アート・ニュース 2011 - Vol.06

  ( 9/1 - 12/31 )


2011.12.30(金):

 東日本大震災チャリティー企画 日本赤十字社所蔵アート 展 (予告)


新春、損保ジャパン東郷青児美術館にて、日本赤十字社の所蔵アート作品展覧会が開催されます。

日本赤十字社は西南戦争で負傷した人を、敵味方関係なく助けるために活動が始まったものですが、創立100周年の際に、東郷青児のアクションをきっかけに数多くのアート作品の寄贈が集まり、現在、100点あまりのコレクションになっているとのことです。


パンフレットの表紙になっている、小磯良平の『 集い 』 1977(S52) は、今年夏にホテルオークラ東京にて開催された「文化勲章受賞作家の競演」展でも出展されており、それが「日本赤十字社所蔵」であることは認識しておりましたが、果たして、日本赤十字社に、どういった作品がどれだけ所蔵があるのかは判りませんでした。

それが、今回、まとまってコレクション全体を鑑賞できるということですので、とても楽しみです。

さらには、今回の展覧会は東日本大震災チャリティー企画であり、観覧料は復興のための義援金として日赤へ寄付されるそうです。

二つの意味でも、是非、出かけたいですね。


■ 東日本大震災チャリティー企画 日本赤十字社所蔵アート 展
   会場: 損保ジャパン東郷青児美術館 (地図)
   期間: 2012. 1. 7 - 2.19
   URL: http://www.sompo-japan.co.jp/museum/exevit/index.html





2011.12.26(月):

ベン・シャーン クロスメディア・アーティスト


ベン・シャーン というと北米の美術館に結構作品所蔵がある作家で、大恐慌時代の暗い作品が印象的です。 しかし、その分、『今の世相がそういう方向に行ってもらいたくないな』という気持ちが先に立って、次は? 次は? と、この人の作品を追っかける気にならなかったというのが、個人的なこれまでの感想です。

それが、今回、神奈川県立近代美術館・葉山館にて クロスメディア・アーティスト - 写真,絵画,グラフィック・アート - という切り口で展覧会があるというので、知らなかった多彩な面があるのだろうと興味を持ちました。

「私は社会的な画家あるいは写真家である。・・・・私には写真と絵画の区別などどうでもいい。どちらにしてもピクチャーではないか」 という自らの発言が彼の特徴を、よく表しています。

展覧会では、彼の絵画が、自ら撮影した、もしくは収集した写真を素材としていたことが判るよう、並べて展示してあります。

ラディカルの人。不当な裁判に対する異議、労働者階級の支援、ナチによるユダヤ人虐待への抵抗の絵画やポスター等々、石版画工としての経歴による細い線を持つ絵画が、多くの「痛み」と「悲しみ」と「怒り」を発するかのように表現されています。

出展されている、神奈川県立近代美術館所蔵の作品は「麻生三郎コレクション」とあります。なるほど、彼の悲しみの絵画は、ベン・シャーンにもあったのですね。

そして、最後に第五福竜丸の被爆を題材に取り上げた作品。もともと福島県立美術館には、ベン・シャーン作品の所蔵が多いのですが、今回、数多く出展されています。この同期は、とっても悲しいです。また、この展覧会自体が、6月に福島県立美術館へ巡回とあります。

今、進行中の「フクシマ」という悲劇に対して、ベン・シャーンなら、どう取り組んだであろうか? そして、現代を生きる私たちは、どうあるべきなのか? そういうことを、この展覧会は問おうとしているのかもしれません。

訪館前の当初の予想と反し、鑑賞後、そういう重たい気持ちで、冷たい冬の夕暮れの葉山の海を後にしたのでした。


■ ベン・シャーン クロスメディア・アーティスト 展
   会場: 神奈川県立近代美術館 葉山(地図)
   期間: 2011.12. 3 - 2012.1.29
   URL: http://www.benshahn2011-12exh.info/

   2012. 2.11 - 3.25: 名古屋市美術館
   2012. 4. 8 - 5.20: 岡山県立美術館
   2012. 6. 3 - 7.16: 福島県立美術館





2011.12.20(火):

ウィキペディア 杉山寧ページからリンク受ける

1週間ほど前から、ウィキペディア 杉山寧のページからリンクの設定いただいたようです。ありがたいことです。→ こちらの最後のところ

この方の作品、作品名の漢字が難しくてPCで変換できなものがたくさんなんです。なので、掲載したくてもできないのが残念。

また、個人的には、草冠に必と書いた、羊と羊飼いの少女を描いた作品が、とても良いです。


 ※ 杉山寧のページ






2011.12.18(日):

