そもそも、当城は、深山こうこうとして、麓は歴々甍を並べ軒を継ぎ、光輝 御結構の次第、申すに足らず。西より北は、湖水漫々として、舟の出入満々て、遠浦帰帆・漁村夕照・浦々の漁火、湖の中に竹生島とて名高き島あり。また、竹島とて、峨々と聳えたる巌あり。奥の島山、長命寺観音、暁夕の鐘の声、音信
[おとず]
れて、耳に触る。海より向うは、高山比良のの獄・比叡の大嵩・如意ガ岳。
南は、里々、田畠平々、富士と喩えし三上山。東は観音寺山。麓は海道 往還引き続き、昼夜絶えずという事無し。御山の南、入江渺々として、御山下門を並べ、籟の声おびただしく、四方の景気、その数を尽し、御殿唐様を学ぶ。将軍の御館、玉石を研き、瑠璃を延べ、百官快よく、貴美を尽し、花洛を移さる。
御威光・御手柄、勝計べからず。