおらんぞ。戻って寝なさい 」と答えた。
サムエル
は、まだ 主 を知らず、彼には 主 の言葉がまだ解らなかったのである。
またまた、主 は 3度目の呼びかけを行われた。
サムエル!
サムエル
は飛び起きて
エリ
の元へ行き、
「 ここにおります。お呼びになりましたね 」と言った。
ここに
エリ
は、主 がこの子を呼ばれたことを悟った。
エリ
サムエル
に伝えた。
「 戻って寝なさい。今度 呼ばれたら、こう言いなさい。
 お話しください、主 よ。あなた様の しもべはお聞きします
と 」。
なので、
サムエル
は自分の床に戻って寝た。
主 が来られ、そばにお立ちになって、先と同様に言われた。
サムエル! サムエル!
サムエル
は言った。
お話ください。あなた様の しもべはお聞きしております
主が
サムエル
に言われた。
見よ、我、イスラエルの中に一つの事をなさん
これを聞く者は皆、その耳 二つながら鳴らん
その日には、我、かつて エリ の家について言ひしことを
初めより終わりまで、ことごとく エリ になすべし
我、かつて エリ に その悪事のために 永く その家を裁かんと示せり
そは、その子の詛ふべきことをなすを知りて、これを止めざればなり
この故に、我、エリ の家に誓ひて エリ の家の悪は犠牲、
あるいは、供え物をもて 永くあがなふ能はず
サムエル
は朝まで寝て、そして、主の家の戸を開けた。彼はその幻影の事を
エリ
に語るのを恐れた。 しかし
エリ
サムエル
を呼んで言った。
「 サムエルよ 」
「 はい、ここにおります 」と彼は答えた。
「 何をお告げになったのか、包み隠さず話しなさい。もし、お告げになったことを私に隠したりしたら、神は おまえを幾重にも罰されるであろう 」と
エリ
は言った。
そこで
サムエル
は全てのことを話した。そうして、
「 そのお方は 主 であられる。どうか、主 が良いと思われることを行われますように 」と
エリ
は言った。
主 は
サムエル
と共におられ、彼は育っていった。主 は彼の言葉を一つも地に落されることはなかったので、 ダン
[Dan]
から ベエルシバ
[Beersheba]
まで、すべてのイスラエルの人々が、
サムエル
が 主 の預言者に定められたことを認知したのであった。
主 は何度もシロで現れられた。主 は、そこで
サムエル
の言葉を通して自らを現された。こうしてサムエルの言葉は、あまねくイスラエルの人々に行き渡ったのでである。
[サムエル記上 3章]
イスラエル人
/Israelites/
は ペリシテ人
/Philistines/
との戦いに挑んだ。イスラエル側は エベネゼル
[Ebenezer]
に、ペリシテ側は アペク
[Aphek]
に陣を敷いた。

※「 聖書地図 」より。関連する場所に赤丸を付けた。
ペリシテ人はイスラエル人を迎え撃つ陣備えをしたが、戦いに及んで、イスラエルはペリシテに敗れた。戦場では、およそ 4,000人が殺害された。
兵士たちがキャンプに戻った時、イスラエルの長老たちは言った。
「 何故に 主 は、今日、ペリシテ人の前に吾らを敗退させられたのか? シロから 主 の聖櫃をココへ運んでこよう。そうすれば、主 は吾らと共にあり、敵の手から救っていただけるであろう 」
そこで人々はシロに使いを遣し、智天使(ケルビム)の間に座しておられる全能の 主 の契約の聖櫃を、そこから携えて来させた。その時、
エリ
の 2人の息子:
ホフニ
ピネハス
が神の契約の箱と共にあった。 主 の契約の箱がキャンプに着いた時、イスラエル人は地が鳴り響くがごとくに大歓声を上げた。
その叫び声を聞いたペリシテ人は
「 なんだ、なんだ!? このヘブル陣営の叫び声は?」と驚いた。そして、それが、主 の箱がキャンプに着いた事であることを知った時、彼らは怖れた。
「 神がキャンプに来たのか! やめてくれ~、こんな事は今までに無かった。ひで~運命だぁ! こんな強敵の神から逃れられるんか? エジプト人は、この神から様々な災いをもって荒野で撃たれたんだべや~!」
「 しっかりしろ、ペリシテ人よ! 男らしくしろ、さもなくば、ヘブル人が我々に仕えたように、我々が奴らに仕えることになるんだぞ! だから、戦え!」と言い合った。
こうしてペリシテ軍が戦ったので、イスラエル軍は敗れて、全員、自分のテントに逃げ帰った。戦死者は甚大で、3万ものイスラエル歩兵が倒れたのであった。
神の聖櫃は奪われ、
エリ
の 2人の子、
ホフニ
ピネハス
も死んだ。
同日、1人の ベニヤミン人
/Benjamite/
が衣服を引き裂き、頭に土をかぶって、前線から走ってシロにやって来た。その者が来た時、
エリ
は道の脇で自分の椅子に座っていた。彼は神の聖櫃の事が気がかりであったのである。その人が町に入って戦況を伝えたところ、町中が叫び上げた。
エリ
は、その叫び声を聞いて訊ねた。
「 この騒ぎはなんだね?」と。
エリ
は 98歳で、もう目が見えなかった。そこに、その男が急ぎ来て告げたのである。
彼は言った。
「 たった今、前線から来ました。今日、逃げて来たのです 」
エリ