Leeum サムスン美術館 訪問記


先日、韓国ソウルにある Leeum サムスン美術館へ行ってきましたので、そのことをまとめておきます。事前知識は、ロスコ 作品が数点あるらしいということ、エントランスで ルイーズ・ブルジョワ の「蜘蛛」が出迎えてくれるのだろうということのみ。

通常は事前にホームページで情報入手できるのですが、ココは、どうした訳かDRMのチェックが掛けられており、その設定手順がハングル語でのみの説明なのでサイトの中へ進めません。なので、何があるかは行ってみてのお楽しみだったのです。


地下鉄6号線(茶色)の 631「漢江鎮 ( Hangangjin )」駅で降りて、歩いて5分ぐらいの距離。緩い坂道を登っていくと、「蜘蛛」は出迎えてくれずに右手に入り口が。「蜘蛛」は、このエントランスの右側の屋上に設置されているのでした。

さて、入り口を入るや、まずは、村上隆氏の『 JellyFish Eyes 』 がお出迎え(へぇ!)。チケットを購入して、右手が "MUSEUM2" で現代美術、左手が "MUSEUM1" で韓国伝統芸術の館。そして、もう一つの建物が "サムスン児童教育文化センター" であり、企画展が開催されているとあるので、まずは、現代美術の "MUSEUM2" へ。

エントランスにあるのが アニッシュ・カプーア氏の赤い丸い作品で、エレベーター・ホールには 奈良美智氏の作品が設置されてます。
エレベーターで2階へ上がると、扉が開いてすぐ眼前に現れるのがロスコの3作! 「小ロスコ・ルーム」になってます。

次に、デ・クーニングサイ・トォンブリー 等の作品が続くと、この美術館、ただものならぬことに気づくわけです。

さらには、イヴ・クラインフランシス・ベーコンジャコメッティフランク・ステラ氏,ゲルハルト・リヒター氏,マシュー・バーニー氏 等々の力作が。。

デミアン・ハースト氏の『 Dance of Death 』は、縦2.4メートル×横8.7メートルの奥行きの狭い薬カプセル置きになっていて、そこに数百個の薬が並べて置かれた作品。これはインパクトありました。ぐっぐっとくる圧巻です。

1階の一部と3階は韓国近現代アートが展示されています。恥ずかしながら、リ・ウーファン氏,イ・ブル氏,ナムジュン・パイク氏以外不勉強なため、背景が解らず残念。きちんと勉強して、また来ないといけないな、と思いました。


続いて、韓国伝統芸術の館の MUSEUM1 へ。エレベーターで4階まで上がり、スイスの建築家 マリオ・ボッタ氏設計による白磁のような美しい螺旋階段を下りて次の階へ移動します。

おそらくは国宝級の作品群なのでしょう。青磁、白磁、仏像、絵画、経典等々が、博物館的に展示されています。


そして、3番目のスペースは企画展用の建物。IT企業のサムスンだからでしょうか、長尺の風俗絵巻物が現物展示と共に、デジタル展示してありました。その画面はスマホのように指で位置の移動や拡大・縮小が可能であり、詳細の鑑賞や、現物展示しきれない巻物の全体を鑑賞することも可能になっているのです。これは、良いアイディアだと思いました。


最後に、館を出て「蜘蛛」の写真を撮って Good bye。

これだけ充実していて、入館料は 13,000ウォン=1,000円ぐらい。 明洞(ミョンドン)からも近い距離ですから、ソウルへ旅行される際には、是非、お薦めです。

 ※ Leeum サムスン美術館のページ





2011.12.13(火):

Leeum サムスン美術館のページをアップ

韓国、サムスン電子によるコレクションのサムスン美術館ページを追加しました。ロスコの作品所蔵があることは以前から知っていましたが、公式ホームページにアクセスすると何やら追加のソフトウェア・インストールが必要であり、また、その設定手順がハングル語のみの説明あって中身が知れずにいたのですが、行って観てみてびっくり!

