訳文:
黄埃(黄色い砂埃)が舞い、風は蕭索(冷たく、わびしく)として吹き、
雲桟(高い所にかかる橋)は縈紆(うねうねと曲がりくねって)、剣閣(剣閣山)に登ります。
峨眉の山下(峨眉山のふもと)は行く人少なく、
旌旗(帝の場所を示す旗)は光無く、日も薄い中、蜀にお着きになりました。
蜀は、河の水は碧く、山も青々とした風光明媚な所なのですが、
帝は朝も夕も一日中、楊貴妃のことを思い続けられます。
行宮(仮の宮殿)にて月を見れば、心が痛まれ、
夜の雨に鈴を聞けば(妃の訪れと思いきや)、断腸の声をあげられたのであります。