「 戦況は如何でありますか? 」と聞くと、
その、知らせをもたらした男は言った。
「 イスラエル人はペリシテ人の前から逃げ、軍は大打撃を受けました。あなたの 2人の子、ホフニさんと ピネハスさんは亡くなられ、神の聖櫃も奪われました 」と。
彼が神の聖櫃の事を述べた時、
エリ
は椅子から仰向けに倒れて門のサイドに落ち、首を折って死んだ。彼は老人であり、身が重たかった。
彼がイスラエルを裁いたのは 40年間であった。
エリ
の嫁である
ピネハス
の妻は妊娠していて臨月であった。聖櫃が奪われ、舅と夫が死んだという知らせを聞くや、陣痛が起り、身をかがめて子を産んだ。
彼女が死にかかっている時、産婆は言った。
「 心配しないで。男の子が生れましたよ 」と。しかし、彼女は答えもせず、また気にも留めなかった。ただ、彼女は
「 イスラエルから栄光が去ったのです 」と言って、その子に
イカボデ
(Ichabod) という名を付けた。それは聖櫃が奪われたことと、舅と夫が死んだからである。
彼女は言った。
「 栄光がイスラエルを去った。聖櫃は奪われた。。 」
[サムエル記上 4章]
ペリシテ人は、かの聖櫃を奪った後で、 エベネゼル
[Ebenezer]
から アシドド
[Ashdod]
に運んだ。彼らは聖櫃を ダゴン
(Dagon)
の宮に運び込み、それをダゴンの側に置いた。
翌朝、アシドドの人々が早く起きて見ると、主 の聖櫃の前でダゴンが うつむきに地に倒れていた! 彼らはダゴンを起して、それを元の位置に置いた。
ところが、次の日の朝、また早く起きて見るや、またもや、ダゴンは聖櫃前で、うつむきに地に倒れていたのである。しかも、ダゴンの頭と両手が切り離されて胴体だけとなっていて、敷居の上にあった。
それゆえ、今日でも、ダゴンの祭司たちや他のダゴンの宮に入る人々は、誰一人としてアシドドのダゴンの敷居を踏まないのである。
そして、主 の手はアシドドの人々の上に重くのしかかり、主 は腫物をもってアシドドとその領域の人々を脅かした。
ニコラ・プッサン 『 アシドドの疫病 』 1630  ルーヴル美術館
Nicolas Poussin " The Plague at Ashdod "
アシドドの人々は、この事態を見て
「 ここにイスラエルの神の聖櫃を置いてはならぬ。その神の手が我々と、我々の神ダゴンの上に厳しく臨んでいる 」と言った。
そこで、彼らはペリシテ人の統治者たちを呼んで聞いた。
「 イスラエルの神の聖櫃をどうしたらいいのでしょう? 」と。
彼らは答えて言った。
「 イスラエルの神の聖櫃は ガテ
[Gath]
に移せよ 」と。
なので、彼らは聖櫃を移動させた。
ところが、聖櫃が移動されるや、主 の手がその町に臨み、非常なパニックが生じた。神は、老若を問わず腫物を起して、町の人々を苦しめられたのである。