数こそ多量というわけではないものの、世界のアーティスト、珠玉の作品揃いです。すぐお隣に、こんなに充実した現代アート作品のコレクションがあるとは、知らず。。

さらには、現代韓国アーティスト作品も集められており、こちらは勉強不足なため理解が追いつかず。きちんと知識仕入れて、また行きたいです。


 ※ Leeum サムスン美術館のページ






2011.11.30(水):

ぬぐ絵画 - 日本のヌード 1880-1945 展


日本における裸体描写の発展経緯を追いかけるという、多少、学術的なテーマの展覧会。図録も内容の濃い解説となっている。

黒田清輝の『 智・感・情 』 1899 (M32) に始まる、多分に型にはまったものかと最初思ったのだが、岩手から萬鉄五郎作品が結構出展されるというので、興味を持った。

左の通りパンフレットも凝っていて、「情」の女性が縦半分に隠されるように、折り曲げられている。


さて、萬鉄五郎の

 『 裸体美人 』 1912 (M45)
 『 もたれて立つ人 』 1917 (T06)

は共に、この時期における特筆すべき作品であると思うが、今回、その構想段階におけるデッサンが同時展示されており、それぞれの模索の経緯が知れる。

前者が、黒田清輝の『 野辺 』 1907 (M40) に対抗するものであること、また、立像に近い描写にしたという解説には、少し意外性をもって新たな発見であった。

続いて、熊谷守一のヌード作品展示と解説が続く。今回の展示会は 1945年までの期間なので、出展されているのは彼の初期のものだけであり、後期の超単純化された作品は出ていない。どうも初期の作品は、ごてごてし過ぎているのだが、最後にこの作品が出ていた。

 『 』 1943 (S18)  埼玉県立近代美術館

これは良い作品!
ボナールのような横向きの裸体で、彼の単純化への過渡期を示す秀作だろう。埼玉県立近美にあったとは知らず。お薦め。


 ※ 黒田清輝萬鉄五郎熊谷守一古賀春江小出楢重安井曽太郎


■ ぬぐ絵画 - 日本のヌード 1880-1945 展
   会場: 東京国立近代美術館 (地図)
   期間: 2011.11.15 - 2012.1.15
   URL: http://www.momat.go.jp/Honkan/Undressing_Paintings/highlight/index.html






2011.11.25(金):

フェルメールからのラブレター 展 (予告)



来年2012年はフェルメールの当たり年ということで、その一つが、今年のクリスマス・イヴ・イヴから来年のホワイト・デーまでの期間、Bunkamura にて開催される、この展覧会。パンフレットも3種類発行されている通り、フェルメールの3作品が一度にやってくる。

キャンバスの1ヶ所に釘を打ち、大工の墨壷のように、そこから紐を張って光の線を引いたというフェルメール。それぞれの作品に、その釘穴があるのか探してみよう。表面から見えないとしても、どのあたりが起点か考えてみると面白いのでは無いかと思う。

もっとも、会場は混むだろうから、あまり、じっくりと長い時間、前に立ってられないかな?

また、以前、ワシントン・ナショナル・ギャラリーの解説動画の紹介をしましたので、 こちらも、ご参照ください


■ フェルメールからのラブレター 展
   会場: Bunkamura ザ・ミュージアム(地図)
   期間: 2011.12.23 - 2012.3.14
   URL: http://vermeer-message.com/





2011.11.20(日):

神戸智行 展 - イノセント・ワールド -


いつものように展示会場の壁いっぱいを使って、グリーンのトーンの丸い石と静かな流れの無い水面に、金魚や蛙、蜻蛉に蟹と共に小さな蜥蜴が遊ぶ、詩情豊かな世界が広がる。

蛙などが登場する日本画というと、伊藤若冲や小茂田青樹を思い浮かべるが、神戸氏の作品は、それらとも違った広い空間での静止した世界が特徴だろう。

今回、佐藤美術館展示の後に、福岡の太宰府天満宮にても展示される予定で、宮に納めされる樹木の作品も出展されている。


また、ギャラリー広田美術でも併設展示されるので、こちらにも行ってみよう。

■ 神戸智行 展 - イノセント・ワールド -
   会場: 佐藤美術館
   期間: 2011.11.15 - 12.18
   URL: http://homepage3.nifty.com/sato-museum/exhibition/index.html

併設
■ 神戸智行 展 - イノセント・ワールド -
   会場: ギャラリー広田美術
   期間: 2011.12.2 - 12.18
   URL: http://www.hirota-b.co.jp/


  > 神戸智行さんの公式ホームページ





2011.11.13(日):

長谷川等伯と狩野派


日経新聞朝刊で連載中の、安部龍太郎氏による小説「等伯」。これに同期して東京・出光美術館にて開催されている、この美術展。初夏に予告が始まった時点から、小説での知識を基に、狩野派と等伯との確執を絵画を通して観られるものと期待していた。

