← 第一段 | 第三段 → |
訳文:
春まだ寒く、娘は華清の池(温泉)に湯浴みを賜わりました。温泉の水は滑らかで、凝脂(きめ細かい潤いのある肌)を洗います。 侍児(お付きの者)が助け起こすも、なよっとして力がありません。 これは、初めて恩沢(帝の寵愛)を受けた頃のことであります。 雲鬢(雲のように結い上げた髪)・花顔(花のかんばせ)・金歩揺(歩くたびに揺れる金の髪飾り)。 ベッドの芙蓉の帳は暖かく、その中で春の宵が過ぎて行きます。 春の宵はとても短かく、日が高くなって起きあがられる。 これ以降、帝は早朝の政務を行われなくなってしまいました。
読み下し文:
春寒くして浴を賜ふ、華清の池温泉、水滑らかにして凝脂を洗ふ 侍児扶け起こすも、嬌として力無し 始て是れ新たに恩沢を承けし時 雲鬢・花顔・金歩揺 芙蓉の帳は暖かくして春宵を度る 春宵苦だ短くて、日高くして起く 此れ従り、君王、早朝せず
白文:
春寒賜浴華清池温泉水滑洗凝脂 侍児扶起嬌無力 始是新承恩沢時 雲鬢花顔金歩揺 芙蓉帳暖度春宵 春宵苦短日高起 従此君王不早朝 |
※ 筆谷等観『 春寒賜浴 』
1924 (T13) ※ 中村岳陵『 貴妃賜浴 』
1927 (S02) ※ 中村不折『 華清池 』
1925 (T14) |