江戸絵画(狩野派や土佐派は除く)の「ファインバーグ・コレクション」の存在は以前から少し知ってましたが、今回、まとまった形での展覧会が江戸東京博物館で開催されます。
ロバート・ファインバーグ氏はアメリカの化学者&実業家であり、一代で江戸絵画のコレクションを蒐集した人です。海外のサイトを見ると、”Betsy and Robert Feinberg Collection ” となっていますので、奥さんと一緒に蒐集されたのでしょう。欧米ではコレクション名に夫婦名を付けることが多いです。
今回の展覧会の構成は次の通り。
・第1章: 琳派 - 俵屋宗達、尾形光琳、酒井抱一、鈴木其一 等
・第2章: 文人画 - 池大雅、与謝蕪村、谷文晁 等
・第3章: 円山四条派 - 円山応挙、森狙仙 等
・第4章: 奇想派 - 伊藤若冲、曾我蕭白 等
・第5章: 浮世絵 - 菱川師宣、葛飾北斎 等
ちょうど、東北では、仙台市博物館等でプライス・コレクションの「若冲が来てくれました」展が開催されていますが、プライス氏もファインバーグ氏も、共にアメリカの現代コレクターで、江戸絵画中心の蒐集ということでも共通しているでしょう。
このあたりの現代アメリカ日本画コレクターについては、10年前にクラーク財団日本美術コレクションが日本に来た時に、千葉市美術館のパンフに解説記事があり、幸い PDFがアップしてありますので、リンクしておきます。
千葉市美術館ニュース「C’n」25号 2003(平成15)年1月15日発行
at 江戸東京博物館
前期: 5.21- 6.16 / 後期: 6.18- 7.15
混んでました。訪問の時間帯や会場の広さの違いによるものもあるでしょうが、フランシス・ベーコン展の3倍くらい多かったように感じました。まぁ、鑑賞者の年代の違いも大きいのですが、ココが、よく起きるネットとネット外との認知や盛上がりの違いのギャップでもあります。
さて、いつもの通り「足が止まった作品」のピックアップです。どうした訳か、今回は「しばらく足が止まった作品」というのがありませんでした。前回、秋の再興院展で気になっていた作者で出品が無かったのが多かったことも残念です。
それと、若い人の作品では、アニメと近い感じの作品が増えたように感じました。
○ すこし足が止まった作品 (敬称略)
『 木之花佐久夜毘売 』 高橋 天山
『 ねがい星 』 宮北 千織
『 夢記 』 井手 康人
『 カモフラージュ 』 水野淳子
『 アタラクシアの窓 』 大久保 智睦
『 春の水巴 』 北田 克己
『 捨身飼鯉図 』 中尾泰斗
at 三越日本橋本店
東京展: 2013. 3.27 – 4. 8
・名古屋松坂屋美術館:4.13 – 4.21
・秋田アトリオン: 4.24 – 5. 6
・仙台三越: 5.14 – 5.19
・JR大阪三越伊勢丹: 5.22 – 5.27
・京都髙島屋: 5.29 – 6.10
・倉敷市立美術館: 6.26 – 7. 7
・福岡三越: 7.30 – 8. 4
・一畑百貨店松江: 8.27 – 9. 1
・そごう神戸店: 9. 4 – 9. 9
・新潟三越: 9.14 – 9.23
前回、再興第97回 院展 の感想
3年前に Google アートプロジェクトが開始され、歓迎はするものの、「高精度の画像でゴッホの筆の跡を見る人が何人いるんだろう?」という、どちらかというとネガティブな感想が先に立ったのですが、その後、日本の美術館も徐々に参加されて、少し、状況が変わってきたかと思います。
現在、日本で参加しているのは、次の 9の美術館
・国立西洋美術館
・東京国立博物館
・ブリヂストン美術館
・山種美術館
・サントリー美術館
・MOA美術館
・大阪市立美術館
・大原美術館
・足立美術館
これまでに、自サイトで所蔵作品の画像を積極的に公開されてきた館においては、大きな変わりでは無いですが、そうでなかった館での公開開始は意義が大きいでしょう。たとえば、山種美術館での 小林古径 の 『 清姫 』。8点の作品が全点掲載されています!