ところが、小説の方は進みが遅く、まだ狩野永徳存命であり、「対屋事件」前。つまり予想に反して、美術展の方が先を越してしまったのである。ま、逆に後追いで小説を楽しめば良いということか。。

等伯作品出展は、

 『 竹虎図屏風 』 六曲一双  各156.0*365.0
 『 竹鶴図屏風 』 六曲一双  各156.3*362.2
 『 松に鴉・柳に白鷺図屏風 』 六曲一双  各170.5*388.6

の3点。昨年の東博での「没後400年 長谷川等伯」展にも出ていたが、『 竹虎図屏風 』 は、狩野探幽によって雪舟贋作に改竄されたものとのこと、図録に詳しい解説がある。

『 竹鶴図屏風 』は、中国の画人=牧谿の影響を強く受けて描かれたもの。没後400年展の際には数多くの作品に埋もれて、よく把握できなかったが、今回、その背景の理解が進んだ。


 ※ 長谷川等伯のページ





2011.11.11(金):

歌舞伎座所蔵作品のページをアップ

先日の「知られざる歌舞伎座の名画」展のおかげで、長年、判らなかった作品名と作成年が判りましたので、ページを立てました。

さて、新しいビルの歌舞伎座が出来たとき、どんな感じで展示されるのでしょうね。今から再会できること、楽しみにして待ちたいです。^^


 ※ 歌舞伎座 日本画一覧のページ
 ※ 歌舞伎座 日本洋画一覧のページ





2011.11.06(日):

生誕250年記念展 酒井抱一と江戸琳派の全貌


姫路市立美術館 - 千葉市美術館 - 細見美術館 巡回の、今回の大回顧展。千葉会場の残り期間1週間にして、やっと訪館できた。

1ヶ月だけの期間中に2回も展示替えがあって、出品総数 338点。東京国立博物館や出光美術館蔵等の著名な作品のみならず、個人蔵作品も数多く鑑賞できるという、超充実の展覧会。

そんな中で特に印象が強かった作品を数点絞ってピックアップ。


月に秋草図屏風 』 1825 (文政08) 二曲一隻 165.7*251.6  個人蔵

無音・不動な、2面の襖の中に完結した世界。山種美術館蔵の『 秋草鶉図 』が同種の作品だろうが、さらに完成されているように感じた。

四季花鳥図屏風 』 1816 (文化13) 六曲一双 各162.0*342.0  陽明文庫

金地の美しい作品。四季の移ろいが知らずと自然に起きており、気がつくと前に季節に戻って再度鑑賞したくなる構成。

光琳百図 』 1826 (文政09) 四冊 25.9*17.7  千葉市美術館

光琳百回忌に際し、光琳作の約百点を写して縮図にした冊子。展示会場では、畠山記念館蔵の『 禊図 』 の絵が開いてあったが、その表情が全く同じで面白かった。全点観てみたいのだが、展示は一部分であり、また、図録にも一部しか掲載されていない。どこかで探そう。

十二ヶ月花卉図短冊 』 12枚 各36.2*5.9  個人蔵

宮内庁三の丸尚蔵館蔵の『 花鳥十二ヵ月図 』 が有名だが、これは、その作品をミニチュアにしたような、かわいらしく美しい作品。


等々、お薦めたくさんなのだが、この展覧会、抱一だけでは無く、彼の門下の作家の作品も多く展示されている。前半を終えて、抱一満喫! と思いきや、会場の最後方に現れたのがコレ。

鈴木其一風神雷神図襖 』 八面 173.8*484.0  東京富士美術館

俵屋宗達 - 尾形光琳 - 酒井抱一 と続けられた 風神雷神図 のパターンを、鈴木其一はあえて採らず、より広いスペースの襖絵上にて、暗雲立ちこめる中に両神を踊らせるという独自の作風を展開したものであろう。

これは圧巻、すごい!
そして、最後にサプライズを配置するという、今回の展示構成には、やられた。。。参った。^^;


なお、今回の展覧会図録は市販もされており、これも力作の研究書となっている( ← )。

保存版なこと、間違いなし。


酒井抱一のページ





2011.11.02(水):

Googleトップページに横山大観


今日は横山大観の誕生日。1868.11.2(M1.9.18)-1958(S33).2.26 茨城生まれ。生誕143周年を記念して、Googleのトップページのロゴが大観的富士山の画像になりました。

ただ、どうやら、日本からのアクセスだけのようです。www.google.fr とかアクセスしても出てきません。とはいえ、著名画家のトリビュートとして、今後、いろんな画家が取り上げられるようになると嬉しいですね。