※「 聖書地図 」より。関連する場所に赤丸を付けた。
なので、彼らは神の聖櫃を エクロン
[Ekron]
に送った。エクロンに着くや、その地の人々は叫んだ。
「 我々の民を滅ぼすために、イスラエルの神の聖櫃が持ち運ばれて来たぞ 」と。なので、彼らはペリシテの統治者を全員呼び集めて言った。
「 我々の民を滅ぼしたいのか!? イスラエルの神の聖櫃は元の場所に返してくれ!」と。 そこには神の手が非常に厳しく臨んでおり、町中がパニックに陥っていたのである。まだ死していない人には腫物が生じ、町の叫びは天に達した。
[サムエル記上 5章]
主 の聖櫃がペリシテ人の地にあった 7ヵ月の間、ペリシテの人々は祭司や占い師を呼んで尋ねた。
「 イスラエルの 主 の箱は どうしたら良いのでしょうか? どのように、それを元の場所へ送り返せばよいか、教えてください 」と。
彼らは答えた。
「イスラエルの神の聖櫃を送り返す際は、ただ、そのままで返してはならない。必ず供え物を贈らねばならぬ。それにより、あなた方は癒され、また、何ゆえに彼の手が あなた方を離れなかったかを知るであろう 」
ペリシテの人々は聞いた。
「 その供え物には 何を用意したらよろしいのでしょうか?」
彼らは答えた。
「 ペリシテの支配者の数に従い、金の腫物 5体と金の鼠 5体を用意されるがよい。なぜならば、その数があなた方と、あなた方の統治者に災いをもたらしたからである。この国を滅ぼそうとしている腫物と鼠の像を造り、イスラエルの栄光に与えなされ。おそらくは、その神は、あなた方とあなた方の神と土地から手を離されるであろう。
なにゆえ、あなた方は、エジプト人とパラオが行ったのと同様に 心を頑なにされるのか? イスラエルの神が彼らを悩ましたがゆえに、エジプト人は彼らを去らせて、そうしてイスラエルの人々は出て行ったではないか。
それゆえ、今、まだ 軛を付けたことのない 2頭の乳牛と共に新しいカートを用意されよ。車に牛をつなぎ、その、それぞれの子牛を引き離して家に連れ帰られよ。そして、聖櫃を車に載せ、その横に置く箱の中に、あなた方が罪の供え物として送り返す金の作り物を入れ、そうして歩ませよ。ただし、見ておるのじゃ。
もし、そのカートが自分の領地へ行く道を、 ベテシメシ
[Beth Shemesh]
へ上るならば、この大いなる災いを我々に下したのは 主 であるということである。しかし、そうでなければ、我々を撃ったのは彼の手によるものではなく、単なる偶然であったということを知るであろう 」
なので、人々はそのように実行した。彼らは 2頭の乳牛を車につなぎ、その各々の子牛を引き離した。聖櫃をカートに置き、その側に金の鼠と腫物の像を納めた箱とを置いた。
すると、雌牛はベテシメシに向って真っすぐに進み、一筋に大路を歩み、鳴きながら進んで行って、右にも左にも曲らなかった。ペリシテびとの統治者たちはベテシメシの境まで付いていった。
時に、ベテシメシの人々は谷で小麦を刈り入れをしていたのだが、目を上げて その箱を見るや喜んだ。カートはベテシメシの ヨシュア
[Joshua]
の畑に入り、大きな岩の側でストップした。 人々はカートの木を割り、そして、その雌牛を燔祭として 主 に捧げた。 レビの人たち
/Levites/
は、主 の聖櫃と、その横の金の作り物を入れた箱とを取り降ろし、それを大岩の上に置いた。その日、ベテシメシの人々は、主 に燔祭を供え、犠牲を捧げた。
ペリシテの 5人の支配者は、これを見るや、その日のうちに エクロン に帰った。
主 への償いとして、ペリシテ人が供え物にしたのは次の通り - アシドド ・ ガザ
[Gaza]
・ アシケロン
[Ashkelon]
・ ガテ ・ そして、エクロン のために 1つずつである。また、金の鼠の数は、城壁をめぐらした町から城壁のない村里にいたるまで、5人の領主に属するペリシテの町の総数に従って作られた。
主 の聖櫃を降ろした所のかたわらにあった大岩は、ベテシメシの ヨシュアの畑の中にあり、今日に至るまで、その証となっている。
しかし、ベテシメシの人々で 主 の箱の中を見たものがいたので、主 は、彼らのうちの 70人を討たれた。主 の重たい一撃に、人々は嘆き悲しんだ。
ベテシメシの人々は言った。
「 誰が、この聖なる神、主 の前に立つことができようか? ここから、誰のもとへ、この聖櫃は行かれるべきなのか?」と。
そうして、彼らは キリアテ・ヤリム
[Kiriath Jearim]
の人々に使者を遣わして言った。
「 ペリシテ人が 主 の箱を返してきました。下りてきて、それをあなた方の町へ持って行ってください 」と。
[サムエル記上 6章]
キリアテ・ヤリムの人々は、やって来て 主 の聖櫃を引き取った。彼らは丘の上の
アビナダブ
(Abinadab) の家に持ってきて、彼の子
エレアザル
(Eleazar) を聖別して、この 主 の聖櫃を守らせた。この聖櫃は 20年の間、長らくキリアテ・ヤリムにあった。イスラエルの全家は 主 を慕い求めた。
ここで
サムエル
はイスラエルの全家に告げて言った。
「 もし、あなた方が一心に 主 に立ち返り、外国の神々やアシュトレト(Ashtoreths)を捨て去って、主 のみに仕えるようコミットするのであれば、主 はあなた方をペリシテ人の手から解放されるであろう 」と。
なので、イスラエルの人々はバアル(Baals)とアシュトレトの神々を捨てて、ただ 主 にのみ仕えた。
そして
サムエル
は言った。
「 イスラエルびとを、ことごとく ミツパ
[Mizpah]
に集めなさい。私はあなた方のために 主 に祈りましょう 」
人々はミツパに集まると、水を汲んで、それを 主 の前に注いだ。その日、断食して、その場で言った。
「 我々は 主 に対して罪のある者です 」と。
サムエル
はミツパでイスラエルのリーダーとして仕えた。
ペリシテ人は、イスラエルの人々がミツパに集まっていることを知るや、その統率者たちはイスラエルに攻め上ってきた。イスラエルの人々はそれを聞いて、ペリシテ人を恐れた。彼らは
サムエル
に頼んだ。
「 私たちのために、我々の神、主 を呼ばわることを止めないください。そうすれば、ペリシテ人の手から救ってくださるでありましょう 」
そこで
サムエル
は、まだ乳離れしていない小羊を一頭を取り、これを全き燔祭として 主 に捧げた。彼はイスラエルのために 主 に叫んだ。すると、主 はこれに答えられた。
サムエル
が燔祭を捧げている時、ペリシテ人がイスラエルに近づいてきた。しかし、その日、主 は大いなる雷をペリシテ人の上に轟かせられたので、彼らはパニックとなりイスラエルの前に逃げ去ったのであった。イスラエルの男たちはミツパを出てペリシテ人を追い、これを撃って ベテカル
[Beth Kar]
の下まで行った。
サムエル
は一つの石をとってミツパと エシャナ
[Shen]
の間に置き、
「 主 はここまで我々を助けてくださった 」と言って、その地を エベネゼル
[Ebenezer]
と名付けた。
こうしてペリシテ人は征服され、イスラエルの領地を侵略することは止めた。
サムエル
の一生の間、主 の手がペリシテ人を防いだのである。ペリシテ人がイスラエルから取り上げたエクロンからガテの町までイスラエルに戻り、イスラエルはペリシテ人の手からその周囲の地をも取り返した。
その頃、イスラエルと アモリ人
/Amorites/
との間には和平があった。
サムエル
は一生の間、ずっとイスラエルを統治者であり続けた。毎年、彼は ベテル
[Bethel]
から ギルガル
[Gilgal]
、そしてミツパを巡り、その所々でイスラエルを裁いた。しかし、彼は常に、自宅のあるラマに戻った。そこでもイスラエルを裁き、また、ここに 主 の祭壇を築いた。
[サムエル記上 7章]
サムエル
は老いて、自分の子らをイスラエルの士師とした。長男は
ヨエル
(Joel) 、次男は
アビヤ
(Abijah) といい、彼らはベエルシバで仕えた。しかし、その子らは父の道を歩まなかった。利に向かい、賄賂を取って、さばきを曲げたのである。
イスラエルの長老たちは集まり、ラマに居る
サムエル
のもとにやって来て言った。
「 あなたは年老い、あなたの子たちはあなたの道を歩まない。今、他の国々のように我々を率いる王を立ててくだされ 」と。
しかし、
サムエル
は、それを聞いて喜ばなかった。彼が 主 に祈ると、主 は言われた。
民の すべて そなたに言う所を聞け
そは、そなたを棄つるにあらず
我を棄て、我をして その王とならざらしめんとするなり
彼らは、我がエジプトより救い出せし日より、今日に至るまで
我を捨てて 他の神々に仕えて様々所行をなせし如くに
そなたにも またしかす
されど、今、その声に聞け
ただし、深く彼らを戒めて、その治むべき王のならわしを示すべし
サムエル
は、王を立てるよう求めている民に、主 の言葉をすべて告げて言った。
「 あなた方を治める王とやらは、自己の権利として、あなた方に次のことを求めるであろう。
彼は、あなた方の息子たちを取り上げて仕えさせ、戦車隊や騎兵にして、自己の戦車の前を走らせるであろう。 彼はまた、ある者を千人の長や 50人の長に任じ、他の者には自分の地を耕させて作物を刈らせ、また別の者には武器と戦車の装備を造らせるであろう。 また、あなた方の娘たちを取り上げて、香を作る者、料理をする者とし、パンを焼く者とするであろう。 彼は、あなた方の最良の畑とぶどう畑とオリーブ畑を取り上げて、それを自らの家来に与え、あなた方の穀物とぶどう畑の 1/10を取り上げて、それを自らの役人と家来に与えるであろう。 あなた方の男女の奴隷、および、最良の牛とロバを取り上げて、自分用に使うであろう。 彼は、あなた方の家畜の 1/10を取り上げ、そして、あなた方自身を奴隷とするであろう。
その日が来た時、あなた方は『自分たちが選んだ王から解放してほしい』と叫ぶだろう。
しかし、その日、主 はあなた方にお答えにはならない。。 」
ところが、民は
サムエル
の言うことを聞くことを拒絶した。
「 いいえ、吾々には吾々を治める王が必要なんです。他の国々のように、吾々を率いてくれる王と共に戦地へ向い、戦ってもらわねばならんのです 」と。
サムエル
は民の皆々が言うことを聞いて、それを 主 に告げると、主 は答えられた。
彼らの言葉を聞き、彼らのために王を立てよ
サムエル
はイスラエルの人々に、それぞれの町に帰るよう伝えた。
[サムエル記上 8章]
ベニヤミン人
/Benjamite/
キシ
(Kish) という名の名士が居た。彼には
サウル
(Saul) という、背の高いイケメンの息子がいた。
ある日、
キシ
のロバが数頭いなくなってしまったので、彼は
サウル
に捜しに行くよう指示した。
サウル
は 1人の しもべと共に探しに出かけたが見付からなかった。 ツフ
[Zuph]
まで来ても見付からないので帰ろうとしたのだが、その しもべが「 この町には、とても尊敬されている神の人が居られるというので、会いにいきましょう 」と言う。
サウル
は合意し、町へ行く坂を上っている時、水汲みの娘たちに「かの人は居られるか?」と聞くと、彼女らは「さらに高い所に居られますよ」と答えた。そうして、彼らがさらに上って町に入ろうとした時、
サムエル
が高き所に上るため彼らの方に向かって出てきたのである。
ティソ『 サムエルに遭遇したサウル 』 1896-1900
James Tissot " Saul meets with Samuel "
この、
サウル
がやって来る前の日、主 は
サムエル
に言われていた。
明日、今頃、我、ベニヤミンの地より、1人の人を そなたに遣わさん
そなた、その人に油を注ぎて、我が民 イスラエルの長となせ
彼、我が民をペリシテ人の手より救い出さん
我が民の叫び 我に達せしにより、我 これを顧みるなり
サムエル
サウル
を見付けた時、主 が言われた。
見よ、我が そなたに告げしは、この人なり
この人、我が民を治むべし
門の中で
サウル
サムエル
に近づいて訊ねた。
「 先見者のお宅はどちらでしょうか? お教えください 」
「 私が、その先見者です。私より先に高き所に上ってください。なぜならば、今日、あなたは私と一緒に食事をするのです。明日の朝、あなたを送り、あなたの心にあること全てをお示しましょう 」と
サムエル
は答えた。
「 3日前に見失ったロバは、もう見付かったので心配されなくともよろしい。イスラエルのすべての望みは誰に向けられているでしょう? それはあなたと、あなたの父の家すべてに対してではありませんか 」
サウル
は答えて言った。
「 私はイスラエルの最も小さい部族であるベニヤミン人であって、しかも、私の一族は、ベニヤミンのどの一族よりも小さいものではありませんか。どうして、あなたは、そのようなことを私に言われるのですか?」と。
サムエル
サウル
と、その しもべを導いて部屋に入り、招かれていた約 30人ほどのうちの上座に座らせた。そして、彼は料理人に言った。
「 あなたに渡して、取り分けておくようにと言っておいた分を持ってきなさい 」
料理人は、もも肉とその上の部分を取り出して
サウル
の前に置いた。
そして
サムエル
は言った。
「 あなたのために取り分けていたものです。召しあがってください。これは、私が招いておいた客人さんたちと共に、あなたが食事ができるように、あなたのために取っておいたものです 」と。
こうして、その日、
サウル
サムエル
と共に食事をした。
彼らが高き所から降りて町に入ると、
サムエル
は、彼の家の屋上で
サウル
と語らった。明け方に彼らは起き上がり、そこで
サムエル
サウル
を呼んで言った。
「 起きなされ。あなたをお送りします 」と。
サウル
は起き上がり、そして、2人は共に外に出た。彼らが町外れまで来た時、
サムエル
サウル
に言った。
「 あなたの しもべに、先に行くように言われよ。しもべが先に行ったら、あなたは、しばし、ここに留まられよ。神のお言葉を知らせします 」
[サムエル記上 9章]
サムエル
はオリーブ油の瓶を取って
サウル
の頭に注ぎ、彼にキスして言った。
「 主 はあなたに油を注いで、ご自身の民であるイスラエルの君とされました。
今日、あなたは去ると、 ベニヤミン
[Benjamin]
の境界の ゼルザ
[Zelzah]
にある
ラケル
の墓のそばで 2人の人に会うでしょう。
彼らはあなたに言います。
『 あなたが探しでかけたロバは見つかりました。なので、今、お父上はロバよりも あなた方を心配しています。「 わが子のために、わしはどうしたらいいのじゃ?」と訊ねておられます 』と。
あなたは、そこからなお進んで タボル
[Tabor]
の大木の所まで行きます。そこで ベテル に上って神を拝もうとしている 3人の人に会うでしょう。1人は 3頭の子ヤギを連れ、1人は 3個のパンを携え、そして、もう 1人は、ワインのはいった皮袋を携えています。彼らはあなたに挨拶し、2つのパンをくれるでしょう。あなたはそれを受け取ります。
その後、あなたはペリシテ人の守備兵がいる神の ギベア
[Gibeah]
へ行きます。あなたが町に近づく時、立琴・手鼓・笛・琴を奏でる人々を先に立たせて、高き所から預言しながら降りてくる一群の預言者たちに遭うでしょう。その時、主 の霊があなたの上にも激しく降りてきて、彼らと一緒にあなたも預言をします。あなたは違う人に変わるのです。
これらのサインが出たならば、あなたはやろうとすること、何でもやってみなさい。なぜならば、神があなたと一緒におられるからです。
あなたは私に先立って、ギルガルに下りて行かれよ。私は間違いなくあなたのもとに行って燔祭を供え、酬恩祭を捧げます。しかし、あなたがなすべき事を伝えますので、私がやって来るまでの 7日間、待っていなければなりません 」と。
サウル
が背を返して
サムエル
を離れると、神は
サウル
の心を変え、そして、あらゆるサインがその日のうちに起きたのである。
さて、
サムエル
はミツパの 主 の前にイスラエルの人々を召喚して言った。
「 イスラエルの神、主 はこう仰せられる。
我、イスラエルを導きてエジプトから出し
そなたらをエジプト人の手、
及び、すべて そなたらを虐ぐる国人の手より救ひ出せり
然るに、そなたら 己を患難と難苦のうちより救ひ出ひ出したる そなたらの神を棄て
かつ、否、我らに王を立てよ、と言へり
この故に、今、そなたらの支派と群に従いて、主 の前に出よ
と 」。
こうして
サムエル
がイスラエルの全ての部族を集めた時、ベニヤミン族が、くじに当った。そうして、ベニヤミンの部族を氏族ごとに呼び寄せた時、 マテリ
/Matri/
の氏族が選ばれた。ついに
キシ
の子
サウル
が、くじに当ったのである。しかし、人々が彼を探すものの、見つからなかった。
そこで彼らは 主 に尋ねた。
「 その者は、既にここに来ているのですか?」と。
主 は言われた。
見よ、彼は行李の間に隠くる
彼らが走って行って彼をそこから連れて来、彼が民の中に立つと、彼は他の誰よりも一頭分 背が高かった。
サムエル
は皆々に言った。
「 主 が選ばれた方をご覧ください。民の中に彼のような人は居ないではありませんか 」
そうして、人々は「 王様 万歳!」と叫んだのである。
サムエル
は王国の権利と義務を人々に説明し、それを書き記して 主 の前に保管した。そうして
サムエル
はすべての人々を自分の家に帰らせた。
サウル
もまた、神にその心を動かされた勇士たちを伴って ギベア
[Gibeah]
にある自分の家に帰った。しかし、何人かの不埒な者たちは「この男に 俺たちを救えるもんか」と言って、彼を軽んじ 贈り物もしなかった。しかし、
サウル
は何も言わなかった。
[サムエル記上 10章]
アンモン人
/Ammonite/
である
ナハシ
(Nahash) が ヤベシ・ギレアデ
[Jabesh Gilead]
に攻め込んだ。ヤベシの人々は傘下に入ることで円満な解決を求めたが、
ナハシ
は「ヤベシの人々の右目をえぐるぞ」と強硬姿勢であった。
ヤベシの長老たちはイスラエル内で援助を求めたところ、これを聞いた
サウル
翌日、3つの部隊をもってアンモン人を攻め、殲滅したのである。
人々は
サムエル
に言った。
「 先日『サウル殿に我々を治められようか』と言ってたのは誰ですか? その者たちを引き出してください。そいつらを殺してやります 」と。
しかし、
サウル