ただ、順番が把握しにくく、見に来た人は、どれがどれだか判らないのでは無いかと思えます。
美術館別 - 作家別 - 順番が判る作品別のインデックスが必要でしょう。
個別の作品を表示して、右側にマウスを持って来て「他の作品を見る」の「芸術家」をクリックすると、一覧に出ていない作品も登録されていることが判るようになっていますので、一覧よりも、たくさん登録されていることがあります。
あと、縦長の作品の場合、下の線がフッターの枠とひっついており、これはページ・デザイン的に、よろしくないですね。
作品詳細に日本語表記はあるものの、基本は英語。これも、日本国内での利用上は、どうかな? という感じです。
しかし、一番驚きなのは、足立美術館の取り組み。現在の現役画家たちの作品も、たくさん掲載されているのです。「Google を通せば、これもアリなの?」 というところですが、あれこれ難しい問題もあるのでしょうけれど、嬉しいですね。
さて、今後、どういう風に広がっていくでしょうか。楽しみです。
※ 館サイトに掲載されていない作品で、Google アートプロジェクトに登録される作品は、当サイト内の画家別ページの作品に ◆印でリンク設定をしていく予定です(現在、日本画は完)。合わせてご利用ください。
まず、1作目から「ベーコン作品はガラスを通して観ること」との説明がありました。本人が、そう希望していたとのことです。過去に、この、東京国立近代美術館や横浜美術館等での個別の所蔵作品展示にてガラスがしてあったかな? と記憶に定かでないのですが、ともかく、その趣旨から、今回、全点ガラスの中に展示してあります。
ガラスがあると自分や他人の姿、照明の光などが反射して見づらいな、という感があるのですが、ロスコ同様、それは作品と「対話」させたい意図なのだろうと思いつつ足を進めます。
しかし、一点ずつ観て行くに、ガラスに映る自分の姿と作品が重なることによって、だんだんと「お前も(おめーも に近い)、こうなるのだ。実はこうだろ?」とか問い詰められているかのような感覚に陥ってしまいました。特に消えゆく肖像画シリーズの前では恐怖心すら感じたほどです。存分に「対話」させられましたね。これが「精神神経への攻撃」の一つ?
それから、後期の作品での潰れた顔やひねったり曲げたりした体型ですが、これらは粘土細工が先にあったものではないかと思っていたのですが、そういう解説はありませんでした。本人自身がそう言っていた「ごみ溜め」のアトリエの写真や映像にも、そういう作業台があるように見あたりません。となると、彼は、すべて頭の中で再構成して表現したのでしょうか。それは、驚きです。
人体表現については、会場ではX線による骨格把握が出来るようになったことが影響しているとの解説でしたが、図録によるとドガにも影響を受けているとのこと。確かにドガの晩年のバスタブ・シリーズには、「背骨の最上部は皮膚から突き出さんばかり」の極端に不自然な体型の表現があり、これがベースにあったとは新たな発見です。
ドガ 『 浴後、うなじを拭く女 』 1898 オルセー美術館
大サイズ/購入 オールポスターズ
ところで、所蔵が豊富な(おそらく一番多いのではないかと思うのですが)、イギリスのテート・モダンから1点だけしか来ていなかったのは意外でした(→ こちらが テート・モダンHPのベーコン作品一覧ページ )。テートからは、秋にターナー作品が大挙して来ますが、ターナー展はオーストラリアも回ってきますので、高額な保険金なども計算すると、世界規模の巡回展でないと成立できないのかもしれません。
ともかく、国内には所蔵が少なく、昨今のオークションでの超高額落札状況を見るに、今後も国内で取得される可能性は低いベーコン作品。生涯の作品全般を一挙に把握できる大規模回顧展です。それぞれに、直接会って「対話」をされること、お勧めです。
at 東京国立近代美術館
2013. 3. 8 – 5.26
図録 2,500円
at 豊田市美術館
2013. 6. 8 – 9. 1
>> ベーコン作品一覧のページ
ニューオータニ美術館で開催中の「知られざるプライベートコレクション ジャパンビューティ 描かれた日本美人」展 、広く複数の個人蔵作品を集めた美人画展覧会かと思っていたのですが、浮世絵コレクターの中右瑛 氏によって形成された朝比奈文庫というところの所蔵作品でした(上村松園の2点のみ、他の個人蔵)。
清方、松園の、いわゆる美人画大御所の他にも、なかなかお目にかかれない、山川秀峰や池田輝方に蕉園、中村大三郎、北野恒富等、さらには、伊藤小坡、栗原玉葉、松浦舞雪(後期)等々の作品が並びます。
そういう中、一つ「おやっ?」と思ったものに、九條武子夫人(号は松契)の作品がありました。
九條武子という方は京都西本願寺法主の娘で、歌人として、また、京都女子高等専門学校(現在の京都女子大)を設立した教育者として、さらには、関東大震災後の復興の社会活動にも尽力した人です。ウィキペディア などにも、そういう記述になっています。