横山大観のページ





2011.10.30(日):

生誕130年 松岡映丘


生誕130年記念の松岡映丘展、姫路・島根を巡回して、現在、東京の練馬区立美術館にて 開催されている。

兵庫出身なこともあって、姫路市立美術館の所蔵作品が多く、今回も同館蔵の

道成寺 』 1917 (T06)

が出展されている。清姫、すばらしい作品だ。

さらに、今回は全本画70点中、個人蔵の作品が30点ほども出品されていて、これらは、めったにお目にかかれないだろう。必見である。

展覧会パンフレット(左図)の表紙になり、TV「美の巨人たち」でも取り上げられた、初代・水谷八重子がモデルの

千草の丘 』 1926 (T15) も目玉の一つである。


そんな中で、ココで取り上げたいのは、右の作品(画像は部分)。

うつろふ花 』 1921(T10) 個人蔵

平安風でありながら、現代風 - それも平成の現代といっても良いだろう - の美人。

恋の病か、物憂げながらもキツい厳しい表情が、とても現代的・都会的でセクシーな逸品。今回のイチオシ。
さらに、

矢表 』 1937 (S12) 姫路市立美術館

も、すばらしい。左隻の弓矢が、まさに飛んでいるようである。一双の屏風絵における左隻と右隻との隙間、それが、その弓矢が飛ぶ距離と時間を、観る者が自由に設定できるようになっているだろう。

日本画における一双の屏風絵や双幅などには、そういう距離感の効果がある。

鏑木清方廓の宵 』 1926 (T15)頃 双幅  福富太郎コレクション

なども、その一つだ。

構図で緊張感を表現したセザンヌの 『 カードをしている男たち 』、彼も、こういった日本の作品を目にしてたら、自ら取り入れたのでは無かろうか? と思うところである。


松岡映丘のページ


 ■ 生誕130年 松岡映丘 展 - 日本の雅 - やまと絵復興のトップランナー
   会場: 練馬区立美術館 (地図)
   期間: 2011.10.10 - 11.23
   URL: http://www.city.nerima.tokyo.jp/manabu/bunka/museum/tenrankai/matsuokaeikyu2011.html





2011.10.24(月):

ジュネ-ブ プチ・パレ美術館の情報をアップ

スイス、ジュネ-ブにあるプチ・パレ美術館の所蔵作品情報をアップしました。

キスリングの初期の作品が豊富に所蔵されており、日本では後期の、あの、つるつるな感じの作品が多い中で、それとは違った新鮮味があります。もっとも、キスリングの所蔵は日本に集中しているようであり、その意味でも、このスイスにおける所蔵は意味があるのでしょう。

なお、この美術館、随分と探してみましたが、公式ホームページは現在のところ、存在しないようです。


 ※ ジュネ-ブ プチ・パレ美術館のページ





2011.10.16(日):

モダン・アート,アメリカン


膨大な数の所蔵を誇るアメリカ、ワシントンのフィリップス・コレクション。数年前もフランス印象派を中心に多くの作品が来日したが、コレクション全体からすれば、それらは、ごくごく一部であり、続編の展覧会を期待していた。

今回は、モダン・アメリカ絵画のコレクション展ということで、オキーフ、ホッパー、ロスコなどの作品を数多く鑑賞できるものと思っていたが、むしろ、アメリカ絵画のロマン主義から抽象表現主義まで、長い期間での、なるべく幅広く多くの作家の作品を追っていくという構成になっていた。

ということで、少し事前の予想とは違ったが、新たな発見もあり、楽しめた。
お勧めをいくつか、ご紹介。

グラッケンズ 『 ベルポートの水浴 』 1912頃

なじみの少ない作家だと思うが、バーンズ財団のバーンズ氏の高校時代の同級生であり、最初に彼にフランス近代絵画を伝えた人。バーンズ・コレクションDBの中を見ると数多く所蔵されているので前から気になっていた。今回、初めて実物とご対面。彼が「アメリカン・ルノワール」と呼ばれたように、印象派的な作品。

ジェイコブ・ローレンス 『 大移動 』 シリーズ 1940-41

この作品に会えるとは思っていなかった。 奇数番号の作品はフィリップス・コレクションに、偶数はニューヨーク近代美術館蔵になっているとのこと。今回、その奇数番号のうち、5点が出展されている。単純なフォルムに躍動感があるのは、マティス的である。