「 今日、主 がイスラエルを救われたのだ。今日は人を殺してはならぬ 」と言った。
そこで、
サムエル
は人々に告げた。
「 さあ、ギルガルへ行って、そこで王国を一新しようではないか 」と。そこで、人々は皆、ギルガルへ行き、そこにおいて 主 の前で
サウル
を王とし、皆で大いに祝った。
[サムエル記上 11章]
サムエル
は全イスラエルに向って言った。
「 私は、あなた方が求めたことすべてを聞いて、あなた方の上に王を立てた。今、あなた方にはリーダーとしての王がある。私といえば、年老いて髪は白くなり、私の子らもあなた方と共にいる。私は若い時から今日まで、あなた方の前に歩んできた。
私はここにある。主 と、その油がそそがれた者の前にて、私をテストするがよい。
 私が、誰かの牛を取り上げたことがあったろうか?
 私が、誰かのロバを取り上げたことがあったろうか?
 私が、誰かを欺いたことがあったろうか?
 私が、誰かをしいたげたことがあったろうか?
 私が、誰かから賄賂をもらって、何かを見逃してやったことがあったろうか?
もし、私がそのような事をしたことがあったのであれば、償いをしよう 」
「 あなたは、吾々を欺むかれたことも、しいたげられたこともありまっせん。人々の手から何かを取り上げられたこともありませんでしたです、はい 」と、彼らは答えた。
サムエル
は彼らに言った。
「 あなた方が、私の手のうちに、なんの不正をも見い出さなかったことについて、本日、主 が証人であり、その油を注がれた方も証人でありますな 」
「 証人です 」と彼らは言った。
サムエル
は人々に言った。
「 モーセ と アロン を立てて、あなた方の先祖をエジプトの地から導き出されたのは 主 である。さぁ、お立ちなさい。主 が、あなた方とあなた方の先祖に行われた全ての救いの御業について、主 の前にて、あなた方にお聞かせしよう。
ヤコブ がエジプトに移動し、その後、あなた方の先祖が 主 に助けを求めると、主 は モーセ と アロン とを遣わされて、あなた方の先祖をエジプトから導き出して、この地に住まわせられた。ところが、先祖の人たちが神である 主 を忘れると、主 は敵方であるハツォル軍の司令官の
シセラ
(Sisera) の手に、また、ペリシテ人、モアブ王の手に彼らを売り渡されてしまった。
彼らは 主 に呼ばわって言った。
『 私たちは罪を犯しました。主 を捨て、バアルとアシュトレトに仕えてしまいました。今、敵の手から救い出してくださいまし。私たちは、あなた様にに仕えます 』と。
主 は
エルバアル
(Jerub-Baal)、
バラク
(Barak)、
エフタ
(Jephthah)、
サムエル
(Samuel) を遣わされて、あなた方を周囲の敵の手から救い出された。なので、あなた方は安心して住むことができたのである。
ところが、アンモン王の
ナハシ
が攻めてくるのを見るや、あなた方は私に
『 いいや、吾々を治める王が欲しいんだ 』と言うた - あなた方の神である 主 が王であられるのに、である。今、ここに、あなた方が選んだ、あなた方が私に求めた王がある。見よ、主 はあなた方の上に王を立てられたのだ。 もし、あなた方が 主 を恐れ、主 に仕えて、その声に聞き従い、主 の戒めに背かなければ、そして、あなた方と、あなた方を治める王も、共に神である 主 に従うならば、うん、それで善ろしい!
しかし、あなた方が 主 の声に従わず、主 の戒めに背くならば、主 の手が、あなた方の祖先に降りたように、あなた方に下るであろう。それゆえ、今、あなた方は立って、主 が、あなた方の目の前で行われる、この大いなる御業を見るがよい。
今、小麦刈りの時期ではないか。私は 主 に呼ばわり、雷と雨を下していただこう。あなた方は王を求めて、主 の前に犯した罪が、いかに大きい事であったかを悟るであろう 」
そして
サムエル
が 主 に呼ばわると、主 はその日、雷と雨を下された。民は皆、主 とサムエルとを非常に恐れた。民は皆、
サムエル
に頼んだ。
「 しもべどものために、あなたの神、主 に、吾々が死なないよう祈ってください。私どもは諸々の罪の上に、さらに王を求めるという悪を加えてしまったのでありました 」
サムエル
は答えて言った。
「 恐れることはない。あなた方は、このような悪を行ったが、されど、主 に付き従い、心を尽くして 主 に仕えるのじゃ。むなしい物を追って、そこへ行ってはならぬぞ。それは、むなしい物ゆえに、あなた方を助けることも救うこともできないのだ。主は、ご自身の大いなる名のゆえに、自らの民を拒否されることはない。主 が、あなた方を自分の民とすることを良しとされておられるのだからの。
私自身はどうかというと、あなた方のために祈ることを止めて 主 に対して罪を犯すようなことは、けっして無い。また、良き正しい道を、あなた方に教えるであろう。あなた方は、まがうことなく、主 を畏れ、心を尽くして、誠実に 主 に仕えよ。主 が、あなた方のために、いかに偉大な事をなされたかを考えなされ。
されど、あなた方が悪を行うことに固執するのならば、あなた方も、あなた方の王も、共に滅ぼされるであろうよ 」
[サムエル記上 12章]
サウル
が王位に着いたのは 30歳の時であり、2年間 イスラエルを治めた。
サウル
は 3,000の兵を集めてペリシテ軍の攻撃に備えた。ペリシテ側も大軍を率いて対峙した。ところが、
サウル
サムエル
が指示したように 7日間待ったのだが、彼が来なかったため、
サウル
の家来たちは離散しだしたのである。なので
サウル
は心配になって燔祭を捧げた。
燔祭が終わったところで
サムエル
がやって来た。
サウル
が挨拶をしようとすると、
サムエル
は訊ねた。
「 一体、あなたは何をされたのか?」
サウル

