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訳文:
衣を手に取り、枕を押しやって、起き上がっておどおどし、珠箔(真珠の簾)や銀屛(銀の屏風)が、邐迤として(するすると)開かれていきます。 妃の雲鬢(雲のような髪)は半ば垂れて、眠りから覚めたばかりの姿で 花の冠も整えないまま、堂を降りて来ました。 風が吹いて仙女の袂を飄颻として(ひろひらと)ひるがえし、 まさに霓裳羽衣の舞のようであります。 玉のような容貌は寂しげで、涙をはらはらとこぼし、 それは、一枝の梨の花が、春の雨に打たれるような風情でありました。
読み下し文:
衣を攬り、枕を推し、起ちて徘徊す珠箔・銀屛、邐迤として開く 雲鬢半ば垂れて、新たに睡りより覚む 花冠整へず、堂を下りて来たる 風は仙袂を吹きて飄颻として挙がり 猶ほ、霓裳羽衣の舞に似たり 玉容寂寞として、涙、闌干たり 梨花一枝、春雨を帯ぶ |
※ 小林古径『 楊貴妃 』
1951 (S26) |