オキーフ 『 白地に暗赤色の大きな葉 』 1925

オキーフ作品が4点展示。日本には所蔵が少ないし、また、国内では「動物の頭蓋骨シリーズ」のみがピックアップされることが多いように感じるが、「花シリーズ」こそ取り上げられるべきと思うところあり、その意味でお勧め。


フィリップス・コレクション紹介ページ


 ■ モダン・アート,アメリカン - 珠玉のフィリップス・コレクション -展
   会場: 国立新美術館 (地図)
   期間: 2011. 9.28 - 12.12
   URL: http://american2011.jp/





2011.10.12(水):

酒井抱一と出光美術館の情報をアップ

酒井抱一の作品一覧を追加すると共に、その所蔵が多い出光美術館の所蔵情報を同時にアップしました。

出光美術館はコレクションの幅が多彩で、さらには、小杉未醒(放菴)の作品が日本画と洋画とに跨っており分類が複雑であるため、整理が遅くなってしまいました。

丁度、酒井抱一生誕250周年記念の美術展が、姫路市立美術館を経て千葉市美術館で開催されてますね。出品点数 300点ほどと大量だそうですし、展示替えも2回あるとのことなので、どういうタイミングで鑑賞にいくか、思案中であります。


  ※ 酒井抱一のページ

  ※ 出光美術館のページ





2011.10.09(日):

ユーサフ・カーシュ作品展

 
六本木ミッドタウンの富士フイルムのショールームの一角にある「写真歴史博物館」にて、ユーサフ・カーシュの肖像写真展が始まっているというので、出かけた。

3年前、オードリー・ヘップバーンの写真をタイトルに使って、ボストン美術館をはじめ、アメリカの各地で「ユーサフ・カーシュ生誕100年記念展」が開催されており、日本にも来てくれないかと期待していたのである。

もっとも、今回は小展覧会。出展数は15点のみであり、「写真歴史博物館」の一角だけでの展示であったが、それぞれ深い印象に残る名作揃いである。

特に有名なのは左のチャーチル首相の写真であろうが、画家も、ピカソ、オキーフ、シャガール、ミロの写真が展示されていた。

特にオキーフの写真は、左上に鹿の頭蓋骨が飾られた部屋での彼女の横向きの姿で、静かで哲学的な作品であり、印象が強かった。


 ■ ユーサフ・カーシュ作品展 (無料)
   会場: 写真歴史博物館
   期間: 2011. 9. 1 - 10.31
   URL: http://fujifilmsquare.jp/detail/11090101.html





2011.10.07(金):

最近のアート・ニュース記事まとめ

● 10/07 早くも1年後の東京都美術館「メトロポリタン美術館展」公式サイト
  http://met2012.jp/

● 10/07 切手:国際文通週間発売。今年も、松園・清方・深水
  http://yfrog.com/nyquuqmj

● 10/06 パリ・グランパレでガートルード・スタイン一家のコレクション展
  http://bit.ly/qlT0Qz

● 10/03 パリ市近代美で起きた盗難事件、犯人捕まっていた
  http://bit.ly/nF7AkE

● 10/03 10月20日からオルセー美術館のフロア照明方式が変更
  http://bit.ly/nf6r51

● 10/02 東博「ボストン美術館 日本美術の至宝展」公式サイト
  http://boston-nippon.jp

● 10/01 マリー・ローランサン美術館 閉館
  http://www.greencab.co.jp/laurencin/

● 9/30 デ・ヤング美から:「アート(art)の無い地球(earth)なんて、え?(eh) だ」

● 9/28 国立西洋美術館のフェイスブック・ページ発見!
  http://on.fb.me/rdd0VX

● 9/27 ゴヤの作品の下からゴヤの未完成作品が見つかる
  http://bbc.in/otxyoK

● 9/16 バーンズ財団美術館の移転オープンは、2012年5月19日と発表
  http://www.barnesfoundation.org/

● 9/10 長野県信濃美「菱田春草展」、播磨屋本店さんという所蔵者のサイト
  http://bit.ly/q056lZ

● 9/08 Adobe Museum、森万里子さんの作品が 11/9にオープン予定
  http://www.adobemuseum.com

● 9/07 MoMA "Talk to Me" 展の日本語ライブ・ストリーミング・ツアー実施
  http://bit.ly/pyeESD

● 9/01 ノックスヴィル美術館: 約100人のアーティストが送ったFaxの美術展
  http://bit.ly/oYlXbj





2011.10.03(月):

ボストン美術館 日本美術の至宝 展 (予告)