ところが、アートファンのみなさんは、この写真を見られた方も多いのでは無いかと思います。左側で上村松園 が指導している、この右の人が九条武子夫人。この古い白黒の小さな写真だけでも相当な美人であることが伺えますが、事実「大正の三大美人」とされた人で、日本人離れした美人という感じですね。
松園の『 月蝕の宵 』 1916 (T05) という作品のモデルにもなっています。
この写真を見たとき、失礼ながら美人公家さんの手習いだろうか? と思ったのですが、号ももらって作品を作成されていたのですね。今回、彼女の作品に初めて逢えました。
九條武子 『 月下逍遥 』 (前期のみ展示)
作品自体は、確かに松園を引き継ぐものでしょうが、線を含めて全体が弱いかな、という感じです。(もっとも、強すぎる松園と比較したら、誰もが弱く感じるものでしょうが。。) 松園に弟子入りしたのが 1916(T05)頃で、1920(T09)頃までだったそうで、東京に出てからは先述の通り、関東大震災復興などに奔走していますので、画業に従事した期間は短かったのでしょう。
さて、山川秀峰 も、この九條武子夫人を描いています。雑誌「婦人倶楽部」の連載小説「九條武子の生涯」の挿絵を担当した後、帝展に出品され特選となった、『 大谷武子姫 』 1930(S05) という作品があります。
しかし、濃い人生を送った彼女は、昭和3年に42歳の若さで亡くなっています。美人薄命です。
at ニューオータニ美術館
前期: 3.16- 4.21 / 後期: 4.23- 5.26
図録: 2,000円
トップページで、ほぼ毎日掲載しております「今日のニュース 」、ツイートのまとめみたいに、週程度でまとめておこうと思います。
3.15 先日、日テレで放映された、たけしのルーヴル美術館紹介番組で出てきたルーカス・クラナッハの『 三美神 』 について。
3.14 今週の Happy Birthday! は、近藤浩一路 1884(M17). 3.20生まれ。墨画の田園風景、良いですね。
3.13 現在、シカゴ美術館では「 ピカソとシカゴ展 」が開催中(2.20- 5.12)ですが、ピカソ作品を紹介する動画 が YouTubeにアップされています。
3.12 東京・日本橋タカシマヤで開催中の「杉山寧 展 」に「カッパドキア・シリーズ」が数点出品されています。美術館で逢える機会が少ないので貴重ですね。
3.11 5月に江戸東京博物館 で開催のファインバーグ・コレクション展、正式名は “Betsy and Robert Feinberg Collection”。欧米では夫婦名が多いですね。
3.10 既に設定していますが、今週の Happy Birthday! は 中村岳陵 。後ろのご婦人がピンクの着物なので、今日みたいな春先の暖かい日なんでしょうね。
3. 9 いよいよ、ベーコン展始まりましたね(東京国立近代美術館)。どちらかというと、怖い・キモイ系で玄人肌人気の ベーコン 、さて、どこまで盛り上がるでしょう?
3. 8 国立西洋美術館の所蔵品展で、今年度新収蔵となったセザンヌの作品 が展示してあります。ラファエロ展と一緒にお勧めです。
3. 7 2013年2月の高額落札アート作品トップ10 をブログにアップしました。話題になったピカソやベーコンなどの高額落札の他に、モディリアーニやモネも必見。
先日、日テレで、ビートたけしがルーブル美術館を紹介する番組があったそうですね。その中で、クラナッハの『 三美神 』を4億円で取得したという紹介があったようです。
ようです、というのは、その番組自体は見ていないのですが、当サイトに、そういったキーワードでアクセスする人が急増したからです。2年以上前に、この絵画が取得される経緯の記事 を書いたことがあり、それが数年を経て検索エンジン経由でヒットしたのです。なんとも不思議な感じもします。
番組内で紹介があったか否か判りませんが、その購入時、ルーヴルには資金が足りなくて、ネットで募金したら、1億円があっさりと集まってしまったという経緯がありました。
日テレというか読売新聞系列というか、今後、数年に渡って国内でルーヴル美術館展を開催する計画があるそうで、この『 三美神 』も来てくれたら嬉しいですね。
現在、シカゴ美術館で「ピカソとシカゴ展」が開催されています。
シカゴ美術館は、100年前にアメリカで初めてピカソの大規模企画展を開催した美術館であり、1世紀のお付き合いあるとのことです。
当時の写真も併せてピカソ作品を紹介する動画が YouTubeにアップされていますので、ここに貼り付けておきます。
VIDEO
日本橋タカシマヤで開催中の、悠久なる刻を求めて「杉山寧 展」 に行ってきました。
杉山寧作品というと、
・灼熱の暑さの中で悠久の刻が止まったかのようなエジプト・シリーズ
・自然の中で大胆なポーズの細密画的ヌード・シリーズ