「 民が私を離れていき、あなたは定められた日に来られません。ペリシテ人がミクマシに集まって、今にもギルガルに下ってきて襲われるかもしれない状態でありましたので、私は、まだ、主 の恵みを求めることを行っていない思い、燔祭を捧げなければならないと思ったのです 」と答えた。
サムエル
は言った。
「 あなたは愚かなことをされた。あなたは、あなたの神、主 が命じられた事を守らなかった。もし守っていたならば、主 はあなたの王国をずっとイスラエルの上に確立されたことであろう。しかし、今や、あなたの王国は長く続かない。主 は自らの御心に叶う、ある 1人の男を探し出されて、その人を民の統治者になるよう任命される。あなたが 主 の命じられた事を守らなかったからである 」
こうして サムエルは立って、ギルガルから ベニヤミン
[Benjamin]
の ギベア
[Gibeah]
に上っていった。
[サムエル記上 13章]
ある日、気がはやる
サウル
の子
ヨナタン
は、
サウル
に告げぬまま敵陣を攻撃した。
その日、
サウル
は「敵を倒すまで、夕方まで何も食べてはならない」と命じていたのだが、
ヨナタン
は、それを知らず、森の中で蜜を舐めてしまった。これを知った
サウル
は、
ヨナタン
に死を与えようとした。しかし、民が反対したので、彼は死を免れた。
[サムエル記上 14章]
サムエル
サウル
にこう言った。
「 私は 主 が、あなたに油を注いでイスラエルの王にするために遣わされた者である。故に、今、主 からのメッセージを聞きなさい。
万軍の 主 は、こう仰せられる。
我、アマレクがイスラエルになせし事
すなわち、エジプトから上れる時、その途を遮りしを顧みる
今、行きてアマレクを撃ち、その持てる物をことごとく滅し尽くし
彼らを憐むなかれ
男女・幼な子・乳飲み子・牛・羊・ラクダ・ロバを皆殺せ
と 」
そのため、
サウル
は大軍を連れて アマレク
[Amalek]
の町に向かった。ところが、彼は ケニ人
/Kenites/
に対して「イスラエルの人々がエジプトから上ってきた時、親切にしてくれた」という理由で逃がしてやってしまった。
そして、その後で、
サウル
はアマレク人を攻略するものの、生け捕った
アガグ
(Agag) 王を許してやり、さらには、良質の家畜を残したのである。
ここに 主 の言葉が
サムエル
に臨んだ。
我、サウルを王となせしを悔ゆ
そは、彼 背きて 我に従わず、我が命を行わざればなり
サムエル
は怒り、そして、夜通し、主 に呼ばわった。
翌朝早く、
サムエル
サウル
に会いに行った。しかし、ある男から
「 サウルさんは カルメル
[Carmel]
に行きましたずら。そこに自分のための記念碑を立てて、そんでぇ 戻ってからギルガルに下って行かしたんでぇ 」と聞かされる。
サムエル
サウル
のもとへ来るや、
サウル
は彼に言った。
「 主 があなたを祝福されますように! 私は 主 のご指示の通り実行いたしました 」
サムエル