 
まだ半年先だが、「東洋美術の殿堂」= ボストン美術館から日本美術作品が大挙してやって来る。

専用サイト も立ち上げられており、これから内容が充実されていくだろう( 現在のところ、東京国立博物館の特別展紹介ページ の方が内容豊富 )。

1年かけて、東京 → 名古屋 → 九州 → 大阪 と巡回の予定であり、全国的に大いに話題になりそうである。


今、公表されている情報だけでも、

 長谷川等伯 『 龍虎図屏風

 尾形光琳松島図屏風

 曾我蕭白 『 雲竜図 』 ( 上図、展覧会パンフレットの表紙 )

 『 平治物語絵巻 』 に 『 吉備大臣入唐絵巻

等々と、その他、伊藤若冲の作品などを含め、約90点が展示されるとあり、とても楽しみだ。

 ※ ボストン美術館の紹介ページ

 ■ ボストン美術館 日本美術の至宝 展
   会場: 東京国立博物館・平成館(地図)
   期間: 2012. 3.20 - 6.10
   URL: http://www.boston-nippon.jp/





2011.10.01(土):

2011年半年の画家アクセス・ランキングを集計

2011年4月から9月まで半年間の、当サイトの各画家ページのアクセス数を集計したランキング表をアップしました。

特に大きな展覧会があったわけでもないのに、やはり、ピカソ強いです。毎年、何故か夏になるとアクセスが増えるんですが、夏休みの勉強の影響でしょうか。

上位常連の変動はあまりありませんが、前期比で変動が大きいのは、展覧会・テレビ・新聞などで取り上げられることの影響が大きいです。


画家アクセス・ランキング( 2011年4月~2011年9月 )





2011.09.27(火):

速水御舟の『 花ノ傍 』 はセザンヌ?

山種美術館で開催中の「知られざる歌舞伎座の名画展」。これまで、所蔵の全貌が把握しにくかった作品の詳細が、今回、やっと知れた。嬉しい。

歌舞伎座内の売店前や階段に掲載されてきた作品の他、貴賓室でのみの掲載であり一般に公開されてこなかった作品も、今回、鑑賞できる。

また、松竹大谷図書館蔵の作品も出展されていて、この鑑賞は貴重であろう。

扇面屏風(貼交) 』 昭和20-30年代  六曲一双

各扇の作者は、大観、古径、岳陵、青邨、深水、そして、当時の現役役者たちと豪華。制作の経緯は不明であり、おそらくは、市川團十郎家贔屓筋がまとめて仕立てたものであろうとのこと。


さて、山種美術館での展覧会ということもあり、図録における山種館長による冒頭解説は、速水御舟の左の作品制作過程についてであった。

花ノ傍 』 1932 (S07) 165.0*96.5 再興第19回院展

歌舞伎座蔵ということから、観劇に関するものかと思いがちだが、この女性、実は編み物をしているところで、歌舞伎とは直接には関係ないらしい。縦線の着物のデザインにインパクトがあり、座像に安井曽太郎の作品が連想される。

その図録の参考資料の御舟日記に、「夜は天明さんが見えて金子君等とセザンヌを賞す」 という記述がある。なるほど、そういう思索の過程における作品なのか。


よく見ると、横顔は少し斜め上の少し斜め横後ろから見ているものだが、後ろ髪のお団子はより後方から見た角度になっている。奥の椅子の位置も構成が不自然で、座る部分は床と同じ高めの斜め上からの視点であるが、背もたれは、それよりも低い位置から見た角度になっているだろう。床の奥のカーペットは浮き上がっているようでもあり、全体に構成が不可思議である。

御舟の人物像作品は少なく、この時期だけに集中している。彼は、ただ従来型の人物像の作品を制作するのではなく、セザンヌ的な複数視点の組み合わせによって1枚の中でバランスを取ることを試みたのではなかろうか。


 ※ 速水御舟の作品一覧ページ

 ※ 知られざる歌舞伎座の名画 予告記事





2011.09.26(月):

サイト構造を大改造

当サイト、従来から各美術館所蔵作品ページの構成が検索エンジンのルールに従っていなかったため、9月の2回の3連休をフルに使って、サイト構造の大改訂を行いました。

ページ間連動の多いサイトですので、修正に、かなり時間を要しました。

旧ページにアクセスされた方は、ご面倒さまですが、そのページに設定されているリダイレクト・リンクから新ページへ遷移ください。検索エンジンのクロールによる再インデックスが終了するまでは、少し時間がかかる見込みです。

