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訳文:
翠華(翡翠の羽を飾った帝の御旗)は、ゆらゆらと進んでは、また止まり、 都(長安)の門を西へ出でて百里あまり、 六軍(帝直属の軍隊)は楊貴妃の引き渡しを求めて動かず、 どうすることもできません。 そして、宛転蛾眉(美しく湾曲した眉の楊貴妃)は、 馬の前で締め殺されてしまいました。 花鈿(螺鈿のかんざし)は地にうち捨てられて取り上げる人なく、 翠翹(翡翠の尾の形の髪飾り)・金雀(雀の形のかんざし)・ 玉搔頭(宝玉のかんざし)も。 帝は顔を覆うばかりで、助けることが叶わず、 返り見ては、血の涙を流されたのであります。 |