「 ならば、耳に入る羊の声、私が聞く牛の声は何なのかね?」と聞くと、
サウル

「 兵たちがアマレクから引いてきました。彼らは、あなたの神、主 に生贄を捧げるために、最良の羊と牛を残したのです。しかし、その他は全て滅ぼしまして、え~ 」と答えるや、
「 あぁ、もう止めい!
 昨夜、主 が私に言われたことを教えてやる 」と
サムエル
は言った。
これに
サウル

「 教えてください 」と答えた。
サムエル
は言った。
「 たとい、自分自身の目には小さい者であったとして、今や、あなたはイスラエル諸部族の長ではないか? 主 はあなたに油を注いでイスラエルの王とされた。そして、主 はあなたにミッションをお与えになられた。
往きて悪人なるアマレク人を滅ぼし、その尽くるまで戦へ
と。なのに、どうしてあなたは 主 の声に聞き従わないのか? 戦利品に飛びかかって 主 の目に悪とされることを行うのか?」
サウル

「 いえ~、私は 主 の声に聞き従い、主 が私に与えられたミッションを受けて向いましたですよ。アマレク人を完全に壊滅させてアガグ王を連れてきたじゃないですか。ギルガルで、あなたの神である 主 に生贄を捧げるために、そのために、兵士たちは略奪品から羊と牛の中で最も良いものを取ってきたんです、、けど。。。」 と答えるも、
サムエル

「 主 はその御言葉に聞き従うのを一番喜ばれるのであって、燔祭や捧げものではない。
 聞き従うことは犠牲に勝り、耳を傾けることは雄羊の脂肪に勝る。
 背くことは占いの罪に等しく、高慢は偶像礼拝の罪に等しい。
 あなたが 主 の言葉に従わなかったので、主 も王としてのあなたを断られたのだ 」 と言った。
サウル

「 私は罪を犯しました。主 の命とあなた様の指示に背いてしまいました。民を恐れて、その声に従ったのであります。どうか、私の罪をお許しいただき、私と共に帰って 主 を拝ませてください 」 と
サムエル
に言った。
しかし、
サムエル

「 あなたと共には帰りません。あなたは 主 の言葉を拒絶した。そして、主 もイスラエルの王としてのあなたを拒絶されたのですから 」と答えたのである。
こうして
サムエル
が去ろうと身を返した時、
サウル
サムエル
のローブの裾を掴むと、それは破れてしまった。
サムエル
は彼に言った。
「 本日、主 は、あなたからイスラエルの王国を引き裂き、あなたの隣人の一人に与えられた - あなたより、より良き人に。
イスラエルの栄光であるお方は、偽ることもなく心変わりすることもない。人間ではあられないから、悔いられるということはない 」
サウル

「 私は罪を犯しました。しかし、どうか民の長老たち、およびイスラエルの前で私を立ててください。私と一緒に帰ってください。そうして、あなたの神、主 を礼拝いたします 」と言った。
そうして、
サムエル
サウル
と共に帰った。そして、
サウル
は 主 を拝んだ。
サムエル

「 私の所にアマレク王の アガグ を連れてきなさい 」と言った。
アガグ
は鎖につながれたままで連れられてきた。彼は『死の苦しみから逃れられるに違いない』と思った。
しかし、
サムエル