もし、適切でないようなページが表示されるようでしたら、一度、ブラウザのリロード・ボタンか、F5ボタン押下の上、再読み込みさせてみてください。

ご面倒おかけして申し訳ありませんが、よろしくお願いいたします。





2011.09.14(水):

アントワープ王立美術館の所蔵作品を追加

ベルギー、アントワープにある国立美術館。この美術館はルーベンス作品の所蔵が豊富で、iPhone版の「ルーベンスの部屋」というアプリも提供されております(無料)。そのアプリについては、ココで一度紹介したことがありますので、→ こちら をご覧ください。

近現代作品は、ベルギー内画家の作品が中心にようですが、アンソールやデルヴォー、マグリットの作品があります。

現在、大規模な改修中のため閉館中であり、2014年にオープン予定。

 ※ アントワープ国立美術館 のページ





2011.09.10(土):

再興第96回 院展

東京都美術館が改装中のため、今回まで東京・日本橋三越で開催されている秋の院展。

18:30入場の 19:00閉場までなので1時間弱あれば駆け足で鑑賞できるだろうと、週末に会場に駆け込んだのが 18:15。ところが、日本橋三越はフロアの関係から会場が3つのパーツに分かれている。つまり、3ヶ所の入場券チェックがあるのだ。

チケット購入後の第1会場入り口にて、その3ヶ所それぞれでの最終入場時間が 18:30だと告げられる。「え、うそ!」、ということは3番目の会場に 18:30までに入らなければならない訳で、3番目の会場では 30分使えるとしても、1番目と2番目の会場に割ける時間は 10分ほどしかないということになる。

駆け足以上だぁ(涙)

全般に水面描写する作品は減って、暗いところから明るい方向を覗く構図の作品が増えた。木々を扱う作品も多くなったと思う。

といったことで、今回、第3会場以外は「すこし」も足を止めようが無かったけれど、印象度合いを相対的に思い起こしながら、いつもの通りの感想を(敬称略)。


しばらく足が止まった作品

  『 地の衣 』  宮北 千織

  『 常光 』   石谷 雅詩

  『 巡礼 』  中井 香奈子

  『 祈り 』  吉家 研二

  『 生活の柄 』  近藤 仁

  『 向島遠望 』  小野田 尚之


すこし足が止まった作品

  『 甦る夢 』  井手 康人

  『 痕跡、過ぎる頃には 』  廣田 晴彦

  『 far world 』  大久保 智睦

  『 上の星 下の星 』  今枝 加奈

  『 島風 』  鴈野 佳世子

  『 不確かな雨 』  杉 佳子

  『 いつものそら 』  宮治 綱

  『 偲 』  大島 婦美枝


  東京展は 9/7 ~ 9/19。その後、全国各地巡回

  ※ 前回(第66回 春の院展)の感想

 → 日本美術院のホームページ






2011.09.06(火):

アイルランド国立美術館の所蔵作品を追加

アイルランド、ダブリンにある国立美術館。ココは、フェルメール作品の所蔵で有名ですね。近現代作品の所蔵も揃ってます。サイトの画像データベースも充実しています。

 ※ アイルランド国立美術館 のページ




2011.09.03(土):

知られざる歌舞伎座の名画 (予告)


いよいよ 17日から山種美術館にて、歌舞伎座所蔵の作品展が開催される。

東京銀座の歌舞伎座は、現在、全面建替工事中であり、2013年春にオフィスビルと複合となった新シアターとしてオープン予定である。
その旧歌舞伎座の2、3階には国内著名画家による作品が展示されていた。作品名も年代も表記されずに展示されていたため、今回の美術展にて、それらの詳細が知れるであろう。


以前、幕間にメモってきた分、および、別の企画展で確認できた中では、日本画は、伊東深水・上村松園・奥村土牛・鏑木清方・川端龍子・菊池契月・小林古径・堂本印象・中村貞以・西山翠嶂・速水御舟・安田靫彦。

洋画は、浅井忠・岡田三郎助・和田三造といった作者の作品を鑑賞できた。

今回、関連資料と共に、一般公開されてこなかった作品も展示されるとのこと。とてもワクワクだ。長年知りたい、知りた~い、と思っていたことから、その意味で、今年、イチオシの展覧会である。


 ■ 知られざる歌舞伎座の名画 展
   会場: 山種美術館(地図)
   期間: 2011. 9.17 - 11. 6
   URL: http://www.yamatane-museum.jp/exh/next.html



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