・植物等を題材にした静謐な感の抽象画シリーズ
・ギリシャの彫刻や仏像の模写シリーズ
・和菓子の鯉が水の中で動いているような止まっているような鯉シリーズ
などなど、いくつかのシリーズがありますが、今回、トルコの「カッパドキア・シリーズ」なるものに初めて逢うことができました。まさに奇岩。イヴ・タンギー の作品の中に出てきても違和感が無いような不可思議な奇岩であり、異様な迫力をもっています。
もともと個人蔵の多い作家ですが、ここで出展されていた「カッパドキア・シリーズ」も、富山県立近代美術館以外はすべて個人蔵でしたので、今回のような回顧展でなければ逢える機会は少ない可能性が高いです。
2013. 3. 6 – 3.25
at 東京・日本橋タカシマヤ
同様の出品か内容は不明ですが、10月に横浜タカシマヤでも「杉山寧展」が開催されるらしいです。
※ 杉山寧作品一覧のページ
今回の国立西洋美術館訪問は、もちろん、今話題の企画展である「ラファエロ展」ですが(その感想は後日アップします)、もう一つの楽しみ、今年度に新たに収蔵され、先日から展示が始まったセザンヌの作品に会うことでした。
『 ポントワーズの橋と堰 』 1881 59.1*72.1
セザンヌの風景画作品の中でも、川を扱ったものはあまりありませんので、珍しい作品です。
さて、これは、セザンヌ先生のどういう謎解きでしょう?
川の流れは緩やかで、これは上流から下流を臨んだものなのか、もしくは逆なのか、一見分かりません。堰に溜まっている水面に橋の姿が反映して堰のラインと橋のラインとが重なっているようでもあり、橋が2倍の大きさになっているようにも見えます。
しかし、よく見ると、橋から手前に堰があり、そこまでの流れがストップしているようです。そして、堰から、また手前に向かって、ゆっくりと水が流れているようです。つまり、下流から上流にある橋を見ている構図ではないでしょうか。
なぜか右下の草木がぼかして描いてあり、水に溶け込んでいるようにも見せてあるのが謎です。これを描かないと川幅が広くなってしまうので、一見で上流・下流の構図が判ってしまうのかもしれません。それを避けるための細工のようにも思えます。
また一作、良い作品が収蔵されましたね。^^
※ セザンヌ作品一覧ページ
既に、ピカソやベーコンなどの高額落札がニュースになってましたが、モディリアーニもあったそうです。今回はなじみの深いもの多いでしょう。
1. ピカソ ” Femme assise près d’une fenêtre “ 4,477万ドル
2. モディリアーニ ” Jeanne Hébuterne (Au chapeau) “ 4,213万ドル
3. ベーコン ” Three Studies for a Self-Portrait (3 works)” 2,154万ドル
4. ルノワール ” L’ombrelle “ 1,514万ドル
5. バスキア ” Museum Security (Broadway Meltdown)” 1,451万ドル
6. モネ ” Nymphéas avec reflets de hautes herbes “ 1,409万ドル
7. モネ ” Le Givre à Giverny “ 1,374万ドル
8. ミロ ” Femme rêvant de l’évasion “ 1,321万ドル
9. ゲルハルト・リヒター ” Abstraktes Bild “ 1,311万ドル
9. ゲルハルト・リヒター ” Abstraktes Bild “ 1,277万ドル
このモディリアーニのジャンヌ・エビュテルヌ、良いですね。モネの睡蓮も。どこかの美術館か富豪さんが取得して、いつぞや日本で展覧会に出品されること願います。と、オークション情報を見るたびに思います。^^;
→ artnet の一覧はこちら (画像が見られますが、一月で更新されます)
これまで、日本語版・英語版の同居型にしていたトップページを分割し、新たに 英語版のページ を立てました。英語版のページにはフェイスブックページ ” Art from Japan ” の窓を掲載しています。
SNS において言語の扱いは悩ましいところで、混在しても良いといえば良いのですが、あれこれ試行してみた結果、個人的には「混ぜない方が佳い」、との結論に達しました。ツイッター、フェイスブック、それぞれ2本ずつ立てて言語を分けて使うということも出来なくは無いのですが、さすがに、それらの更新までは手が回りませんし、混乱します。^^;
ですので、ツイッターは日本語で、フェイスブックは英語でという使い方を基本にしています。
あと、このブログの英語版をどうするか? という課題も残っているのですが、コメントという意味ではフェイスブックで十分であり、今どき個別のブログに投稿ということも無いだろうと思いますので、少なくとも当面は、日本語のみで良いだろうと考えています。