「 おぬしの剣が多くの女たちから子供を奪ったように、おぬしの母も子を失う女の一人となるのだ 」と言い、彼はギルガルにて 主 の前で
アガグ
を斬り裂いたのであった。
ドレ 『 アガグの死 』 19C後半
Gustave Dore " The Death of Agag "
そうして
サムエル
はラマに行き、
サウル
は故郷のギベアの家に帰った。その日以降、
サムエル
は死ぬまで二度と
サウル
に会うことはなかった。しかし
サムエル
は彼のことを悲しんだ。また、主 も
サウル
をイスラエルの王としたことを悔やまれた。
[サムエル記上 15章]
主 が
サムエル
(Samuel) に言われた。
我、既に サウル を拒否し イスラエルに王たらしめざるに
そなた、いつまで彼のために歎くや
そなたの角に膏油を満たし、行け
我、そなたを ベツレヘムの エッサイ の許に遣はさん
そは、我、その子の中に一人、王を選びたればなり
しかし、
サムエル
は言った。
どうして行けましょうか。サウル がそれを聞けば、私を殺すでしょう
主 は言われた。
そなた、一頭の若雌牛を携へ 行きて言ヘ
『 主 に生贄を捧げんために来る 』と
しかして、エッサイを生贄の場に呼べ
我、そなたが為すべき事を示さん
我、そなたに告るところの人に聖油を注ぐべし
サムエル
は 主 に言われた通りに、ベツレヘム
[Bethlehem]
へ行った。
町の長老たちは恐れながら出迎えると、
「 来られたのは、物騒なことではありませんよね?」と聞いた。
サムエル
は答えた。
「 ええ、私は 主 に生贄を捧げるために来たのです。身をお清めくだされ。私と共に生贄を捧げる場所に来てください 」
そして
サムエル
エッサイ
(Jesse) と その子たちを清めて生贄を捧げる場に招いた。
彼らが着くや、
サムエル
エリアブ
(Eliab) を見て思った。
「 主 が聖別されたのは、目の前に立つ この者に違いない 」
しかし、主 は
サムエル
に言われた。
その容貌と身長を観るなかれ
我、彼を拒否したり
主 が視るところは 人に異なり
人は外の貌を見、主 は心を観るなり
そこで
エッサイ
アビナダブ
(Abinadab) を呼んで
サムエル
の前を通らせた。しかし、彼は言った。
「 主 が選ばれたのは この者ではない 」
エッサイ
シャンマ
(Shammah) を通らせたが、
サムエル
は言った。
「 主 が選ばれたのは この者でもない 」
エッサイ
は 7人の息子たちに
サムエル
の前を通らせたのだが、
サムエル
は言った。
「 この中に、主 に選ばれた者はおらぬ 」
なので、彼は
サムエル
に聞いた。
「 これで、あなたの息子はすべてか?」
エッサイ
は答えた。
「 まだ、一番 末の子がおります。羊の番をしております 」
サムエル
は言った。
「 彼を連れてこさせなさい。彼が来るまで我々は食卓に着かぬ 」と。
なので、人を遣って、その子を連れてこさせた。
その子は血色が良く、容姿端麗で、ハンサムな男であった。
ここに、主 が告げられた。
起って これに聖油を注げ。これ、その人なり
それで、
サムエル
は油を入れた角を取って、兄弟たちの前で彼に油を注いだ。
そうして、この日から、主 のスピリットは、この若者:
ダビデ
(David) の上に強く降り注がれるようになったのである。
サムエル
はラマ
[Ramah]
へ立って行った。
さて、主 のスピリットは
サウル
を離れ、逆に、主 から来る悪いスピリットに苦しめられるようになった。なので、家来たちは、それを退散させるために、たて琴の音を聴くように勧めた。そこで「誰か、たて琴の演奏が上手い者がおらぬか?」ということで探したところ、
エッサイ
の子、
ダビデ
に白羽の矢が立った。
ダビデ
がやって来て
サウル
に仕えるようになると、
サウル
は彼が大変気に入り、鎧を扱う者に取り立てた。
悪玉スピリットが
サウル
を襲う時、
ダビデ
が たて琴を取って演奏するや、
サウル
は気が落ち着いて楽になり、悪玉スピリットは彼を離れたのである。
[サムエル記 上 16章]
イスラエルとペリシテの戦闘状態は継続した。ペリシテ軍の
ゴリアテ
という巨人は、日々、イスラエルの戦列の前に出て来るや、挑発を繰り返した。軍に参加している兄たちに食料を持ってきた
ダビデ
は、この発言を聞くや、杖と石投げ器のみを持って
ゴリアテ
と対峙した。
ダビデ
は電光石火のごとく
ゴリアテ
に向かって走り込み、「エイッ!」と豪速球を投げつけると、石は
ゴリアテ
の額にのめり込んで、この男は、どどっーと、うつ伏せで倒れこんでしまった。そして、
ダビデ
は敵の剣を抜いて首を上げたのである。 これに、ペリシテの軍は一気に崩れ、イスラエル軍に追われた。
[サムエル記上 17章]
華々しい戦績を上げて帰って来た
ダビデ
を迎えた
ヨナタン
は、
ダビデ
に男惚れしてしまった。 続けて
ダビデ
が戦勝を上げると、女たちは
サウルは千を撃ち殺し
ダビデは万を撃ち殺した ♪
と、歌い踊って彼を褒めたたえた。これに
サウル
は非常に気分を害すると共に、自らの人望が落ちていくことに危機感を覚えた。
ダビデ
が琴を弾いている際に
サウル
は槍を取り上げて彼を刺そうとまでしたのである。
サウル
は自分の娘の
ミカル
ダビデ
に嫁がせることにした。そして、ペリシテ人との戦いの前線に向かわせて、敵と戦って戦死させようとした。ところが、
ダビデ
は連戦連勝。国内での人気はうなぎ上りとなった。
[サムエル記上 18章]
サウル
は、部下たちにも
ダビデ
を殺すよう命じた。あやうく難を逃れた彼は家に帰るや、妻の
ミカル
に言って、裏窓から外に降りて逃げ去った。
ダビデ
はラマにいる
サムエル
の元へ行って、
サウル
が自分にした事を全て彼に告げた。そして、彼らは ナヨテ
[Naioth]
に行き、そこに住んだ。
サウル
ダビデ
がラマのナヨテに居ることを知ったので、彼は
ダビデ
を捕えるよう、使者を遣わした。しかし、彼らが
サムエル
が中心となって預言者たちが預言しているところを見るや、その使者たちも預言をし出したのである。 その報告を受けた
サウル
は、次の使者を遣わすのだが、彼らもまた、預言を言い出し、3度目の使者も同様であった。
とうとう、
サウル
自身も出かけるのだが、途上、神のスピリットが彼に舞い降りるや、彼もまた、預言を言い始めた。そして、服を脱いで
サムエル
の前にて預言を行い、一昼夜、裸で倒れていた。これゆえ 人々は
「 サウルもまた、預言者の一人か 」と言った。
[サムエル記上 19章]
ダビデ
はラマのナヨテから逃げてきて
ヨナタン
と会い、「何故に サウル は自分を殺そうとするのか?」と問い詰めた。 その後、
ヨナタン
サウル
が本気で
ダビデ
を殺す気であることを確かめるや、
ダビデ
を逃がしたのであった。
[サムエル記上 20章]
ダビデ
は ノブ
[Nob]
へ行き、 司祭
アヒメレク
(Ahimelek) に会った。
ダビデ
は事の経緯は語らず「隠密の密使であるため一人で来ている」と伝えた。彼は聖別されたパンも貰い、「護身のために何か欲しい」と言うと、そこに置かれていた、かつて、彼が倒した
ゴリアテ
の剣を入手した。しかし、この時、
サウル
の しもべである
ドエグ
(Doeg) が その場に居たのである。
ダビデ
は、さらに逃げて ガテ王の
アキシ
(Achish) の所へ行った。アキシの家来たちに気づかれると、彼は身の危険を感じた。なので、彼は皆の前で 門の扉を掻きむしり、よだれを垂らして、気がふれたかのような芝居を打った。それを見た
アキシ
は、彼を追い払うよう指示したのであった。
[サムエル記上 21章]
ダビデ
はガテを離れて アドラム
[Adullam]
の洞穴、 モアブ
[Moab]
のミツパ、そして、 ハレテ
[Hereth]
の森へと移動していたが、
サウル
ダビデ
の居場所を知るや、家来たちが報告して来ないことに不満を漏らした。すると、
ドエグ
は、
ダビデ
アヒメレク
の元に来て、そこで彼は
ダビデ
を逃がしてやったと告げる。
サウル
アヒメレク
と、その一族を呼び寄せ、「何故に ダビデ を救ったのか?」と問いただした。
アヒメレク
は「事情を知らなかった」と弁明した。これに怒った
サウル
ドエグ
に、彼らを殺すよう指示する。
ドエグ
は 85人を殺し、さらにノブの町へ行って、剣をもって多くの人々、そして、家畜をも殺した。
アヒメレク
の子の 1人
アビヤタル
(Abiathar) は逃れて
ダビデ
の元に行き、彼にこの惨事を伝えた。
[サムエル記上 22章]
ケイラ
[Keilah]
の地がペリシテ人に攻められていることを聞いた
ダビデ
は出陣してペリシテと戦い、ケイラの住民を救った。この事を聞いた
サウル
は「今度こそは」と、
ダビデ
を討ちに、ケイラへ向かった。 なので、
ダビデ
は ジフ
[Ziph]
の荒野に逃げた。
追われた
ダビデ
サウル
の隊に挟み撃ちに遭いそうになった、丁度その時、
「 早くお戻りください! ペリシテ軍が国に侵攻しております 」という伝令が届いた。そのため、
サウル
は追うことを止めて帰還したのである。
[サムエル記上 23章]
ペリシテとの戦いがひと段落付くと
サウル
は、再び、3,000人を引き連れて
ダビデ
を追いに行った。途中、便意をもよおした
サウル
は、近くの洞穴の中に入って うんこをし始めたのだが、実は、その奥に
ダビデ
たちが隠れていたのである。彼の周りの者たちは千載一遇のチャンスと殺害を勧めたのだが、彼は、しゃがんでいる
サウル
の後ろに そっと近づくや、こっそりと彼の上着の裾を切り取った。
すっきりした
サウル
が洞穴から隊に戻ろうとすると、
ダビデ
も出て、後ろから彼を呼び止めた。
「 主 が油を注がれた方に手は出さない。この上着の裾を見てくだされ 」と言った。自分が殺されなかったことに
サウル
は感じ入り、
ダビデ
に詫びたのであった。
[サムエル記上 24章]
サムエル
が死した。イスラエルの人々は集まって非常に悲しみ、ラマの家に彼を葬った。
[サムエル記上 25章]
ダビデ
が ハキラ
[Hakilah]
の丘に隠れていることを知った
サウル
は、再度 3,000人を連れて ジフ
[Ziph]
の荒野に下った。
サウル
がやって来たのを見た
ダビデ
は、夜になって
アビシャイ
(Ahimelek) と共に
サウル
の陣に向った。ぐっすり眠っている
サウル
たちを前にして、
アビシャイ
は「サウルを刺し殺すべき」と言った。しかし、
ダビデ
は「主 が油を注がれた方に手を出してはならない」と言い、
サウル
の枕元から鑓と水瓶を持ち去ったのである。
その後、またしてもや
ダビデ
に殺されなかったことを知った
サウル
は反省し詫び、そして引き揚げたのであった。
[サムエル記上 26章]
ダビデ
は、自分がいつかは
サウル
に殺されてしまうと思い、部隊を連れて、ペリシテ人の地、 ガテ の
マオク
(Maok) 王の子
アキシ
(Achish) の元へ行った。それを知った
サウル
は、もう
ダビデ
を追うことはしなかった。
アキシ
ダビデ
に チクラグ
[Ziklag]
の地を与え、そして
ダビデ
はペリシテ人の国に 1年 4ヵ月の間、住んだ。
[サムエル記上 27章]
再び、ペリシテとイスラエルの戦いが始まろうとすると、
アキシ
ダビデ
に従軍するよう命じた。
ペリシテ軍が シュネム
[Shunem]
に集結すると、
サウル
はイスラエル軍を集めて ギルボア
[Gilboa]
に陣を取るものの、彼はビビる。主 に伺いを立てるも答えを得られない。そのため、
サウル
は、先に追放していた口寄せや占い師を探し出させて
サムエル
を呼び起すよう命じた。
サムエル
が呼び出されると、
サウル
は地にひれ伏して拝した。
ベンジャミン・ウエスト 『 サウルとエンドアの占い師 』 18c 後半
ヴィクトリア・アンド・アルバート博物館
Benjamin West " Saul and the Witch of Endor "
サムエル
サウル
に言った。
何故に、私を呼び起して 煩わすのか?
サウル

「 私は非常に悩んでおります。ペリシテ人は私に向かって戦さを起し、神は私を離れておられます。もはや、預言者によっても夢によっても私にお答えになられないのです。ですから、私はどうしたら良いのか教えていただきたく、あなたをお呼びしたのです 」と答えた。
サムエル
は言った。
主 が そなたを離れ、そなたの敵となられたのに、どうしてそなたは私に問うのか?
主 は、私を通して語られた通りの事を行われたのだ。主 はそなたの手から王国を裂き離して、そなたの隣人である ダビデ に与えられた。
そなたは 主 の声に聞き従わず、主 の激しい怒りに従って、アマレクびとを撃ち滅ぼさなかった故に、主 はこの事を、この日、そなたに行われた。
主 はまたイスラエルをも、そなたと共に、ペリシテ人の手に渡されるであろう。明日は、そなたも そなたの子らも私と一緒になるであろう。
また 主 はイスラエルの軍をもペリシテ人の手に渡されるであろう。
その言葉を聞き、
サウル
は地に倒れてしまった。
[サムエル記上 28章]
さて、
アキシ
ダビデ
を連れてペリシテ軍に従軍した。ところが、ペリシテの支配者たちは 彼が ダビデであることを知るや、途中で裏切るやもしれぬと危惧して帰らせた。
[サムエル記上 29章]
ダビデ
がチクラグに戻ると、そこはアマレク人に襲われており、全員が捕虜にされていた。しかし、
ダビデ
は部隊を連れてアマレク人を追撃し、略奪されたものを全て取り返した。
[サムエル記上 30章]
ペリシテはイスラエルと戦い、イスラエルは追われて、多くがギルボア山に倒れた。
サウル
の子
ヨナタン
アビナダブ
マルキシュア
も殺された。追い詰められた
サウル
は敵に討たれることを恐れ、部下に自分を刺すように指示するも、誰も従わなかった。そのため、
サウル
は立てた剣に自らの体を伏して刺し、自殺したのであった。
[サムエル記上 31章]






更新情報:
 - Ver. 1.0:  2020年 2月 9日 公開